関連画像1
BLOGOS

東京・六本木のニコファーレで 10月15日、ジャーナリストの池上彰氏とKADOKAWA・DWANGO代表取締役会長の川上量生氏が「メディアの未来について」と題し対談を行った。

この対談は「週刊文春デジタル」の特別企画。ともに「週刊文春」で連載を持っているという2人だが、実はこの日が初顔合わせ。川上氏は「やっぱエリートはだめですよ」と、独自の経営理念を披露、リリースが予定されている「ニコキャス」についても触れた。池上氏も、朝日新聞のコラム掲載拒否問題について「色んな社の取材力ややり方が手に取るようにわかって面白かった」とコメント。

また、角川文庫の「発刊の辞」が好きで暗誦していたという川上氏。角川との経営統合を「嬉しかった」と振り返ったが、池上氏は「一つになって何が出てくるのか、わかるようでわからない」と、角川とドワンゴの経営統合の先に何を考えているのか斬り込む形で進行した。

2時間にわたる対談のうち、本稿では、2人がコンテンツビジネスについて語った部分をお届けする(全文は「週刊文春デジタル」で公開。)。【編集部:大谷広太】

池上:たとえばAmazonは出版社を中抜きにしてビジネスができますよね。

そうは言っても、コンテンツは著者だけでできるものではない。もちろん、著者だけでできるものもあるかもしれないが、普通は著者と編集者がいて、相談をし、話をしていくうちに色々なアイデアが出てきて、作品が出来ていきますよね。

そういう現場を知らない人間は、"著者が書いてくれればウチが届けるから"って、なっちゃいがちですよね。

川上:そうですね。そこをみんなわかってないですよね。

著者も人間なので、そんなにみんなが思っているほどの差って本当は無いじゃないですか。世界には何十億人もいるんだから、文章を職業にしようと頑張っても、成功するには時代や環境、編集者や回りの人の功績で決まっている部分があると思うんですよ。それを個人だけのものにしたがりますよね。

だから"個人神話"の方向に行って、個人が搾取されるモデルになっていくのはあまりよくないなあと思いますよね。

池上:勘違いしがちなのは、著者だけ捕まえればいいってもんじゃないんだよと。まさに編集作業があったりして、それがあってこそののコンテンツだということをを、プラットフォーム側が気づいていないと言うか、知らないことがありますよね。

川上:もし、プラットフォームと著者が直接やりますとなったら、どんな時代になるかというと、新聞社がやっているような、"俳句コンテスト、賞金10万円!、あんな感じになってしまうと思うんですよ。
何万人ものひとがAmazonに小説を直接応募するようになったら、要するにお金をみんな払ってくれなくなると思うんですよ。出版社があって、差別化するような仕組みを持っているから、それぞれの個性が輝くわけであって。個性はシステムとして作らなければいけない。

池上:それをやっている限り新しい才能を見つけ出すことってできないですよね。

川上:そうですよ。でも一番大きな問題は、お金が回らなくなることだと思うんです。どんどん安くなるので、儲からなくなりますよね。

たとえば、iTunesのApp Storeで1位になっても全然儲からないわけですよ。みんなが平等に儲からない。プラットフォームに直接出せる時代というのは、みんながお金をもらえなくなる時代ですよ。

池上:当然、食っていける著者の数が減ってくれば、全体として作品が減っていきますね。

川上:調査が必要ものだとか、ちゃんとした研究やバックグラウンドないと書けない、お金がかかる本ってあるじゃないですか。お金がかかっている本というのは、費用を回収できないわけですよね。そうすると、お金をかけた本ができなくなる。

池上:それはすでに起きてますよね。昔は出版社に余裕があると、取材費も面倒見たり、描き下ろしでお金がかかる場合は雑誌に連載して最終的に一冊の本にまとめたり、著者を援助するということがあったんですが、それがかなり難しくなってきている。それが今のような話になったら、ノンフィクション全滅ですよね。

川上:やっぱりコンテンツの世界って、あぶく銭が必要だと思うんですよ。ムダなことをしてコンテンツを作る人がいなくなりますよ。そこをみんなわかってないですよね。

池上:そこも含めて、何とかしなければいけないという意識もあって、企業統合に至った?

川上:何とかしなきゃいけないというのも使命感としてはありますけど、使命感を原動力にすると、資本主義の中では間違えてしまうので(笑)。

第一に、正しいことを正しいと思ってない世の中なので、お金が回るコンテンツを作れないと、結局ユーザから見放されると思ってるんです。そしたらやっぱり儲かる仕組みを作るのにチャレンジするのは誰もやってないんだから、成功するだろうと。それが正しいと思っているんです。

池上:資本主義だから理想だけじゃ食っていけない。持続可能性の仕組みを作ってこそ、色々な思いが実現するのですね。

川上:世の中の経済原理って、すごく短期的なことしか見てないわけです。目先のことばかり。でも、中長期的な経済合理性から考えれば、逆のケースも多いと思うんですよ。特に文化・コンテンツに関わることについては、目先のことだけ見てたら崩壊するに決まってるんだから。

池上:新しい、お金が回るシステムを創りだそうと。やろうとしてることがだんだん見えてきたじゃないですか(笑)。コンテンツが衰退していかないような仕組みを作っていくということですね。

川上:コンテンツにお金を払わない理由は、"しつけ"だと思うんです。クリス・アンダーソンという人が書いた「FREE」という、とんでもない悪書があるんですが(笑)、寝言みたいなことを書いてるんです。フリーになっていくのがこれからの時代の流れだ、と言いたいらしいんですが、全く根拠が無いですよ。

なんで人がお金を払うのかって言ったら、欲しいからですよね。お金を払わないと手に入らないから、お金を払うわけですよね。単純な原理で。

ネットの時代にみんな払わなくなったのは、払わなくても手に入ると思ったからです。それが現状としてあって、なおかつ、それが倫理的に正しいんだというわけのわからないことを言う人がいると、それが正しいんだとみんな思い込む。しつけですよ。しつけが悪い。コンテンツにお金を払うのは当然だ、というしつけをするのが本来の話です。それから、システム的にもコピーをできにくいコンテンツにするシステム的に大事だと思います。

池上:たとえば新聞社がウェブサイトを作った時に、最初は無料で記事が読める形にしておいて、いずれは有料にすることによってビジネスにしようと考えていたはずですが、有料化がうまくいかなかった。日本経済新聞だけがどうにかなったが、それはつまり、読者が情報を得ることでビジネスになって、金儲けにつながるかもしれないから、金を出そうかとなったということですよね。それ以外の一般のニュース、新聞に限らず雑誌も、お金を出しても読みたいというものをどうやって作り出すかですよね。

川上:そこは本当に難しい問題ですね。やはり習慣の問題ですね。習慣をどうつくるか。

情報を欲する理由にはふたつあって、情報の有用性と、コミュニケーションのためだと思っています。世間的な話題についていく、社交のための情報、お互い知っておいて当然だろうという意味の教養に対してはお金を払いますよね。

池上:キヨスクに週刊文春が売っていると買いますが、ネットになるとお金をかける気にならなくなりますよね。これをどうやってしつけますか?

川上:みんながやってれば(笑)。

つまり"濃度"の問題だと思っています。みんなが思う"みんな"とは何なのか、と考えているですよ。なんとなく思っている"世間様"、自分の回りの友達の中で、払ってる人のほうが多くなればいいんだ、と思うわけです。

一般的にそれを実現するのは難しいんだけれども、ある同じ趣味を持っている人の中では払ってる。その場にいるお客さん、ここに集まってる人達はみんな払ってる、となると人間は自分も払わなきゃと思う。そういう場をどうやって作るのか、といつも思っています。

よくネット業界の人が言う、無料ユーザが100万人あつまるとその中の5%は払ってくれる、という根拠のない謎のルールがあるんですよ。

池上:それはその通りなんですか?

川上:根拠がない。5%の頭の悪いやつ、変な奴が払っちゃう、という発想なんですよ。そもそもお客さんを根本的にバカにしていると思うんですよ。95%は払わないと言っている、それはおかしいじゃないですか。でも、実はニコ動は無料会員のプレミアム会員の比率が6〜7%なので、5%に近いんですけど(笑)

池上:(笑)

川上:ただ、そんなことはどうでもいいんです。何が重要かというと、IDを持っている人の中では、6 〜7%なんだけれども、違う測定方法があるんです。アカウントを持っているが使わない人もいますよね。ニコニコ動画に月間アクセスしているひと、800万人のうち、有料会員は200万人以上いるんです。4分の1です。それをデイリーで見ると、大体400万人中140万人くらい。3人に1人になります。
そして今アクセスしている人だと40%くらいになる。それがニコ生に瞬間的にアクセスしているひとのうち60%はお金を払ってるんですよ。

"みんなやってるんだからお前もやりなさい"、という場を作る。やぱり人間がお金を払おうかと考えるのは、50%を超えるかどうかですよね。

つまり、払ってないほうがおかしいんだという世界をどうやって作るのか。みんなやってないのにお前だけやれ、というのは、徳の高い人になれ、みたいな話で(笑)。みんなやってるんだからかあなたもやりなさい、というしつけをする空間を作るんです。

ネットの中で、この部分はみんながお金を払っているんだよ、という領域を拡大させていく。それによって、ネットによってコンテンツが衰退するのか可能性が広がるのか、となると思います。

■関連リンク
「週刊文春デジタル」特別対談で池上彰×川上量生がKADOKAWA・DWANGOの経営統合、朝日掲載拒否騒動について語った! - 週刊文春WEB
週刊文春デジタル - ニコニコch
池上彰×川上量生特別対談「メディアの未来について」(文春デジタル特別企画)生放送全編無料 - ニコニコ生放送

全文を表示