Twitterで賑わっている「がんばるぞい!」って一体なんだ? この言葉が流行った理由を徹底検証。
エキサイトレビュー

Twitter上で「がんばるぞい!」が、ものすごく流行っています。
一度試しに検索してみてください。すごいよ。

「ぞい」ってなんだ?
調べてみたところ、「ぞい」は終助詞の「ぞ(がんばるぞ)」に終助詞「い」を付けた言葉。江戸時代から、やわらかみを持たせる表現として使われているとのこと(大辞林より)。
また方言だと、金沢では「ぞいや」「ぞいね」。福島でも語尾に「ぞい」が使われます。
おじいちゃんが使うイメージもある。ニッカウヰスキーのキャラがよくしゃべっています。現実では聞いたことないけど……。

決して普段使う言葉じゃない「ぞい」。
一体何が起きているのか。

●「がんばるぞい」の語源
「今日も一日がんばるぞい!」が正確(?)な使い方です。
元になっているのは、得能正太郎のゲーム制作お仕事四コマ『NEW GAME!』の一コマ。

最初に話題になったのは、今年の5月末くらい。
女の子が、両手を胸の前で握りしめて「今日も一日がんばるぞい!」と言っている画像が、Twitter上にアップされました。
ネタ元が書かれていなかったため「なんのマンガだ?」と話題は拡散。『NEW GAME!』の一コマだと発覚します。
『NEW GAME!』は2月27日発売。時差がすごい。

これがきっかけになって、急激にTwitterで広がり始めます。
たった一回しか発せられていないセリフが、流行語になりました。

●ネットで広がりやすいキャラクター
漫画ファン向けの書店COMIC ZINでは、10月の売上げベスト1を2月発売の『NEW GAME!』が取る、という異例の事態。
話題真っ盛りだった8月から9月くらいには、入手することすら困難でした。
NEW GAME!1巻 アキバ各店再び在庫切れ。異例の山盛りが週末でほぼ完売 - アキバBlog
一時期は出版社も問屋も受注停止になるほど売れました。
 
今買う人が多い。ということは、元ネタは知らずに使われている。
現在「今日も一日がんばるぞい!」はひとり歩きして、マンガ・アニメを見ない層にまで浸透。
なぜここまで「がんばるぞい!」が流行ったのか、考えてみます。

1・ネット上で、キャラクターが起つ要素を満たしている
『小池一夫のキャラクター新論 ソーシャルメディアが動かすキャラクターの力 』 (Kindle版)では、SNS時代に流行るキャラクターの作り方の例が書かれています。
今回はこれにそって考察してみます。

・「アイキャッチ」膨大な情報の中からでも目に留まる個性
「その他大勢として表示されている状態から、「なんだこれ」と、まず目立たせなければなりません。画像を使う場合は、本能的に人の目を引くのは「顔」です」
今回の流行は、『NEW GAME!』のヒロイン・涼風青葉が、頑張ろうとしている「顔」の画像がネットに貼られたのが原因。
流れてきた画像を見て、「なんだこれ」と引きつけられ、忘れられなくなるかわいさがありました。

・「アトラクション」ユーザーの心を惹きつける。
「短い文字数でまとめた時にも、それを見て「面白そうだな」とその魅力が出るように心がけます。親しみやかっこよさ、可愛さを感じさせるキャラクターのビジュアルが重要です」
絵のあたたかさと、「がんばるぞい!」という語の親しみやすさが、セットになっています。
どっちかだけだったら、ここまで広がらなかった。
子供のような外見。いつも頑張って力んじゃうフレッシュさ。あらゆることが初体験でドキドキする様子。「ぞい」の語感。
『NEW GAME!』における、彼女の魅力が詰まったコマでした。

2・他者から伝えられた言葉は使いやすい
伝聞をするツールである、Twitter文化との相性のよさは注目したいところ。

「人は「俺ってスゴイだろ」という人には「何だコイツ」と反感を持ちますが、関係のない他人から「あの人スゴイよ」と言われると、「そうなのか」と、途端に興味を持ちます。利害関係のない第三者からの言葉や噂話には、その場にいない人のキャラクターを起てる力があります」
(『小池一夫のキャラクター新論』より)

作者はそこまで、「がんばるぞい!」を話題にするつもりはなかった。
本人も「ぞい発言を作中ですることは今後ないです」と明言。
青葉はそもそも「〜ぞい」が口癖なキャラではありません。

知っていれば「『ぞい』の元ネタはね」と噂話をしたくなる。
先に読んでいたファンなら、「『がんばるぞい!』の元ネタの『NEW GAME!』面白いよ」と言いたくなる。
「奇しくも狙っていなかった」「作品自体に魅力があった」の二点が噛み合いました。

3・「頑張る」は言いづらい
「あくまでもその人それぞれがやれることをすればようのであって、「絆」や「がんばろう」というような言葉を、むやみやたらに強調しなくてもいいのではないかと考えているんです。(中略)現実には、他人を心配することができないくらいに余裕がない人だってたくさんいるし、関心があまりない人がいるっていうことも認めないといけない」
(蛭子能収『ひとりぼっちを笑うな』より)

人によっては「頑張るぞ」という言葉は、追い込まれる感覚を受けるかもしれません。
「頑張ろう」になるとさらに、周囲に圧力を与えてしまうことも。

「頑張る」とは「あることをなしとげようと、困難に耐えて努力する」「自分の意見を強く押し通す。我を張る」という意味(大辞林より)。
「頑張る」「頑張ろう」は、時に苦痛です。

「がんばるぞい!」は、言葉から苦痛要素を払拭しました。
本当に頑張るとき、力まずさらっと言える。苦痛なときも、ネタとして昇華してしまえる。
特にがんばらなくても、使える。
普段良く使う言葉なだけに、生活に密着したネタとして広まりやすかった。

ほっとできて、前向きな流行語。
「メガ粒子レクイエムシュート!」も流行りませんかね。


得能正太郎 『NEW GAME!』
『小池一夫のキャラクター新論 ソーシャルメディアが動かすキャラクターの力 』 (Kindle版)

(たまごまご)

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