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 物理学・化学など6つの分野で優れた功績を残した人物に贈られる「ノーベル賞」の一方で、人々を笑わすユーモアにあふれ、そして考えさせてくれる研究に対して贈られる「イグ・ノーベル賞」をご存じだろうか。2011年度「イグ・ノーベル賞」授賞式が9月29日に米ハーバード大で行われ、日本からは、火災時にわさびの匂いで聴覚障害者に危険を知らせる警報装置を発明した、滋賀医科大の今井真氏ら7人が化学賞を受賞。日本人は5年連続での受賞となった。

 「イグ・ノーベル」とは「くだらない」という意味のignobleという単語と、ノーベル(Nobel)賞をかけた造語で、「裏ノーベル賞」とも呼ばれている。1991年に創設され、工学賞、心理学賞、公衆衛生賞など部門数もさまざま。ノーベル賞と違い、賞金も授賞式への旅費も出なければ、記念品もアルミホイルで出来たメダルなどチープなもの。そして授賞式のスピーチでは笑いをとることを要求され、観客からは舞台に向かって紙飛行機が飛んでくるという何ともユニークな賞だ。

 今年度のイグ・ノーベル賞には、日本の今井氏らの研究のほか、「ある種のタマムシのオスは、ある種のオーストラリア製ビールと交尾する」という発見や、「違法駐車している高級車は、装甲車で踏み潰して問題解決できる」ことを示したリトアニアのビリニュス市長が受賞した。

 過去の「イグ・ノーベル賞」には、どのような奇天烈かつシニカルな受賞例があったのだろうか。いくつか紹介しよう。

■過去のユニークな受賞例

平和賞

・台湾立法院(台湾の国会)
「政治家は他国と戦争するよりも、互いに殴り合ったり騙し合う方が、より利益になると実証(1995年)」
・ジャック・シラク元フランス大統領
「広島の原爆投下50周年に、太平洋上で核実験を行った(1996年)」

医学賞

・ジェームス・F・ノーラン、トーマス・J・スティルウェル、ジョン・P・サンズ・ジュニア
「ジッパーにペニスが挟まった場合の、シンプルかつ基本的な緊急対処法(1993年)」

物理学賞

・レン・フィッシャー
「ビスケットを崩さず紅茶に浸す、最適な方法の計算(1999年)
・ジャック・ハーベイ、ジョン・カルベノール、ウォーレン・ペイン、スティーブ・コーレイ、マイケル・ローレンス、デイビッド・スチュアート、ロビン・ウィリアムズ
「さまざまな表面上で(毛を刈る際)、羊を引っ張るのに必要な力の分析(2003年)」

生物学賞

・ベン・ウィルソン、ローレンス・ディル、ロバート・バッティ、マグナス・ファルバーグ、ハカン・ウェステルベリ
「ニシンがおならでコミュニケーションすることに関する研究(2004年)」

化学賞

・山本麻由
「牛フンからバニラの香りのする物質(バニリン)を抽出(2007年)」
・ドナテラ・マラッジッティ、アレッサンドラ・ロッシ、ジョバンニ・B・カッサーノ、ハゴップ・S・アキスカル
「生化学的には、ロマンティックな恋愛と強迫神経症の疾患とは区別できないようだ、という発見(2000年)」

公衆衛生賞

・エレン・クレイスト、ハラルド・モイ
「警告的な医学論文『ダッチワイフを通した淋病の伝播』(1996年)」
・ジリアン・クラーク
「5秒以内なら床に落ちた食べ物を食べても安全という『5秒ルール』の科学的妥当性の研究(2004年)」

天体物理学賞

・ジャック・バン・インプ、レクセラ・バン・インプ
「ブラックホールが地獄の所在地としての技術的要件を全て満たしている、という発見(2001年)」

学際的研究賞

・カール・クルスツェルニキ
「『へそのゴマを、誰が、いつ、何色のを、どのくらいつけたか』包括的な調査(2002年)

経済学賞

・横井昭裕、真坂亜紀
「バーチャル・ペット(たまごっち)を飼育するため、数百万の人々に膨大な時間を使わせた(1997年)」

数学賞

・ロバート・フェイド
「ミハイル・ゴルバチョフが反キリストである確率(710609175188282000分の1)を導き出したこと(1993年)」

 科学というものは、何気ない日常のどこにでも転がっている。「イグ・ノーベル」賞の受賞者たちは、日々の生活の中でわれわれが目にも止めないような、ささいな事柄に好奇心を持ち、根気強く研究した結果、栄えある受賞に結びついたものが多い。人間は、生まれながらにして知的好奇心があると言われる動物だ。かつてアインシュタインは「大切なのは、疑問を持ち続けることだ。神聖な好奇心を失ってはならない」という名言を残した。どんなにささいなことでも探究してみる好奇心と、そして少しばかりのユーモアをいつまでも持ち続けていたい。

◇関連サイト
イグ・ノーベル賞公式サイト(英語)
http://improbable.com/ig/

(中村真里江)

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