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 「『ゲームのお仕事』業界研究フェア2011」が2011年9月6日から8日までの3日間、神奈川県・パシフィコ横浜で開催された。6日には、ゲームメーカーの人事担当者たちによるトークセッションが行なわれ、ゲーム業界に関心を持つ学生たちに向けて「"お客様"という存在を意識して」「絶対に自分を安売りするな」といった"就職アドバイス"が行われた。

■「ゲームが好きだから」では幼稚園児と同レベル

 新卒でゲーム業界に就職するのは、非常に難しいとされる。特に、有名なゲーム企業では、採用人数に比べ応募者数が極端に多く競争が激しいからだ。企業によっては、エントリーシートの段階で半分近くの応募者が「切られる」こともあるという。各ゲームメーカー人事担当者は"最初の難関"となるエントリーシート選考について、次のように語る。

フロム・ソフトウェア・立野怜子氏(以下、立野): (エントリーシートで)落ちてしまうパターンで残念だと思うのは、"やりたい"と思っている職種と(実際に)書いてある自己アピールがぜんぜん違うというもの。例えば、ゲーム業界では企画職志望が応募者の中でも一番多く、「自分は企画職がやりたいです」と書いてあるのだが、(文の最後には)「将来は営業になりたいです」で締めくくっているケースが、書類を読み込んでいると結構ある。(採用する側は)「企画職をやりたいと思って、何をこれまでやってきて、今後どうしていきたいのか」を聞きたくて、書類とか面接で話を聞いている。"やりたい"ことに対して説得力が失われるようなことが書いてあると、書類の段階で「さよなら」というケースが多い。

ポリゴンマジック・松井千夏氏(以下、松井): (エントリーシートにおいて)残念な例として、 1つキーワードとして"深み不足"というのがある。「ゲームが好きだから、ゲーム会社に入りたいと思いました」。これは幼稚園の子どもが「ケーキが好きだから、ケーキ屋さんになりたいです」と言っているのと同じだ。好きな気持ち以外にも、お金を稼ぐことにも繋がるので、"お客様"という存在を意識しないといけない。そういった視点が欠けている場合は、ユーザーでいたほうが幸せなんじゃないかなと思う。

スクウェア・エニックス・宮脇彰秀氏(以下、宮脇): (立野氏の言うように)企画職・プランナーを応募しているのに、最後に「実は総合職でいい」と書いてある。なぜかというと(学生たちは)最初から1点に絞ることが怖いからだ。各社ともプランナーの定員を決めているわけではないのに、結果的に(プランナーとして採用を)通る人は4、5人くらいしかいない。年によっては1人か2人。言い方が悪いかもしれないが「それだったら、会社の片隅でもいいので、どんな仕事でもさせてください」というところが出てしまう。「本当はこの仕事で飯を食っていきたいのだけど、ここに置いてください」と。絶対に(自分を)安売りするなと言いたい。安売りしないためには、(松井氏の言うように)"深み"がないと。ただ「好きです」だとか、なんとなく「プランナーがやりたいです」ではダメだ。

 では、どんなペーパー(=エントリーシート)が受かって、どんなペーパーが落ちるか。見た目がちゃんとしているとか、見るからに頭の中で整理しているとか、自分なりの世界観があるとかは紙1枚でわかる。手書きでもタイプ打ちでも。(学生は)40社も50社も受けたら、コピペで作る。カスタムメイドにしてください。それは見る人が見たら本当にわかる。1枚の自分自身のエントリーシートだとか履歴書1つとっても、やっぱり作品だという部分がある。ただし、表面の形式ではなくて中身だ。(学生が)自分自身がやりたいと思っていることと(企業側が)やってほしいと思っていることのギャップが大きい。それをお互いに見極める場が面接やケーススタディ、インターン。そこのところに最初からズレだとかギャップがあるとペーパーでも難しい。逆に言うとペーパーはギャップをなるべく狭めるとか。本当にやりたいことがあるのだったら、「当たって砕けろ」くらいで(就職活動を)やってください。

■社会で「お辞儀の角度が30°じゃないからダメだ」と言う人はいない

 近年の就職難によって、学生たちの間では就職活動の"マニュアル本"が浸透している。一方、採用を行う企業側からは、マニュアル化された学生たちに対して、「枠をはみ出して欲しい」という声も聞こえてくる。ひと際クリエイティブな能力が求められるゲーム業界は、一体どのような人材を求めているのだろうか。人事担当者たちは、マニュアル本より重要視すべきものについて語った。

松井: マニュアルを読むのは別に構わない。だが、場数をこなしたり、勉強会などパブリックな場所に出かけたりする習慣のある人は、マニュアル本を読み込まなくても、きちんとした身のこなし方ができる。いわゆるソーシャルグラフ(=ウェブ上での結びつき)で勉強会などが開催されていて、そういったものに出かける習慣がある人は初対面の方とのコミュニケーションの取り方に慣れている。そういったところで訓練するというのは、面接ではないのだけど、初対面の人と腹を割って話す機会・トレーニングになるのではと思う。

立野: (マニュアル本には) 一般常識としては大事なことが書かれていると思う。人と話す時の正しい敬語の使い方など。(敬語は)そんなに正しくなくてもいい。(学校の)先生と話す時の感覚で構わないと思う。自分には話し方が全然身についていないと思う人は、マニュアル本を読んで、一般常識レベルで身につけたらいい。実際のビジネス現場で「あいつは、お辞儀の角度が30°じゃないからダメだ」とかを言っている人はいない。言葉遣いについても(一人称が)「僕は」でも構わない。「私は」でなくても構わない。それ以上に話の中身が大切。「自分は何をしたくて、何をしてきたのか」をしっかりと話せることが、マニュアルからのはみ出し方だと思う。社会に出ると、知らないことを自分で考えながら吸収していくことが必要だ。学生時代から、それがどれだけ意識されていたか。「ゲームの仕事に就くとして、何が必要で、そのために自分は何が出来るだろうか」と考えるだけではなくて、「それをどれだけやってきた」か。その内容というのは人それぞれだし、どれだけやってきたかも人それぞれなので、良い意味でのはみ出し方になる。

宮脇: マニュアル的な「お辞儀の角度とか、名刺の出し方」というのを(面接で)見ないようにしようと思っている。(マニュアル的な部分を見た)結果、揃った人材は皆どんぐりの背比べだ。大学入試で例えると、センター試験で平均的にいい点数を取るのだけど、一芸入試で受かる奴が一人もいない。(一芸入試で受かるような人物が)本当に欲しい。学校の通信簿が5段階で決まるところを、4とか5を全科目で取る奴よりは、5点満点だけど、音楽とか体育とか図画工作で10点取るような奴が本当に欲しい。それはペーパーとか面接で伝わると思っている。熱意だ。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] エントリーシートに関する部分から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv62756849?po=news&ref=news#36:42
・[ニコニコ生放送] マニュアル本と"はみ出し方"に関する部分から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv62756849?po=news&ref=news#43:48

(山下真史)

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