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景気回復に伴う人手不足が顕著になる中で、外食各社が待遇改善とイメージアップに取り組み始めている。労働者が就労を拒む一種の「ストライキ」が、ブラック企業を追い詰める効果的な方策となっているようだ。

ワタミグループの桑原豊社長も、日本経済新聞(5月18日朝刊)のインタビューで、人手不足の苦労をこう明かしている。

「先日、名古屋で開いたレストラン&バーは1回の募集で70人のアルバイト枠に200人が来た。同じ条件で和民が募集しても残念ながら3~5人だ」
「ワタミ」とつけば客も人材も寄り付かない?

このレストラン&バーとは、4月17日にオープンした「TGIフライデーズ名古屋店」を指すようだ。別業態ではこんなに人手が集まるのに、「和民」ではまったく集まらないのは、どういう理由なのだろうか。

5月8日に発表された2014年3月期の決算資料によると、ワタミグループの連結最終損益は49.1億円の赤字(前期比84.5億円減)。1996年の上場以来、初めての最終赤字に転落してしまった。

特に国内外食事業は、先期の30.8億円の黒字から、今期は19.1億円の赤字に陥った。50億円もの大きな落ち込みだ。背景には、総合居酒屋業界に吹く逆風と、人件費の高騰があると分析されている。

実際、既存店の9割超を占める「和民」「わたみん家」は、前年比で1割近い減少と苦戦している。一方、ワタミグループの中でも、同じ総合居酒屋の「旨い屋」や、専門業態の「炭旬」「GOHAN」は、前年並みかそれを上回る売上を達成している。

「ワタミ」とついている店が、消費者や求職者に敬遠されているのか。桑原社長は前述のインタビューで、この見方を真正面から強く否定している。

「大声で『ブラックじゃない』と叫びたい。社員・アルバイトを合わせ、国内外で約3万人が働く。ちまたで言われているような会社なら誰もいない」
「ブランドを全否定されてるに等しい」の声

桑原社長は業績不振の理由について、消費者の「店を選ぶ基準が変わった」ことを指摘する。外で飲む回数が減り、「せっかくだから」と少し高くてもネットで調べる目的型の選択になったのだという。

結局は「ワタミが選ばれなくなった」ということであり、その裏には会社に対するイメージが影響している可能性もある。しかしインタビューでは、そこまで認める発言は見られない。

これに対し、ネットユーザーからは厳しい声が飛んでいる。

「ワタミの名前がついていない店が好調なのは、ワタミの名前がついていないからだと分かっているくせに」
「名前を変えるだけでこれだけ変わる現状に、ワタミの名を冠する会社の社長として忸怩たる思いは無いのかね? 会社としてのブランドを全否定されてるに等しいぞ」

同社の新卒3年目の離職率は約46%。これを3年で30%以下にするのが目標だという。現状で働く3万人がいるとしても、離職率が高いことを会社が問題視していることが分かる。

2014年3月卒業の新入社員数は、採用目標の半分程度(120人)。それでも桑原社長は「当社だけが苦戦しているわけではない」と強気の姿勢を崩さない。

この経営陣では「根本的な考え方」は改まらないのか

桑原社長のスタンスは、創業者の渡邉美樹氏に歩調を合わせたものだ。5月19日、渡邉氏は自身のフェイスブックを更新し、同日現在、2014年度の新卒社員は「1名も辞めていない」と胸を張っている。

しかし、新年度が始まって、まだ1か月半。たったそれだけのことを誇るのは、ハードルが低すぎるというものだろう。

また、理念集の「365日24時間、死ぬまで働け」を削除したことについて、これまで「文章の一部だけを切り取り、一方的に誤訳され悪意を込めたイメージ攻撃を受けて参りました」と反発したうえで、こう釈明した。

「この国の経営者には、もっと厳しい比喩や表現で理念訴求をしてきたリーダーもいます。しかしそれぞれの言葉にも必ず本意があり、またその時代背景もありました」

つまり、俺よりひどい経営者もいたと言いたいのだろうか。しかし、ワタミ女性社員が「100時間を超える残業」で過労死認定されたのは事実。キャリコネの口コミにも「店長や店員の休みはほとんどないと言っても過言ではない」(20代女性)といった声がある。

2014年3月に第三者委員会から出された調査報告書でも、

「所定労働時間を超える長時間労働が存在している」
「労働時間を正しく記録していなかったことがある、そのように指示されたことがある」
「所定の休憩時間が取得できない」
「有給休暇を希望どおり取得できない」

と指摘されたばかりだ。なぜ渡邉氏は、批判を「悪意」や「誤訳」としか受け取れないのか。会社も問題となる事実を認めて真摯に再出発を図れば、離れていった消費者や従業員も戻ってくるかもしれない。

ネットには「付き合いの長い雇われ社長では、創業者を否定できないよな」と諦めのコメントもある。創業者も現社長も「店の名前」ではなく、「根本的な考え方」を改めるときが来るだろうか。

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