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存在感ある悪役の人気が、ドラマの主人公を凌駕してしまうことがある。年末年始に流れたテレビCM「お正月営業 ピザーラVSピザブラック『お正月』篇」も、そんな奇妙な形で話題になってしまったようだ。

ピザーラはご存知のとおり実在する宅配ピザチェーンで、このテレビCMの広告主だ。対するピザブラックは架空のライバル店で、2014年から「倒せ!ピザーラ!」を掲げてCMに登場している。

「お正月も出前するピザーラの方がよっぽどブラック」

もちろんピザブラックは、ピザーラを引き立てるための分かりやすい「悪役」にすぎない。経営理念は「安く仕入れ、カンタンに作り、高く売る」だ。

ピザーラの「ウインタークラブピザ」に対抗して、安い赤ウインナーでカニ型の「ウインナークラブピザ」を作ったり、タダ同然で仕入れたパンの耳を集めてピザ生地を作ったりと、いつも安易なコスト削減でピザーラを倒そうとする。

しかし「お正月」篇のCMで、俳優の遠藤憲一さん扮するZENIZO KURODA社長が放ったある一言がきっかけで、世間のピザブラックへの評価が「急上昇」してしまったのだ。

「われわれピザブラックは、お正月はガッツリ休みます!おせちを食べててくださいね(笑)」

KURODA社長はビーチに寝そべりながら、こう言い放つ。一方でピザーラの配達員に扮した「ザキヤマ」こと山崎弘也さんは、「ピザーラは、三が日もバッチリ営業しています!」と元気にアピールする。

ピザーラとしては、年末年始も宅配を受け付けますというメッセージを届けたかったのだろう。実際ネット上でも「究極にピザ食いたくなった」などと感謝する声もある。

「元旦当直の同期が『ピザーラだけやってた!(泣)』って歓喜の投稿してたから、とある大学病院の医局は救われたようです」

だがそれ以上に目立つのが、「むしろそれホワイト企業なんじゃ」「飲食なのに正月休みをくれる企業」とピザブラックを称賛する声だ。

「労働者視線」と「消費者感覚」との矛盾を露呈?

もちろんピザーラが三が日に営業していても、祝日である元旦に割増賃金が支払われるなど、報酬や業務が合法であればまったく問題はない。

しかし「ピザブラック」という店名と「正月はガッツリ休む」という主張が真逆で印象的だったのと、善玉ピザーラとのコントラストが昨今のブラック企業批判の風潮に合致してしまったということなのだろう。

「お正月も出前してるようなピザーラの方がよっぽどブラックなんですが」
「むしろ正月働くピザーラはブラック企業だと思うよね」

と、ベビーフェイス役であるはずのピザーラに、予想外のとばっちりが行くツイートまで散見される有り様になっている。

労働政策学者の濱口桂一郎氏は12月29日のブログでこのCMに言及し、「日本人の消費者感覚をあまりにもよく表しているというべきか…」と驚きの思いを綴っている。

「このCM自体が壮大な皮肉のつもりなんだろうか、という深読みを思わずさせてしまうほどに、労働論壇と消費者感覚の隔絶を面前に突き出してくるような、そんな年末CMです」

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