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 違法にアップロードされた音楽や動画などをダウンロードする行為(違法ダウンロード)に、懲役刑や罰金刑を伴う「刑事罰」が科されることは、果たして妥当なのか。現代ビジネス×MIAU(インターネットユーザー協会)のシンポジウム「違法ダウンロード刑事罰化を考える」が2011年10月1日に行われ、MIAU代表理事のジャーナリスト津田大介氏ら有識者が、その是非について議論を交わした。この模様はニコニコ生放送でも中継された。

■「違法ダウンロード」は知っているが、「刑事罰化の流れ」は知らない

 番組冒頭で行われたニコ生視聴者へのアンケートでは、2010年1月の著作権法の一部改正によって、著作権侵害コンテンツのダウンロードが「違法」とされたことについて、回答者の71.7%が「知っている」と答えた。一方、その違法ダウンロード行為が議員立法によって「刑事罰化」されようとしていることについては、「知らない」と答えた回答者が72.9%となり、「違法ダウンロード刑事罰化」の流れが、いまだ広く知られていないことが分かった。

 またMIAU代表理事のコラムニスト小寺信良氏は、表現の自由や知る権利などの議論が深められないまま、議員立法によって短期間に成立した「青少年ネット規制法」を例に挙げ、

「利害関係者を呼んでディスカッションすることもなく、パブリックコメントを募集するわけでもなく決めていく、こういう立法の論理でいいのか大変疑問視される」

と議員立法による「違法ダウンロード刑事罰化」への懸念を表明した。

■「不正アクセス禁止法」よりも重い罰則

 さらに今回の主要議題でもある「違法ダウンロードの刑事罰化」の罰則規定案ついて議論が及ぶと、弁護士の落合洋司氏は、

「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金を併科できるという罰則はけっこう重い。併科できるのだから、(懲役刑と罰金刑を)両方科されることもある」

と述べ、違法ダウンロードという行為に対しての量刑が厳しいことを指摘。津田氏からの「他の犯罪でいうと(比べると)、どれくらいの量刑か?」との問いには、

「例えば、『不正アクセス行為の禁止等に関する法律』に反して不正アクセス行為を行った場合は、1年以下の懲役(または50万円以下の罰金)だったはず。そういったことを考えると、(違法ダウンロードの)罰則がかなり重いというのは間違いない」

と答え、他の類似法と比べても、かなり厳しい罰則が伴っているという見解を示した。

■声を上げられない日本社会

 また法学者で法政大学社会学部の白田秀彰准教授は、違法化、民事罰、刑事罰・・・と厳しくなっていく一連のプロセスの中で、「他人の著作物を使うことは悪であるという観念が、所与の前提にされている」と指摘する。白田氏は、会場から質問のあったアーティストの権利に関連しながら、

「居酒屋では『いいよね』と言っていても、公式にはとても言えないことはたくさんある。そこをまず変えていかないと、決してアーティストたちにとって最も望ましい状況、正直に公の場で語れる状況にはならない。今の厳罰化の方針をほったらかしておくと、どんどん言いにくくなっていく。誰も文句を言えない状況の下で、一方的な正義がどんどん推し進められている」

と現在の日本社会ではアーティストに限らず、多くの人が正論すら表立って言えない状況にあると話す。

「皆がささいなことに関して目くじらを立てて、どんどん(法律などを)厳しくしていって、ちょっとでも踏み外すと全員でたたく文化が作られてしまった。どんどん息苦しい方向にサイクルが回りつつある。そういう状況では、アーティストが(著作権について)おかしいと思っても、声を上げられなくなる。今の日本社会では、怖くて(公の場で)正論さえ言えない状態になってしまっているのではないか」

と、白田氏は自らの考えを述べるとともに、日本社会全体の構造が変容した結果の一つとしての厳罰化の流れに対し、注視を促した。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]白田氏の「声を上げられない日本社会」から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv65374727?po=news&ref=news#02:03:38
・一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU) - 公式サイト
http://miau.jp/

(内田智隆)

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