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101213tojorei.jpg   日本が誇るアニメ・漫画産業は衰退してしまうのか――。

   2010年6月の東京都議会で否決された『青少年健全育成条例改正案』。その中で使用された「非実在青少年」という造語がさまざまな物議を醸したことは、皆さんの記憶にも新しいだろう。この改正案が11月30日、姿を変えて都議会に提出され、出版業界やネットを中心に、再び大きな議論を巻き起こしている。

   今回の都議会では、6月には反対した民主党が賛成にまわる見通しとされ、可決の可能性が高いといわれる。しかし、「一度否決された条例をなぜ再び、しかも性急に通そうとするのか?」「非実在青少年という文言が削除されたとはいえ、規制の範囲はかえって拡大している」との非難はやまない。

   著名な漫画家や大手出版社をはじめとした反対派の声は届かないのか? 12月15日の改正案採決を目前にひかえた同12日、この問題に強い関心をもつ作家やジャーナリスト、議員による『採決直前!都青少年育成条例改正案・最後の主張』と題した催しが開かれ、ジャーナリストの昼間たかしさん進行のもと3時間近く徹底的に議論。その模様をニコニコ生放送が中継した。

■ 有田芳生氏「親が行政に規制を委ねるのはすごく危険」

   今回の条例改正案が浮上したのは、過激な性描写を含む作品の「業界自主規制」が不十分だからという指摘もあるが、漫画家、あさりよしとおさんによれば、出版側はもとより自主規制を行ってきているという。「なぜ今さら行政が『表現』に規制をかけなきゃいけないのか、理由がまったく分からない」と同氏が憤ると、官能小説家の開田あやさんも「出版社は絶対に(社会の)ムードを読んで(表現者に自主規制の)要望を入れる」と同調。時代によって移り変わっていくべき規制事項が、条例によって決定的なものにされてしまうことへの危機感を訴えた。

   反対派の多くの胸には「否決されたものをなぜ再び?」という疑問がある。その点について、6月の都議会では反対したものの、今回は賛成派にまわった都議会議員(民主党)の浅野克彦さんは、前回の案とは「本質的には変わったものになっている」ために「否決するラインではない」とした。続けて、規制によって出てくる可能性のある漫画界の「萎縮効果」について、「出版社が(表現者を)守るのでは」と発言したが、出席した作家たちから「それは理想論」と反論された。

   また、石原都知事をはじめとした賛成派がかかげる「親が子どもを守るため」という理由に対しては、参議院議員(民主党)の有田芳生さんが「行政に任せればそっちがやってくれるという発想がどこかにあるのでは」と指摘。「自分(親)たちの責任を放りだしちゃって(行政に)委ねるという風潮はものすごく危険だ」と語気を強めた。

■ ニコ生視聴者の95%が都条例改正案に「反対!」

   放送前から視聴者が1万人を超え、番組終了時点での総来場者数が6万人を超えた今回の放送。言うまでもなくニコニコユーザーの関心も非常に高かった。

   特にコメントが集まったのは、番組後半、ニコ生の運営スタッフが「都議会をニコニコで生中継しようとしたらできなかった」と明らかにしたときだ。出演者の多くが驚き、ユーザーたちも「それはおかしい」と都の閉鎖性を非難した。

   さらに、翻訳家の兼光ダニエル真さんは今回の条例で東京都と出版業界の信頼関係が崩れたことを指摘、フリーランス記者の長岡義幸さんが、出版業界がどういう自主規制を行ってきたかをまとめたものを紹介すると、多くのユーザーが「既存の規制で充分」と評価した。

   番組最後に行われた改正案に対するアンケートでは、視聴者の95.5%が反対を表明した。しかし、その圧倒的な数字差はむしろ「賛成派はそもそも番組を見ていない」という事実のあらわれでもある。出演者一同も「賛成派にも見てほしかった」と残念に思った様子だった。漫画家の環望さんは自分自身の体験を例にあげながら、「子どもの多様性というものを考えるのだったら(規制するのではなく)尊重してあげるほうがいいと僕は思います」と訴えた。

   今回の放送では、条例の内容だけでなく、都の姿勢や賛成派の関心の低さなど、さまざまな問題点が浮き彫りになった。文化の中心である『表現』、それに対する『規制』というものを、国民一人ひとりがもっと深く考えるべきではないのだろうか。

※ニコニコ生放送『採決直前!都青少年育成条例改正案・最後の主張』
 http://live.nicovideo.jp/watch/lv34395435
 (2010年12月19日までタイムシフト視聴できる)

(古川仁美)

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