「どんな子にも立ち上がる力がある」10代で犯罪に走った子どもとどう向き合うか?
弁護士ドットコム

警視庁が発表した2013年の統計によると、暴行や殺人、放火などにより検挙・補導された少年の数は6675人で、2009年以降4年連続で減少した。一方、路上犯罪やひったくり等で検挙・補導された者の約3人に1人が少年であり、依然として高い割合を占めている。

10代という若さで犯罪を犯してしまった子どもたち。彼らがこの先、何十年と続く未来をしっかり生きていくためには、自分自身の罪を見つめ、深く反省することが必要だ。

そんな少年たちに対して、弁護士は何ができるのか。少年事件に携わる坂野真一弁護士に聞いた。

●反省のための対話「問いつめて泣かすことも」

——少年事件の弁護活動は、どんなことをするのですか?

「少年事件では、長い時間をかけて、子どもとの対話を繰り返します。『なんでこんなにくだらない、恥ずかしい、人としてだめなことをやってしまったんだろう』と、子ども本人が心に痛みを感じながら真剣に考えてくれるようになって初めて、反省が深まっていくと考えています。私が徹底的に問いつめて、泣かすこともあります。

親御さんの協力のもと、家庭訪問をすることもあります。子どもと頻繁に顔をつき合わせて質問を投げかけ、その答えを受けてさらに質問し・・・と、本当に反省しているのかどうかを確かめながら、慎重に対話を続けることが弁護士の仕事です」

——なぜ、子どもとの対話が重要なのですか?

「大人が起こした事件では、犯罪の重大さと刑の重さがおおむね比例します。

一方、少年事件では『この子が立ち直るにはどういう処分が適当か?』という観点で、審判がなされることになっています。そのため、少年が審判までに、立ち直るきっかけをどこまでつかんでいるのかということが、とても重要になってきます。

たとえば、通常なら少年院に行くような事案でも、『この子どもは反省を深められている』『もう再犯のおそれはないようだ』と裁判官が判断すれば、保護観察処分といって、普通の生活をしながら保護司の先生のもとへ通う処分になることもあります。

私が扱った中では、ある子どもが、人が住んでいるところに火をつけてしまった事件があります。これは現住建造物放火といって、非常に重い犯罪にあたる行為ですが、反省の経過と事件の内容をふまえて、試験観察の処分が下されました。

一方、初めてバイクを盗んだ子であっても、家庭環境が劣悪だとか、本人の反省が深まっていないと判断された場合は、少年院に送られる可能性も考えられます」

——話し合えば、子どもは反省しますか?

「そういつも、うまくはいかないです。

反省したフリをする子もいて、『悪いことをしたと分かってる。もう二度とやらない』と口では言っても、私が『どうして二度とやらないのか』と聞くと、『自分も辛い目にあったし、親に迷惑かけたし』などの答えが戻ってくるケースがあります。

これは反省とは言えません。悪いことをしたと認めているだけなのです。私がさらに『じゃあ、誰も見ていなくて、絶対誰にも知られない所でも、本当にやらないのか?』と聞くと、答えに詰まる子は非常に多いものです。

どれだけ話しても通じなくて、『自分は悪くない。全部周りが悪い』と言い張る子もいました。子どもの心が全部読めれば良いのに、といつも思います。

ときには、こちらがドキッとするような鋭い質問をする子もいますね。援助交際をして、『相手は気持ちよくなって、私はお金をもらう。誰も損をしていないのに、何が悪いの?』という反応を示す子もいました。『なぜ人を傷つけてはいけないの?』とストレートに聞いてくる子もいます。

子どもといえども、彼らとの対話は真剣勝負です」

●「いい子」が犯罪を犯すとき

——犯罪に走りやすい子どもはいるのですか?

「親から虐待を受けているなど、家庭環境が不安定な子は、犯罪に走るリスクがあります。ただ、家庭に問題がなく、傍目には『いい子』と思われている子が事件を起こすことも珍しくありません。

そのような子どもが事件を起こすと、ほとんどの親は『あんなにいい子だったのに・・・』と言います。親はその子が無理していい子を演じていると気づかず、『もともといい子なんだ』と思って、無意識に期待をかけてしまうんですね。

たとえば、家族で旅行に行くとき、いい子は『親は、家に残って勉強したらいいと思っているんだろうな』と、先回りして親の気持ちを読み取り、本当は旅行に行きたいのに我慢します。ところが親は『勉強したくて残るんだろうな』としか思わない。

子どもは、親に好かれるために無理していい子を演じているのに、親はそれが素だと思いこんで、ちょっとでも『いい子像』からずれるとたちまち非難する。そのギャップが子どものストレスとして積み重なって、犯罪に走る様々なきっかけの1つになるということは充分考えられます。事件を起こした子に話を聞くと、『親から期待をかけられて辛かった』と言う子もいます」

●「どんな子にも、つまづいても立ち上がる力がある」

——犯罪を犯した少年は、何をもって「更生した」と言えるのですか?

「どんな誘惑があっても、自分の力で跳ね返して、もう事件を起こさないこと。それが、『更生した』ということだと思います。

もし自分で立ち向かえなかったら、信頼できる大人に相談してほしい。だいたいの子どもは、大人ではなく友達に相談するんですよね。仲間意識が強いので、大人に相談すると『チクった』と思われて村八分にされたり、いじめの原因になるのかもしれません。

ただ私としては、『大人は、子どもの心は忘れてしまっているかもしれないけれど、困ったことが起きたときにどうすれば良いのか?という知恵は持っている。いけないことであれば止めることもできるから、相談してほしい』と伝えたいです。

自分で跳ね返せなくても、大人の力を借りて跳ね返せる。それも、更生したということだと思います」

——少年事件に携わる上で、信念にしていることはありますか?

「『どんな子にも、つまづいても立ち上がる力がある』と思っています。

少年事件は手間がかかる上に、うまくいくことばかりではありません。中には、万引きして『反省した。もうしません』と言ったその晩にひったくりをした子もいます。

ただ一方で、今まで3人の子が、少年院を出た後、『大学に受かりました』と手紙をくれました。

事件を起こした子どもが反省を深められるよう努力することが弁護士の仕事であり、存在意義です。これからも、できる範囲で続けていきたいと思っています」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則(中央経済社)」。最近は火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:ウィン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.win-law.jp/

全文を表示