ニコニコニュース オリジナル

 株式会社角川グループホールディングス(GHD)と株式会社ドワンゴは2011年11月8日、記者会見を開き、ユーザーがコメントできる電子書籍サービス「ニコニコ静画(電子書籍)」や、無料のWEB漫画誌『角川ニコニコA(エース)』の創刊を発表した。記者会見終了後には、角川GHD取締役会長の角川歴彦氏とドワンゴ会長の川上量生氏が登場。ジャーナリストの津田大介を進行役に迎え、「電子書籍・ソーシャルリーディングの未来に向けて」というテーマで、トークセッションを行った。角川氏はAmazonとの1年間の交渉で煮詰めた11条件の中には「出版社として飲み込めないのも入っている」と明かす一方で、「Kindle Fireが来ないと、電子書籍時代は来ない」と語るなど、日本の電子書籍の現状と未来について川上氏と大いに語り合った。

 以下、トークセッションの模様を全文書き起こして紹介する。

・[ニコニコ生放送]全文書き起こし部分から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv69352807?po=news&ref=news#35:50
・本の新しい価値が必ず生まれる――「ニコニコ静画(電子書籍)」発表会見全文
http://news.nicovideo.jp/watch/nw142739

■角川とドワンゴという組み合わせ

津田大介(ジャーナリスト:以下、津田): ニコニコ生放送をご覧の皆さま、どうも、津田大介です。第二部の進行役を務めさせていただきます。第二部は記者会見とは一転しまして、今後の電子書籍や出版業界の未来像に関する一歩踏み込んだ中身について、いろいろお伺いしていきたいと思っています。今回提携した角川グループとドワンゴの両社の会長にお越しいただきまして、電子書籍の未来を語っていければと思っています。それでは早速、角川グループホールディングス角川会長、ドワンゴ川上会長のお二人をお呼びしましょう。どうぞ。(両氏が登場)

角川歴彦(株式会社角川グループホールディングス取締役会長:以下、角川): こんにちは。

津田: どうも。お二人とも本日はよろしくお願いいたします。

川上量生(株式会社ドワンゴ会長:以下、川上): よろしくお願いします。

津田: 最初は型通りに始めていこうかと思います。角川とニコニコの連携がいよいよ始まったのですけれども、角川会長、今回の連携はもともとどのような経緯でスタートされたことなのでしょうか。

角川: 話せば長くなってしまうのですが、『週刊アスキー』の1000号記念というのが秋葉原であったんですよ。その時に1000号記念の週刊アスキーの表紙を全部貼った時に、まず思ったのは、女優たちが表紙を飾っているのだけれど、そこになぜかアニメの表紙の号があって、それの売れ行きが良いんですよ。それで1000号記念で集まった時の来場者の皆さんがすごく良い意味でサブカルチャーっぽくて。初音ミクの表紙もあったりして、それがすごく売れ行きが良いということで、初音ミクを配信しているニコニコ動画と一緒にやったらきっと面白いハーモニーができるんじゃないかなという風に思ったんですね。

津田: では角川さんの方からドワンゴさんの方に声を掛けてと。

角川: そうです。

津田: 川上さんは最初に角川から話が来た時はどういう印象でしたか。

川上: 話と言ってもいろいろな話があるので(笑)。

津田: 連携したいという、ドワンゴと角川という組み合わせ。いろんな組み合わせがあったと思うのですが。

川上: やっぱり角川グループの持っているコンテンツというと、ライトノベルもそうですけれどアニメとかも、もともとニコニコ動画に無くてはならない、勝手に使っていたコンテンツがすごく多かったわけで(笑)。

津田: MAD(既存の音声・ゲーム・画像・動画・アニメーションなどを個人が編集・合成し再構成したもの)とかありますしね。

川上: そうですね。そういう意味ではいろいろな出版社がありますけれども、やっぱり角川グループと一緒に仕事が出来るというのは良かったですね。

津田: ニコニコ動画も最初登場した時は、国産のYouTubeだという感じで比較されることも多かったかと思うんですけれど、その中で角川さんはいち早くYouTubeにMADでも良いからコンテンツをどんどん認めていくみたいな、動画に対してかなりネットと親和性の高い提携を打ち出していたんですけれど、ドワンゴの会長としては角川のそういった戦略をどう見ていたのでしょうか。

川上: やっぱり角川会長はちょっと違っているんですよね。正直すごく歳もいっている方なのにも関わらず、やたらITとか、いろいろなことに関して本質的なところがすごく見えている人だなと思いますね。

津田: 角川グループの雑誌とかの編集部の人と話をすると、「うちはもう会長が一番先を突っ走っていて、現場がついて行くのが大変だ」みたいな、そんな話を聞きますからね。

角川: 僕はYouTubeが来た時に、最初に支持した一人だと思うんですよね。当時はリスクはあったんですけど。テレビ局はみんな違法動画ということで反対していましたし。だけどその時に僕はYouTubeに、日本のJASRAC(日本音楽著作権協会)に加盟したらどうかと言ったんです。その時にYouTubeはネガティブではなかった。そこで僕は内々にJASRACに「YouTubeは交渉の場に参加しますよ」という話をしたんです。その時にできれば、「YouTubeだけではつまらないからニコニコ動画も誘ってみて」という風に言ったんです。それをまた川上君が正面から受け止めて、結果的にはJASRACに入ったどころではなくて、今日になってみるとYouTubeよりもはるかに真面目に、そういう違法動画についての一定の見識を持っていて、排除しようする姿勢があるので、本当に良かったと思っているんですよ。

■本という固定化されたものが、リアルタイムに流動化していく

津田: 昨年末ぐらいに「BOOK☆WALKER」という電子書籍の新しいプラットフォームを角川グループが発表して、ちょっとずつ機能を足していく、いずれは今年の春から夏にかけて電子書籍をソーシャル化していくということを角川会長はずっと仰っていたわけですけれども。いざ今回こういう形で、もう一つ上の段階に進むに当たって、実際角川さんとドワンゴさんはソーシャル化について、どういう話し合いで、どういう機能を付けていこうと詰めていったのでしょうか。

川上: 一つ、これは僕の持論で処していることなのですけれども、電子書籍サービスは今AppleとAmazonなどが有力と言われていますけれども、僕はネットの中でコンテンツを売っていく時に、コンテンツの利用方法をユーザーが選べるようにならなければダメだと思うんですよ。こういう風にコンテンツを楽しんでください、と楽しみ方を決めるというのは良くないと思っています。それは結局ユーザーがコンテンツを所有したいとはならないと思っていて。それで今回ニコニコ書籍というものを出させていただいたのは、別にニコニコ書籍でやりたいと言うのではなくて、別にどこでもいいんです。どこで買ったものでもユーザーが持っているものだったら、ニコニコ書籍で楽しんでいいですよというサービスにさせて下さいというのが一番です。

津田: どちらかというと、ニコニコの文脈を電子書籍に当てはめるというよりは、新しいコンテンツ販売のプラットフォームを提案するという・・・。

川上: いえ、販売のプラットフォームはうちは作るつもりはなくて、コンテンツを楽しむプラットフォームです。

津田: 機能を提供して楽しんでもらう、新しい体験をまた書籍に加えるということだと思うのですが。今回角川会長ご自身も早速この新しいサービスを利用して、著書を配信されたと伺いました。これについてご説明いただいてもよろしいですか。

角川: 僕は、『クラウド時代と<クール革命>』という本を書いたんですけれども、その時から著作権法をどうしても書きたいなと思っていたんですよ。それはやはり、21世紀に入ってからずいぶんネット環境が変わってきたのに、19世紀型の著作権法というものが今でもそういうところにあって、それをどういう風に変えたらいいのかなと思っているところに、アメリカのGoogleだとかApple、Amazonが出てきた。Google、Apple、Amazonのサービスみたいなものと、著作権法はどういう風に関わり合うのかということを啓蒙しようとしてね。

 僕は著作権法の法体系を書くつもりはないんですけど、そういうものを書こうと思って、今4章のうち2章を書き終わったんですけど、その1章を今日のニコニコ静画(電子書籍)のサービスの、スタート記念として無料で公開しようと。ちなみに1部は僕が直に書いて、2部はこの著作権法のいろいろな面白い意見を言ってくれる人、日本の著作権の権威も入って、あるいは国会図書館の館長さんの長尾(真)さんも入ってもらって。川上君との対談も入っているのですが、これを思い切って、川上君の了解を得て一緒に公開したらどうかということにしたんです。

津田: 僕も事前に見せてもらったのですが、この対談はすごく面白いです。楽屋でも話したんですけど、川上さんがご自分で「良いこと言ってますよね」と自画自賛していましたけれど(笑)。本当に角川さんも川上さんも面白くて、付箋を付けることがいっぱりあるくらいの、かなりキーポイントになる発言がたくさんあって、本当に面白いし無料で読めるということですので、ぜひ読んでいただければと思います。角川さん自身もこの機能を使って、本に自分でコメントを付けられたということですが。

角川: すごくエキサイティングな対談でした。きっと著作権に関心のある人は、この対談を非常に充実したものと思ってくれる。問題も投げかけています。対談の中では入っていないのを、文章の中に・・・。

津田: なるほど。注釈を後から入れると。この画面は出ますか?(実際の画面が表示される)。いいですね。映画とかDVDだったらオーディオコメンタリーってありますよね。著者が後からコメントするみたいなことが電子書籍だと、(書籍を)出した後にも注釈できたり、ここちょっと事実変わったんだよね、みたいな話を付けていけるという。本というある意味固定化されたものが、リアルタイムに流動化していくことができるということですね。

角川: そうですね。先ほど一部(記者会見)の発表のところで、この文章をこのように出来ますよと説明がありましたよね。二部ではそれを非常に具体的に表示できると思うんですよね。

津田: こういう本がどんどん電子書籍になってきたら、ニコニコのユーザーってツッコミが好きじゃないですか。逆に言うと、世間一般ではなんじゃこりゃという本が提供されると、つっこむことが面白いみたいな、新しい価値が出てくるみたいなことも生まれそうですね。

角川: 楽しみ方ができると思う。

津田: 確かに本が変わるなという気がします。

■ソーシャルリーディングの本質とは

津田: まだComing Soonな機能が多いという話だったんですけど、Twitterとも連携したりするんですよね。

川上: そうです。Twitterにリンクを書くと、そのページに飛べる。これは誰でも思い付く話だと思うんですけれども。

津田: Kindle(キンドル)なんかにもそういう機能はありますけれども。この本とか対談を読んでいると、Twitterに引用してどんどん掲載したいような、それで本に飛ばしたりという機能があるのですが。これはまだ引用までは行けていないんですよね。この印象的なフレーズを引用したいみたいなところが。

川上: そこらへんはですね、いろいろ・・・多少時間をいただければ(笑)。

津田: もちろん検討はしているんだけれども、諸々いろいろなところに配慮も必要があると。

川上: いろいろ配慮が必要になるので。それはやるべきだと思っているんですけれど、やっぱり著者の意向というものもありますので、そこはゆっくりやっていこうと。

津田: いずれ最終的にこういうものがユーザーの間に普及していけば、これが読む人を広げるんだよと著者側にも理解ができれば、機能が広がっていくと。

角川: 著者は自分の本の悪口を書かれるんじゃないかなと心の中をガードしているんですよ。川上君が言ってくれたんだけれども、実はこのソーシャル性は盛り上がろうというパーティーなんだということが分かってくれたら、作家の関心が非常に高まってくるし、掲載できる書籍の数も飛躍的に増えるんだと思います。

津田: いま角川会長が仰ったみたいに、著者は作品を作りますが、ミュージシャンにはライブがあるのが羨ましいと思ったんですね。CDを作ってライブがある。ライブってめちゃくちゃ盛り上がるじゃないですか。でも僕らのようなノンフィクションの書き手にはライブが無いんですよね。でも本を出した時にTwitterで感想がたくさん来たりとか、ソーシャルでその本が話題になって盛り上がるのは、物書きにとってのライブだなという感じがすごくしていて、これなんかまさにそうですよね。出したばかりの時に、いろいろな人がリアルタイムで、どんどんコメントを付けていって盛り上がるみたいな。

角川: 「ソーシャルリーディング」というものの本質がこういうところにあるんじゃないかと。

津田: ライブとか人前に出るのは怖いというような著者の人も、一歩ずつ踏み出していけるといいのかなと。

角川: 一方で作家って、出版社のマーケティングは大概サイン会しか無いんですよね。サイン会は、あくまでもフェイス・トゥー・フェイスで、そのアナログが良いという人もいるんだけども、どうもそれだけでは足りないんじゃないかと思ってくれている作家も増えてきたので。ニコニコ静画のソーシャル性は、非常に新しい手法だと思ってくれる作家も多いと思いますよ。

川上: ソーシャルな部分も含めてコンテンツなんだ、そこまで含めて著者がある程度関与してコントロール出来るような場所になるというのが、未来の著作権の姿だと思うんですよ。特に著作権って、英語だとCopyrightですよね、だからコピーする権利なんですよ。その概念自体がネットの時代には合っていないですよね。

■電子書籍の「帯」は日本の独自文化が生んだ新しい価値

津田: あともう一つ、機能的なところで気になるのは一部(記者会見)の方の説明で、検索機能があるのかないのか分からなかったのですけれども、まだ現状は付いていないんですね。

川上: 当然付くべきですよね。これは多分エンジニアの怠慢だと思います(笑)。スケジュールを守れと言った結果、絶対に無ければいけない機能を勝手に落としたんだと思います。

津田: これは公開生放送を使ってパワハラをしているんじゃないかという話が(笑)。でも付くべきですよね。もちろん検討はされていると。

川上: はい、付けるのは簡単だと思うんですけどね。

津田: 電子書籍はやっぱり検索できてナンボというのがありますよね。

川上: 僕は「どうしても帯を入れろ」ということを強行に主張したので、帯を優先したんでしょうね。

津田: 優先順位がちょっと間違っている気がしますね(笑)。

川上: 間違っている感じがしますよね。

津田: それもまたニコニコらしいかなという。

角川: でも本の帯をね、ニコニコ静画の中で表現できるというのも結構楽しいかなと。それも良かったと思うんですよ。あんまりね・・・。

津田: いじめない方がいい(笑)? でも帯って、まさに日本の文化ですもんね。海外の本は帯は付けなくて、日本の帯は過剰だと言われるけれども、帯で買う本もありますし。

川上: 海外は帯は無いんですか?

津田: 帯は無いですよ、ほとんど。

角川: そうですね。やっぱり日本の出版社の編集者は、あの帯に自分の作家への思いを表現するんですよ。だから、編集者が作家への思いを表現出来るのは、あの帯の中だけなんです。作家と編集者のハーモニーで本が出来るというあの表現方法は、ぜひ電子書籍でも残すべきだと思うんです。

津田: ある意味で言うと、今回の提携でこのBOOK☆WALKERに帯のような要素が入ったのは、多分世界でも初めてだと思うんです。それはやっぱり日本の独自文化というものが、新しい価値を生み出しているということもあると思うんです。

 もう一つ個人的に思ったのが、僕自身が電子書籍を自分で作った時にやったんですけど、コメントを付けられるじゃないですか、ここが気になるというのをみんなが付けられるというのはあるのですが、オーディオも付けたいんですよね。先程も言ったDVDのオーディオコメンタリーみたいに、本にはこういう風に書いているんだけれど、実はこうだったんだよねと著者がしゃべりを入れたりとか。ニコ動だったら動画でも良いと思うんですよね。そういうものが付いていくと、さらに本に広がりができるのかなと。いずれそういうところにも期待したいと思います。

■電子書籍の利用度は?

 電子書籍の現状についてこの後、1回調査をしたいなと思います。そもそも電子書籍がどのように利用されているかという点について、参考までにユーザーアンケートを2問取ってみたいと思っています。まず1つ目のお題は「あなたはどの程度の頻度で電子書籍を利用していますか?」。1.月に5冊以上購読、2.月に2~3冊ほど購読、3.月に1冊購読する程度、4.無料で読んでいる、5.最近読んでいない。これは週刊などで4冊読んでいる人はどうなるんだという・・・。

川上: いま電子書籍を使っている人はほとんどいないんじゃないですか?

津田: でも4の無料で読んでいるというのは、無料で10冊読んでいる人がいたらどうなるんだろう。

川上: でも無料の電子書籍自体あまり無いですよね。青空文庫とかそういう(ものくらい)。

角川: パブリックドメインのね。

津田: そうですよね。(結果が)出ました。でも月に5冊以上読んでいるという人も結構いますね(3.9%)。あとは携帯電話向けの漫画を最近読んでいる人もいますよね。

川上: 意外に多いですね。相当いますね。

津田: わざわざこの会見を見に来ている人ですから、多少高めになっているということはあるんでしょうけれど。まだまだそこまで普及しているわけではないし、これから開拓する余地があると。

川上: 自炊(書籍や雑誌を裁断機で切断しスキャナなどを使ってデジタルデータに変換する行為)をやっている人は、どれくらいいるんですかね?

津田: 自炊のアンケートは今作れますか? あなたは自炊したものをiPadとかiPhoneとかPCなどのデバイスで読んでいますかという。

川上: 自炊をやっている人と、自炊はやっていないがやりたいと思っている人と、興味がない人。

津田: そのアンケートは今作ったりできますか? では2つ目のアンケートをやるので、やりつつ作ってもらいましょうか。もう1つのアンケートは、電子書籍を利用している人が、どういうデバイス環境、どういう端末で見ているのかというアンケートをしたいと思うんですが。2つ目のアンケートはできますか? まぁ自炊って言っても・・・。

川上: 自炊って料理つくることじゃないですからね。

津田: 違いますね(笑)。

川上: 自分でスキャンして電子書籍を作ることですね。

津田: 角川さんのシンポジウムで、角川さんが講演した時に、作家の島田雅彦さんが出てパネルでしゃべって、島田さんが普通に「自炊」という言葉を言っていて、自炊という概念がそんなに普及したんだって僕は結構びっくりしましたけどね。

(2つ目のアンケートが出る)
Q「どの端末で電子書籍を利用していますか?」
1.フィーチャーフォン
2.スマートフォン
3.タブレット
4.PC

川上: これ、知らない人も入れないと・・・。電子書籍を利用していないという。

津田: そうですね。利用してない人は、これ(アンケート)は答えないでください。フィーチャーフォンというのは、いわゆるガラケー(ガラパゴスケータイ)ですね。スマートフォンではない普通の携帯電話です。フィーチャーフォンで利用、漫画なんかはこの1.が一番多いと思いますけど。

川上: フィーチャーフォンって、なんでこういう業界関係者しか分からないような言葉を使うかな。

津田: ガラケーが分かりやすいですよね。

川上: ガラケーというか、普通の携帯電話。

津田: 普通の携帯電話でも、何が普通なのかというのもありますからね。もうスマートフォンばっかり出ているからそれが普通になっちゃっているので。

(結果が出る)
1.フィーチャーフォン 4.7%
2.スマートフォン   23.6%
3.タブレット     20.9%
4.PC         50.9%

津田: なるほど、PCが多いですね。

川上: PC、その他じゃない? 使っていない人は・・・。

津田: でもJコミさんとかも、PDFのやつ最近始まってきたから。タブレットスマートフォン・・・なるほどね、という感じなんですが。では自炊の質問は作れますか? ではその質問の用意が出来たら教えてください。この結果については角川さん、いかがですか。

角川: 僕はこんなところじゃないかなと。やっぱりスマートフォンが圧倒的なシェアを占めるだろうと言われたのは、今年の3月なんですよね。docomoが年度内に600万台スマートフォンを売るんだと言い出したのが。ですから、ここまでよくがらっと変わったなと思うくらいですね。それからスマートパッドはまだiPad中心だから、iPad2でここまで20%というのはいいところじゃないかなと思いますね。

津田: 川上さん、いかがでしたか? 今の2つのアンケートの結果を見て。

川上: 携帯が少な過ぎるので、やっぱり携帯ユーザーはこの番組を見ていないんだなと。

津田: 届いていない感じがしますか。

川上: マーケット的には、携帯の電子書籍のマーケットって世界的にもかなり大きいんですね。

津田: 300億円ぐらいありますよね、確か。

川上: そうですね。むしろ最近Apple、iBookなんかよりも大きいですよね。

津田: そうです。全然大きいです。

川上: 日本の携帯の・・・。でもそういう人はこの番組は見ていない。

津田: だから逆に言うと、そういうものをこういったBOOK☆WALKERみたいなもので今後つないでいけば、大きなパイを取れるようになる可能性はあるということだと思いますが。本当にデバイスがやはり移り変わってきたのかなと。半分が大体スマートフォンとタブレット、そして半分がPCぐらいの感じだったと思うんですけど、この辺りのデバイスの問題というのは、川上さんはどう捉えていますか? デバイスの普及というか移り変わりみたいなものは。

川上: どうなんですかね。僕は今iPadで本を読むことがすごく多いんですよ。リーダーにちょっと不満があるんですけれど、多分将来的にはこういうスレート(石版型のタッチパネル式ディスプレイを搭載したモバイル端末)で読む人が、一番多くなるんじゃないでしょうか。PCはPCで便利ですけどね。

津田: スマートフォンとタブレットだったら、読むのはどっちが好きですか? やっぱりiPad?

川上: タブレットですよ。それは圧倒的に。スマートフォンでは読めないですよね。

津田: 面白いのは電子書籍プラットフォームと言うとソニーだとかシャープだとか、いろんなハードメーカーがコンテンツメーカーと組んで、何か日本っぽい連合を組んでやると言って乱立して、結局ユーザーがどこを選べばいいか分からないという状況があるんですけど。ドワンゴの面白いところは、あくまで本当にネットサービスそしてコンテツを提供する企業というところで、ある意味ハード屋さんではないわけですよね。川上さんがもしソニーの人だったら、Sony Readerが最高ですよと言うんでしょうし、シャープの人だったらGALAPAGOS(ガラパゴス)で読むのがいいですよということを仰ると思うんですけど、現状だとやっぱりiPadが一番適しているという感じでしょうか。

川上: そうですね。ほかの選択肢は今のところちょっと・・・。Kindleが日本語に対応すれば、やっぱり軽いし、字も見やすいのでいいんですけどね。

津田: アンケートが出来たそうです。自炊はどれくらいこの番組を見ている人に普及しているのかというところで。はい、質問出ました。「紙の本をスキャン(自炊)したことがありますか?」。1.今、自炊をやっている。今というのは別にナウじゃないですよね(笑)。自炊を日常的にやっているということですよね。

川上: 自炊をしながら見ている人ではないですね。

津田: 2.以前やったことがある(今はやっていない)、3.自炊を知っているがしたことはない。4.自炊を知らない。

(結果が出る)
1.今、自炊をやっている 9.2%
2.以前やったことがある(今はやっていない)10.1%
3.自炊を知っているがしたことはない    69.4%
4.自炊を知らない    11.2%

津田: やっぱり、意外と低い結果というか。

川上: いや、20%は多いんじゃないですかね。

津田: 確かにね。逆に言うと、やったことがあるという人の中の半分は、ある意味もう脱落しているという考え方もできますよね。そういう意味では面白い。割と多いのかもしれないですけれども。料理番組ではありません、はい。自炊を知らないという人もやっぱりいますけれども。

■「Kindle Fireが来ないと、電子書籍時代は来ない」

 角川さんは、こういう自炊がブームになってやり始めているというところもあるんですけれども、そのPDF化したものを何で読むのかという問題がまだあると思うんですね。デバイスとしては、電子書籍を読む端末はどこに行かれると思いますか? BOOK☆WALKERってiPhoneにも対応しているし、もちろんiPadにもAndroidにも対応していますけれども。どこがメインになっていくと思われますか。

角川: やっぱりスマートパッドだと思いますね。僕はおそらく今のところはスマートパッドの2(iPad2)が出たから、随分BOOK☆WALKERのダウンロード数が増えたので、非常に敏感に反応しているけれども、本質的にはやっぱりKindle Fire(Amazonのタブレット端末)が出ないと、電子書籍時代は来ないんじゃないかという思いがしたんです。

津田: Kindle Fireはすごく早いし、コンテンツも全部いくらでも楽しめる。あれって多分、日本でこそ生きると思うんですよね。Wi-Fiルーターとかがこんなにブームになって売れている国って日本しかないですから。Wi-Fiルーターは、結局いろいろなデバイスを複数持つ人じゃないと意味が無いわけじゃないですか。でも、もう複数持つのが当たり前になっているから、Wi-Fiルーターが当たり前になりつつあるんですけれども。そうやって外でも高速に動画やら何やらをすぐ落とせるという環境が日本にはあるにもかかわらず、まったくコンテンツが提供されないという、いびつな状況があるんですけれど。Kindle Fireは今日本で発売されても、全然意味がないですよね。

角川: そんなことないと思う。

津田: それはどうしてですか。

角川: やっぱりそういう端末が出たことによって電子書籍が読まれて、急速に提供されるという環境ができると思います。

津田: 日本のテレビ局はコンテンツをKindle Fireに提供するでしょうか。

角川: すると思う。

津田: それぐらいやっぱりデバイスというものが、コンテンツ側の意識も変えていくという。

角川: 僕は7月24日の地上波デジタルの完全実施で、テレビ局の意識はがらっと変わったと思いますよ。

津田: 川上さんはそのあたりはどうでしょうか。ドワンゴにはコンテンツホルダーという側面もあると思うんですが、コンテンツ側の意識は、AppleにしてもAmazonにしても、どんどん売り側のそういうプラットフォームが増えてきているのですが、提供する側はまだまだ二の足を踏んでいるというところがまだ日本のメーカーは音楽にしても、テレビにしてもあると思うのですけど、どうお考えですか。変わっていくと思いますか?

川上: 僕はどちらかと言うと、日本のそういう人たちが遅いとか、分かってないとかいう風には思ってないんです。なんで遅いのかといったら、それで儲かる、ビジネスになることの目処が、みんな具体的なイメージが出せないから。見えないのにどんどんやっていくべきだという意識だけが高まっているんだとしたら、それはかなり危険なことだ思うんですよね(笑)。そういう意味では、まがりなりにも電子時代のビジネスのイメージというものが、ひょっとしたらこうなるかもなというようなレベルでは、みんな持ち始めていたんじゃないかなという風には思いますよね。

■未来のコンテンツは「コメントも含めた形」

津田: なるほど。その中で、音楽配信とかテレビ配信とかも、ようやくある種デバイスの進化によって、スマートフォンもこれだけ普及したということで、電子書籍も含めて、ビジネスの芽とか、ようやく今、2011年の後半ぐらいになって立ちつつあるかなぐらいの状況に行きつつあると思うんですが。その中で、先ほど未来像として提案された本の未来。ソーシャルリーディングとか、筆者コメントとか、こういうものが新しい書籍の付加価値をもたらすんじゃないか、ということにつながっていくと思うんですけど。川上さん自身は、本の付加価値というものには、どういうものが今後求められていくという風にお考えですか?

川上: 何なんでしょうね。例えば、ニコニコで生放送をやります、人気番組です、そうすると大体人気番組だと、ニコニコだとコメントが10万コメントぐらい付くんですよ。そういう10万コメントとか、「w(ワラ)」がそのうち30%ぐらいあって、10万全部読んでもしょうがないんですけど(笑)。これがTwitterになっても多分、数千とか1万コメントぐらいみんなしていて、とても読めない。Twitterはそれだけ多いと、あっという間に、翌日には検索してももう引っかからないんですよ。多分今後こういうことが増えていく。

 TwitterとかFacebookとか、いろんなところでコメントする場所が増えているんだけれども、あるコンテンツについての感想を求めようとすると、そういうオープンなプラットフォームでは得られない時代というのが、もうすでに来ているんですよね。そうしたらコメントを楽しむ時に、コメントの感想が欲しいじゃないですか。コメントの感想は求められるべきなんですよ。ではどこがまとめるのか。それはコンテンツホルダーがコンテンツと一緒にリンクさせて保存をするという形態がやっぱり未来のコンテンツの姿であって、未来のコンテンツはそのコメントも含めた形でコンテンツになるんですよ。

津田: すごく面白いですね。あくまで、TwitterやFacebookはみんなが感想を述べるためにはやり易いフローだけれども、そのフローしたものを一つの特定の著者に絞ることでストックしていくという考え方なんですね。

 あと今の川上さんの話にもつながるんですけれど、川上さんと角川さんの対談ですごく面白かったのが、ネット時代、特にリアルタイム時代になって、情報が溢れ過ぎていて、コンテンツの寿命がめちゃめちゃ短くなっている。そういうところがソーシャル化して、ある種の改編ですよね。ニコニコ動画だって、コメントが入るという時点でコンテンツが変わっているし、この本にしてもいろいろとユーザーが勝手にコメントを付けることで、本来だったら著者の文書だけを読みたかったものが、著者じゃないものまで見れるという意味での改編が行われている。二次創作とかコンテンツの改編を認めることが、川上さんはコンテンツの寿命を伸ばすことになるんだという説明をされているんですけれど、もう少しその真意を伺ってもよろしいですか?

川上: 別にそんなに難しい話じゃないんですけれども、ニコ動を例に取ると、コンテンツは引用されればされるほど、その引用された瞬間にそれは新しい情報になるわけです。コンテンツは1年前の情報かも知れないけれども、コンテンツを使った新しい情報というのは、昨日できたものだったりする。ニコ動でも流行り廃りはあるんですけども、初音ミクとか東方のブームはいまだに続いているし、終わる気配というのがない。それはなぜそうなっているのかと言うと、二次創作の連鎖が拡散しているからなんですよね。ネットが流行ってコンテンツの寿命って基本的には短くなっているわけですよ。だからほとんど短くなる方向にしか作用していないんだけれど、唯一コンテンツの寿命を長く伸ばしているのは、二次創作の部分なんですよ。そして二次創作っていうのは、実はコンテンツ改編だけではなくて、コメントを付けるという行動も含めるんです。それをもっとコンテンツ自身が取り込むことによって、コンテンツの寿命は長くなるし、コンテンツの価値も高まる。

津田: 今の川上さんのお話聞いて、まさにコンテンツをずっと作り続けてきた角川さんはどういうお考えですか。

角川: 僕は作家の、改編してはいけないというものは、この人類の歴史の中でこの100年ですね。

津田: あくまで著作権とかコンテンツっていうのは、ビジネス化したこの100年の過渡期的な。

角川: 100年の話なんです。僕の父親は口承文芸をやってきて、『語り物文芸の発生』というのをやった。平家物語ってみんなの前で琵琶法師が語るでしょ。そうするとその場でもって、みんな聞いている人が「いや、こうじゃないの?」と言うと、またそれを取り入れるんですよ。

津田: 最初っからクリエイティブ・コモンズで、みんなどんどん参加している、ソーシャルだったわけですね。

角川: ですから例えば義経記を読むと、義経が仙台の方に落ちていくじゃないですか、岩手の方に。ところが実際通ってないところまで義経が通ったことになっちゃうわけです。そういう風にして話を作っていったのが実は日本の古典なんですよ。世界の古典もそうだと思います。ところが、そういうことは触ってはいけないというのは、実はここ100年ぐらいの話なんですよ。インターネットという改編が出来るようなハードが生まれてきたのだから、そこをもう1回触れるようにしてもいいんじゃないかと。それは決して作家のクリエイティブ性やリスペクトを落とすものではないという風に僕は信じていますね。

■ユーザー自身の声によって、ユーザーが望んでいないルールが出来る?

川上: そういう意味では本当にCOPYRIGHTなんですよね。複製技術と一緒に著作権が出来たんですよね。

角川: グーテンベルクの印刷技術というのは活版印刷といって、活字を組んでガポーンガポーンと印刷するハンコなんですよ。だからそれは固定するわけです。そのグーテンベルクの印刷技術から生まれた著作権が、今の著作権法なんですよ。

津田: なるほど。今川上さんと角川さんが仰っていた著作権の話という意味では、新しいソーシャル著作権というものが必要なんだということを今度の本でも書かれていると思うんですけど。対談の中でなるほどと思ったのは、川上さんの新しい著作権というところで、こういうネットのコンテンツがどんどんソーシャル化されて、皆がコメントを寄せるようになっているときの、ソーシャル化されたところでの社会の権力というのは、多分もう著作権という法律ではなくて、ユーザーの声だと。「ユーザーの声が著作権を規定していくんだ」というようなのがあって。例えば今著作権を違反することよりも、ほかのユーザーに叩かれて炎上することを恐れているという意味で、ユーザーの行動を規律するものが法律ではなくて、むしろネットのユーザーからどう思われるかということが新しい規範になっているのではないかというのがすごく面白いと思ったんですけど。これを著作権に応用していくためにはどうすればいいのでしょうか?

川上: 応用・・・応用!?(笑)

津田: 応用というか、ある意味変な話ですけれど、もうユーザーの声になっている、僕もそう思うんですけれど、文化庁の人にこれを説明しても「分かりました。明日からユーザーの声に従って著作権法を変えます」とはならないと思うんですよ。だから現実の法律と、実際の運用のルールに開きがあるのをどう埋めていけばいいのかなと。

川上: 逆に、いずれユーザーが規定される側から、ユーザーが権力に。どちらかと言うと既存権力、大企業や巨大メディア、国、そういうものにネットのユーザーは反発しているんですけれど、その反発しているユーザー自身が実は炎上という行為を通じて、すごく強力な権力を持ち始めている。これはどこかで制限というか、ここはこういう風にしなければいけないよねというルールを、僕はそっちを作らなくてはいけないんだと思う。

津田: ある意味、もちろんソーシャル化がすべてバンザイというわけではなくて、ユーザーの声が強過ぎることによって、クリエイターの方も本当はもっと必要以上に強さを持たなくてはいけないのに、ユーザーの声におもねるようなクリエイターしか生き残れないのではないかなという危惧もあるかとは思うんですけれども。

川上: それもありますし、多分いろいろなルールが出来るわけですよ。よくネットの人たちもバカにしているルールってあるわけじゃないですか。例えばテレビとかでパロディになるのは、食べ物が出てきたら「この食べ物は後でスタッフが美味しくいただきました」という。あれはもうパロディにされていますよね。あれはもう全然モラルでも何でもなくて、意味の無い儀式になっているわけです。でもそういうルールを誰が作ったのか。これはテレビの視聴者、良識ある視聴者たちがテレビにクレームを付けて、そういうルールが出来たわけですよね。ネット時代には多分、ユーザー自身の声によって、ユーザー自身も望んでいないルールがたくさん出来ます。既に出来つつある。それをどうしていくのかということを僕は考えなくてはいけないと思います。

津田: そういうもののある種の結果の発露というのが、フジテレビのデモなんかも1つだとは思うのですけれど。

川上: そうでしょう。それでだんだんそういうことが起こってくるんですよ。

■テレビとニコ生の違いとは

津田: 角川さんは今テレビをどう見ています? 単体のメディアとしてコンテンツを提供するテレビというものは。

角川: やっぱりテレビが絶対的な時代があったじゃないですか。1960年代とか70年代、視聴率が30%とか40%ということが当たり前にあった時代。今こうやってテレビを視聴するスタイルが随分変わってきたといっても、でもやっぱり、されどテレビだと思いますよ。

津田: なるほど。その中でニコ生とかニコ動とか、それこそ小沢一郎さんが会見をしたことが大きなパラダイムシフトだということで、角川会長はすごく評価されていますけれど。テレビとニコ生の違いをどう捉えていますか。

角川: 例えば一般の人が家に帰って(午後)6時頃から9時頃までテレビを見て、そこではテレビが非常に力がある。ところが10時頃からは、今度はプッシュするメディアであるテレビから、見る人の方に力を持ってくる時間が始まる。そこではPCやスマートフォンを見たりというところで、ニコニコ動画が出てくるのではないですか? だからニコニコ動画の視聴率が一番高い時間は11時?

川上: そうですね。夜中の11時から0時ぐらいにかけてですね。

角川: 明らかにメディアはそういう風に変わってきている。そういうふうに考えればいいんじゃないのかな。

津田: なるほど。その中で共存出来るところは共存できてということでしょうか。でも実際に今はテレビの放送作家とか制作のプロデューサーの人と話をすると、みんなニコ生を見てますよね。やっぱり面白いと言っています。テレビの世界がどうしてもコンプライアンスだとか製作費の低減だとかいろいろなことで面白いことが出来なくなっていて、かつてテレビの世界ですごく尖ったり面白いことをやっていた人がニコ生すごいなと、わりと愚痴っぽいことを言っている。そういう現状を川上さんはどう捉えていますか?

川上: テレビとネットの文化というよりは、結構自爆している部分がありますよね。例えば僕が子どもの頃見て面白いと思っていた「電波少年」だとか、アニメの「北斗の拳」とかは、今テレビでは出来ないわけですよね。やっちゃいけないことになっているわけですよ。

津田: 僕らが子どもの頃って、テレビにもっと裸がたくさんありましたものね。

川上: 自由だったから面白かった。それが自由ではなくなったから面白くなくなったのであって、別にテレビというメディア自身に限界が来たからということではなく、いろいろなルールが出来たから面白くなくなったんですよ。

津田: 自由であって、そこに対してお金も集まってきたから、そのお金を使って面白いことが出来たということなのでしょうね。

川上: いや、というより自主規制ですよ。自主規制が良くない。ネットもこのままいくと同じ道をたどる。

津田: 自主規制をしなければいけなくなった。そういう意味では今、川上さんが恐れているネットの自主規制というのをさせないためには、どういう施策が必要だと思いますか?

川上: どういう施策・・・それは考えなければいけないところですよね。自主規制というのは僕らがやるのではなくて、ユーザーの声でやるんですよ。

津田: ではニコ生がちょっとエロいコンテンツを止めろとか、歌い手とかもいらないよみたいなことを言い始めたら、メディアもどんどん変わってきてしまうと。

川上: 実際にそういう現象も起こっていますよね。ユーザーがどんどんルールを作って、そういうものを意見として挙げてきているんですよ。

津田: でも一方でユーザーの要望というのは本当にバラバラで、いくつかには分かれたとしても、1つに集約することは難しいと思うのです。角川さんはこういったユーザーの声みたいなものが、かつてないほど押し寄せている今、どういう交通整理をしていくのがいいと思われますか?

角川: テレビはブロードバンドじゃないですか、対してネットはナローバンドというか、そういうメディアを目指しているわけだから、そういう多様なニーズに細かく応えられて、リーチする数は少ないけれども、コンテンツの多様性があるというのが大事だから、それを達成することが出来れば、僕は川上君が心配しなくてもいいんじゃないかな、心配するところは少ないんじゃないかと思うんだけれど。

川上: そうですね。ただ、ユーザーが好きなものを見るって、理想の世界に見えるんですけども、でも好きなものがあるユーザーの方が少ないんじゃないかと思うんですよね。ある意味やっぱり皆、強制されたいんだと思うんですよ。

(一同笑)

津田: 与えられたいと。

川上: 与えられたい。では与えられたい場をどうやって作るのかという問題は、そこでも残るんじゃないかなという気はするんですよね。

角川: それはクリエイターの創作性。クリエイターの一番楽しいところじゃない。

川上: そうですね。そういうのがあるから楽しいんですけれど。

角川: 面白い番組を作ろうというね。

■サブカルチャーが表舞台に上がってきた

津田: そういう意味でまた1つ著作権というのもルールになっていくと思うんですけれども。角川さん自身がネット時代の著作権はこうあるべきだという提言をこの本でもされていると思うんですけれど、再度もう少し現時点でのネットの著作権はこうあるべきだというお考えをお聞かせいただいてもよろしいですか?

角川: 実際AppleがiCloud(Apple社のクラウドコンピューティングサービス)を始めて、普通の人たちが情報端末を3つくらい持つ時代になったじゃないですか。今まではガラケー1つしか無かったのが、スマートフォンにiPadまで持っているという時代。そうすると1人の人間の中で情報端末が複雑にある時に、やっぱりどこか1カ所の端末で本を買えば、その本はどの端末でも見られるという環境、つまりデバイスフリーみたいな環境はやっぱり認めていかなきゃいけないんじゃないかなと思うんですよね。実はまだそんなことは認めないという人も結構いたりするんだけれども、ユーザーの声を聞けば1回買ったものをほかの端末で見られないというのはけしからん、納得出来ないと。そういう声を積み重ねていって、新しい著作権が基本的には生まれてくるのではないかと思います。

津田: なるほど。川上さんはネットの著作権はこうあるべきだという骨子みたいなものはありますか?

川上: やっぱりユーザーの楽しみ方を制限しないということと、コンテンツが売れるということはリンクすると思うんです。それは本来コンテンツのクリエイターとユーザーとの間で利害が一致している点だと思うので、自然に競争原理で本来そうなるはずです。それを理解しない人が多い現状だったら、ある程度、誰かが音頭を取って先導してやらないと、そういう良い世界にはならないのではないかなと。

津田: 誰が音頭を取るべきなんですかね? 現状だと。

川上: 本当は信念を持った政治家とかがいてくれればいいと思うのですけれども。

津田: ひろゆきくん(西村博之氏、ニワンゴ取締役)じゃダメですかね?

(一同笑)

津田: 苦笑、みたいな感じでしょうか。

川上: そういうユーザーパワーを先導しながらね(笑)。

津田: 今その話でつながるところ、競争って大事だよねというところで言うと、川上さんがこの対談でも述べられている3年前にニコ動が登場した時に、テレビ局とか音楽業界から文句がどんどん来て、当然そのまま続けたら訴訟にもなりかねないというところで、商業コンテンツを全部自主削除していったわけですよね。その結果、初音ミクだとか、いろいろなCGM(消費者生成メディア)文化というのが花開いた部分があると思うんですけど。でもそのことによって実は一番被害を受けたのは、テレビ局とか音楽業界ではないということですよね。結局ニコ動とかニコ生とか、今こういう番組を見ている人は、そういうテレビとかのものではないんだけれども、ユーザーが作ったコンテンツだけでプライベートな生活のかなりの部分に満足しているという。

 実際そうですよね。僕も今年の6月に出身の中学校に行ったんですよ。NHKの「ようこそ先輩」という番組で中学校に行ったら、芸能人よりもニコニコの歌い手さんの方がもう有名なんですよね。ニコニコの歌い手さんと会ったことあるよと言ったら「マジで? 先生すげえ!」みたいな。僕の出身の北区の公立中学校でもクラスの3分の1ぐらいの間では、もうニコ生に出ている歌い手さんとかがヒーローになっている。芸能人よりも反応があるような状況になっていて、そういう意味でコンテンツの趣向性というものがどんどんシフトされている状況があると思うんです。それに関して角川会長が「コンテンツの世界のニュータイプ」という表現をされていて、すごく面白いなと思ったんですけれども、それをもう少し説明してもらっていいですか?

角川: そういうサブカルチャーが表に出てきている。ニコニコ動画はサブカルチャーの出身母体で、それがだんだん表舞台に上がってくる。今回も川上君と一緒に「腐女子源氏物語」というミュージカルをやろうと。

(一同笑)

角川: その半分の出演者はここ(ニコニコ動画)で生まれてきた人だよね?

川上: そうですね。

津田: でもそうですよね。今回無料(ニコニコ静画(電子書籍)で2週間の期間限定)で出るけど、『テルマエ・ロマエ』が今もう初版が80万部も売れているんですよね。かつてだったら、どんなに頑張ってもヴィレッジヴァンガード(複合型書店)とかで5万部とか10万部で、知る人ぞ知るみたいな漫画が。

角川: 10万部も難しいよね。

津田: そうですよね。それがもう80万部。どメジャーコンテンツですよね。かつてサブカルチャーだったものの価値転換というのが少しずつ起きている感じがしますよね。

川上: 腐女子の源氏物語ですが、うちでやるミュージカルの源氏物語のコンセプトが腐女子が作った源氏物語みたいなコンセプトで、僕はこの話を当日知って、角川会長が激怒するのではないかなとすごく心配だったんですけれども、全然受け入れていて(笑)。でも実際に僕もその後勉強していろいろと調べてみると、もともと源氏物語にはそういう側面がやっぱりあったわけですよ。今は文学になっていますけれども。もともと日本の文化と今のサブカルチャーというのは親和性が高い、相当近いんですよね。

角川: いま製作して12月10日に公開しようと思っているんですけれど、ニコニコ動画の2300万人の会員に関心を持ってもらえるような源氏物語ミュージカルを作っている。その時に出演者がここから生まれてきたアーティストって面白いと思わない?

津田: そうですよね。だからある意味、本当にこれからニコ動だけでもなく、いろんなネットで出てきた才能というのが、もっと多分テレビとかの世界に行ってもいいし、もしかしたら文芸の世界に行ってもいいみたいな、そういうことが多分これから起きていくでしょう。そこの1つのキーになっていくのが、やっぱりソーシャルな機能ということになるんですかね。

角川: 何か見事な結論じゃないの。

(一同笑)

津田: いやいやいや、でも手応えってどうなんですか? ずっと1年ぐらい、ちょっとずつ改良されていたと思うんですけど。

角川: 去年の12月にドワンゴと業務提携して、ニコニコ動画の中にニコニコ静画(電子書籍)を作ってくれて、そこでBOOK☆WALKERの受け皿になってくれるということを業務提携で発表して。iPadが突然生まれたから電子書籍の時代に入っちゃったというのは違うんだよね。やっぱり周辺のいろいろなインフラが十分に立ち上がってこなければ、それは出来ないことなんで、それを1年かけてここまで来た。でも、ここまで来たんだけど、まだこれだけか――つまりそれは何かというと、1年の間にニーズが高まってるから。さっき川上君がこんなことじゃダメだよと(言った)、そういうところにまた来ているわけです。でも、これで本当にこういう議論が積み重なると、やっぱり電子書籍の時代って来ると思うね。

津田: 何か今もコメントを見ていると、まだ結局あと20年ぐらいはアングラじゃないの? みたいなコメントがあったんですけど、僕は全然そんなことはないと思いますね。

角川: とんでもはっぷん。

津田: ですよね(笑)。本当に3年、5年位の形で変わってくるんじゃないかなと。

角川: ただ、電子書籍が紙を圧倒して紙が無くなるって、そういう無茶なことを言う人がいるんだけど、そんなことはあり得ないんですよ。

津田: だから多分、ニコ生、ニコ動も伸びていくし影響力は上がるけれども、テレビが無くなることも(ない)。あと10年後でもテレビ局はあるでしょうと。紙の本も電子書籍もお互いの役割分担をしながら、両立はしていくということなんでしょうね、恐らく。

角川: 3年経ったら、75(%)がリアルの本で、25(%)が電子書籍だと思うんです。その25(%)の電子書籍の中でどういう状況が起こってくるかということをイマジネーションを持って、今日こういう話をするべきだと思うんですよね。

■プロとアマの境界がかつてないほど曖昧な時代

津田: 最後のテーマで1個だけ話したいことがあるんです。やっぱりこの対談の中ですごく面白いのが、角川さんと川上さんが、とにかくどんどん単位が小さくなっていくよと。組織でコンテンツを作っていくと絶対にアメリカに勝てないと川上さんは仰っていて。確かにゲームとかもそうですよね。ハリウッドみたいなCG全盛のゲームになっていったら、日本のゲームスタジオがどんどん負けていくようになって。でも昔ながらのアイデア一発のクリエイターのゲームとかっていうのは、いまだにやっぱり力があったりする。

角川: 作家性だよね。

津田: そうですよね。だから日本は、角川会長は角川グループをどんどん細分化して、ある種、個に近いような組織もそういう風に細分化するということで生き残ろうとされているし。あと川上さんのすごく面白いと思ったのが、スタジオジブリのような作品を作るには100億円が必要だけど、でも1000万円とか2000万円ぐらいを才能ある個人に与えて、どんどん面白い作品が出ていった方が、世の中面白くなるんじゃないかみたいなところというのがすごく僕は興味があって。

川上: それ、何かちょっとニュアンスが(笑)

津田: 違いますか?(笑) でもそれが出来るようになっていってというのがあった時に、今度ニコ動ってやっぱり500円の優良会員で今150万人ぐらいでしたっけ? 集めてというのは稀有なサービスだと思うんですね。コンテンツに対してお金を払うというのになって。ここから先の展開としてやっぱり気になるのは、ニコ動にはお金が集まるようになっているけれども、もうちょっとクリエイターに対して直でどんどんお金が払えるとか、製作費を事前に集めてそれによって作品が作れるみたいな、そんなプラットフォームになっていく可能性というのはどうですか。その(コンテンツの)出し先が角川だったら電子書籍、動画だったら別にニコニコでやっている。

川上: やっぱり個人の人たちが生活出来る環境はつくりたいですよね。そのためには多分2つの面があって、注目が行くのは収入の面だけだと思うんですけども、そうじゃなくてやっぱり製作環境、個人が自分1人の力でちゃんと著作権とかも考慮しつつ作品を自由に作れるような環境をどう作るのかという、両面が重要だと思うんですよね。

津田: 角川さんはいかがですか?

角川: 19世紀、20世紀に出来た著作権法ってプロの著作権法なんですよ。プロの人を守ってあげようという。

津田: そうですね。

角川: プロを守ってあげなきゃいけないのは確か。だけど今、生まれてるのはCGMの著作権者じゃないですか。だからプロの著作権者を守るのと、CGMの著作権者を守るのと、どういう風に整合性を持っていくかということを、きちっと話し合ったことってまだ1回もないんです、こういう公の場で。

津田: そうですね。プロとアマという境界がこんなにかつてほど曖昧になっている時代というのもないですよね。

角川: そういうこと。

津田: 僕自身も最近、有料のメルマガとかを始めたんですけど、それを守ってくれてるのは別に著作権法じゃないですからね。要するにあくまで「まぐまぐ」とかメルマガと金を払う仕組みがあったからこそ、僕は生活出来るという意味で、今まで以上に、そういうコンテンツを提供する、個人が収入を得るためのプラットフォームというのが重要になってくるんだと思います。

■角川会長「Amazonとは1年間ハードに交渉している」

 ではここでトークセッションなんですけれども、質疑応答に移りまして、会場の記者の皆さんからご質問を受けたいと思います。どなたか角川さん、川上さんにご質問がある方は挙手を頂けますか? 誰かありませんか? これで手が挙がらないと、ニコニコのコメントでみんな「シーン」と言っていじられますよ(笑)。「何しに来てるんだ、記者は」とか言って。挙がりましたね。

質問者(ライブドア): 先ほどKindle Fireが端末として非常に優れているというお話がお二人の中で出ましたけども、ただAmazonの方ではKindleの契約を国内(日本)の出版社とするに当たって、かなり強硬な条件を各社に突き付けていて、各社は尻込みしているみたいな形で、正式契約に至ってると発表しているところはまだ無い状態と聞いております。それで今後、Amazonは黒船とも言われますけれども、対抗して独自のプラットフォームを作るのか、それともAmazonともうまく協力して新たな時代を作るのかというところを、お二人がどのように考えてるかということをお聞き出来ればと思いました。

津田: 彼(質問者の安藤健二氏)は、話題になってるライブドアの「Amazonはこんなに酷い」(※「こんなの論外だ!」アマゾンの契約書に激怒する出版社員 国内130社に電子書籍化を迫る)という記事を書いた張本人ですよ。

川上: そうですか(笑)。

津田: 実は僕の大学のサークルの後輩なんですけど。では角川さんから。

角川: Amazonも商売だから、いろいろな条件を出してるんだと思うんですよ。ですから、画一的に出版社に強硬な条件を突き付けて、飲めない条件を言ってるなんていうことはあり得ないわけです。また実際にAmazonは、日本の出版社各社の本をあれだけ売っているわけですから、信頼する土壌が既に出来ているんですよね。だから、あまり新聞の記事だとか、そういう偏った情報で判断しない方がいいと思いますね。

 例えば、価格を押し付けてると言われてるけど、実際にまだ著作権法をやっている文化庁も、あるいは独占禁止法の当局も、電子書籍で出版社の価格決定権はありますよと誰も言ってくれてないわけです。だから、Amazonが「価格決定は私たちにやらせて下さい」と言えば、今の法律で言えばそれは仕方がないことですよね。だから、ドイツや何かもそうなっているという話だから、今、出版社が一生懸命そういうところに電子書籍も価格決定権が欲しいと言って、そしてそれが認められれば、それはそれでいいのであって、それまでの間はAmazonは「価格決定権は私たちが持ちたい」と言っていいんじゃないかと思うんです。それに対して、嫌だとか、こうしてほしいとか、ああしてほしいとか、いろいろな条件を話し合えばいいのであって、それ以外にあり得ないということを言ってるわけじゃないんですよね。

質問者(ライブドア): いろいろと話し合っていく余地があるということですか?

角川: もちろんです。

津田: これは角川会長のすごく大人なご回答だったと思うんですけど、では今Amazonと交渉のテーブルに着いてるかどうかというのはどうでしょうか。

角川: 僕はかなり着いていると思う。これは客観的に見て、AmazonがKindle Fireというのを年内に出すのか、出さないのかというのは、今一番の関心だけども、その時に出版社との話し合いが果たされていないで、Kindle Fireを出すはずはないよね。

津田: では今、膝詰めで交渉をやり合っている段階であるということですかね。

角川: そうです。

津田: ちなみに、角川グループは交渉しているというのは聞いても大丈夫ですか?

角川: 僕は1年間交渉している。ハードな交渉をずっとやっていますよ。だから、その時に僕はやっぱり当事者として現場の諸君に「今、どうなってるの?」と聞いて、「これを頑張らなきゃいけないね」とか、「これは譲っていいね」とか・・・今11条件くらいに煮詰まってきていますよ。11条件くらいに煮詰まってきたということは、やっぱりかなりいいところまで来ていると。ただ、この11条件というのが、やっぱり厳しいというか、やっぱり出版社としてこれは飲み込めないなというのも入ってます、正直言って。全部向こうの言いなりになることは出来ない。そういう風な中で話し合っていると、やはり何か解決の糸口が見えてくるんですよ。

津田: これは記事として大きい・・・日経新聞とかでも結構大きく載るんじゃないかという回答が今あった気がしますけど(笑)。

角川: いや、そんなことは無いですよ。

津田: そうですか。

角川: まだ契約してないんだからね。

津田: 川上さんはAmazonのことについていかがですか。

川上: 僕が思っているのは、プラットフォーマーって強いんですよ。ビジネスは短期的利益と長期的利益があって、会社の経理とかを見ている人というのは短期的利益とかを見ていますね、MBA(経営管理学修士)の人たちって。大体、その力関係で見たらプラットフォーマーとコンテンツホルダーだと、プラットフォーマーがどうしても強くなっちゃう。それで、これが携帯の世界で言いますとすごく分かりやすいのが、着メロって、日本でもちろんiモードが流行ったんですけども、iモードのモデルが全世界に普及した時に、日本のドコモは10%の手数料だったんですけど、海外のところはみんな50%位、下手すると70%位取った。それはなぜかといったら、そちらの方が力関係から言うと正しい収入配分だったからです。正しい収入配分をしたらどうなったか? 結果的に、携帯コンテンツ文化というのが花開いたのは日本だけなんですよ。

津田: そうですね。

川上: 結局は。だから、実際に力が強いからといって、そういうような配分をすることによって、そのコンテンツのマーケット自体が崩れる環境になり得るというのが、僕はすごい危惧している。

津田: あそこでdocomoが頑張っていなかったら、今、ドワンゴがこういう風に会見をやっていないですからね。

川上: ならなかったですよね。そんなに胸張れるような立派な企業ばかりじゃないんですけど、うちも含めて。とはいえ、世界的に残ったのは日本の業界だけなんです。でも夏野さん(夏野剛氏、iモードの生みの親)は「後悔している」とか言っていたので、「えーっ」とか思ったんですけど。

津田: 決済手数料はドコモとかauは大体10%とか12%とかですからね。

川上: そうそう。

津田: ですけどアップルは30%持っていくし、Kindleに至っては全部やるといったら55%持っていくみたいな話ですからね。

川上: そんな、いろいろな話が出るじゃないですか。だから僕はそこは、もっと長期的視点で考えるようにプラットフォーマーがなるかどうかというのは分からないですけども。プラットフォーマーとコンテンツホルダーの力関係で、普通の関係よりもコンテンツホルダーが強くならないと、かえってマーケットが縮小すると思っています。

津田: なるほど。もう1人くらい誰か会場の記者から質問があれば。大丈夫ですか? さっきのが衝撃過ぎてもういらないですか。どうぞ、短めにお願いしたいと思います。

質問者(ライブドア): ある中堅出版社からは、Amazonが提示した条件というのはアップルの30%以上の55%という話も出たというような契約書を見せて頂いたりしたんですけれども、実際55%というような条件の提示もあったのか、また55%というのは出版界にとっては非常に厳しい条件なのかどうか、角川会長のご意見を聞けたらと思います。

角川: 僕の認識では、電子書籍化をすることを含めて、すべてAmazonに依頼すると55(%)ということじゃないかと思うんですよ。それはやっぱり出版社は自分の自己責任で電子書籍化をしなきゃいけないと思うんです。デジタルコンテンツを。

津田: あれは僕も聞いてる範囲だと、全部Amazon側に任せた場合はAmazon側の取り分があって、Amazonで既に配信出来る形まで自分たちでオーサリングしてやる場合は当然低くなるみたいな、そういう割と柔軟性がある契約になっているという。

質問者(ライブドア): 私もそう聞いています。

角川: そういうことなんだと思う。

津田: でも「私もそう聞いてる」というわりには「55%も取る」という煽り記事を書いてましたね(笑)。ネットというのはどうしても煽り記事が増えていってしまうところがあるんですが。

■愛のある二次創作を進めていくには?

 ユーザーの方からもメールを事前に募集しておりまして、事前に来ています。23歳の紳士熟女さんという方からの質問です。電子漫画について角川歴彦氏に質問です。漫画を電子書籍にするにあたって、電子書籍は目当ての既存漫画へ直接飛ぶことが出来るなどの理由から、電子漫画の方は今よりも余計に新人が育ちにくいんじゃないかという問題がある。もっと言うと、育つ前に電子化されるとアクセスが全部ランキングで見えてしまうので、不人気の烙印を押されて消えてしまうことがあるんじゃないかと。そういった場合、例えば電子書籍化に当たって、電子サイドの方が新人育成や同人畑みたいなものを、pixivとか、そういういろいろなサイトがありますけれど、ニコニコ静画もちろんあるでしょうし、そういった他の外部のサイトに丸投げしてしまって、即戦力の漫画家のみを採用していくことになるんでしょうか。だから電子漫画が進んでいくと、それは新人育成とかは電子ではされなくて、全部ネットに丸投げするようになるのか、そういう傾向を加速させるのかという質問だと思うんですけど。

角川: もし、そういう風に出版社が行動すればAmazonが創作者と直接契約するようになっちゃうんじゃないの? やっぱり出版社はきちっとそういう人たちを育成して、位置付けてあげることが出版社なのであって。

津田: 川上さんはいかがですか。

川上: 僕はコンテンツ業界じゃないんですけども、コンテンツ業界の方といろいろ話をしていて、最近つくづく痛感するのは、やっぱり世の中に見えている人というのはクリエイターなんだけども、実質的に作品を作っているのはクリエイターと同等、ひょっとしたらそれ以上に、やっぱり編集だったりプロデューサーサイドが果たしている役割って大きいんですよね。それが自分で出来る人、セルフプロデュース出来る人というのは、それこそ出版社もいらない、Amazonと直接契約すればいいと思うんですけども。現実的にそういう人は少なくなるというのが最終的な姿だと思いますよね。そういう人たちの中だけの世界だとやっぱり大きくならないですよ。

津田: なるほど。もう1問だけ質問を読ませて下さい。角川さんに質問です。以前メディアで、「愛のある二次創作であれば認める」という発言を拝見したんですが、今後、より良い形で愛のある二次創作、リスペクトのある二次創作を進めていくには、どのような取り組みが必要になっていくとお考えですか?

角川: YoutubeのMADをみんなで検討してランキングというか等級を付けて、これを認めてあげようという風なことに挑戦してみたんですが、結構大変なんですよね。せっかくテクノロジーの進化する時代に、人手を掛けてやるみたいなことになっちゃうので。それはなかなか難しいと思ったんだけども、それを例えばさっきのこういうソーシャル性みたいなところで、みんながこれはいいじゃないかという風なことを言うことによって認めてあげるという環境、技術的にこっちの方に来るんじゃないかなと。出版社が判断するのではなくて、一緒に見た人が「このMADは愛情があるじゃないか」と言えば、それを認めてあげるという風なことならば、これはニコニコ静画で出来るんじゃないかなと思います。

津田: はい。川上さんも一言。

川上: そうですね、愛があるかはもうユーザーが決める位でいいような気がする(笑)。

津田: 確かにね。

川上: 多分、本当のファンというのは愛がない作品は怒ると思うんですよ。普通にユーザーに言われなくても。

津田: ユーザー同士がそれで喧嘩を始めたりすることによって、自律的になっていくというのもあるし。

川上: そうなっていけばいいんじゃないかなと思いますけどね。

津田: なるほど。そろそろ時間も迫ってきたので、本日対談をされて、この2社が協業されるということは本当に必然だったのかなという気もするんですけれども。最後に電子書籍やソーシャルリーディングの未来に向けて、両会長に一言ずつお言葉を頂きたいと思います。まず川上さんの方からお願い出来ますか。

川上: これは全然始まりにしか過ぎないと思いますので、今日の発表で結論は当然出せないとは思うんですけども、スタートとしては予想以上にいろいろと面白い一石を投じられたんじゃないかなと思っています。

津田: 角川さんお願いします。

角川: 僕は、やっぱり電子書籍ってどれだけユーザーにリーチ出来るかが大きな問題だと思うんですね。今までは、わりとハードを出すメーカーがきちっと100万台、1000万台と売ってくれたんだけど、今はそれがなかなか難しくなっているので、やっぱりこういうニコニコ動画みたいなところが、きちっとユーザーにリーチ出来る手法を考えてくれるならば、そういうソーシャルメディアと電子書籍というのは非常に相性がいいんじゃないかと思う。

 ただ、ソーシャル性って結構シェアという考え方ですよね。だから共有、シェアという考え方が、これから著作者の了解をどうやって得ていくかというのは、まだまだハードルはいろいろあるんだろう。でも、そのハードルはやっぱり解決していく努力をしていかなきゃいけないと思います。

津田: どうもありがとうございました。インターネットというサービスという枠ではなくて、今度は電子書籍、「書籍」という新しい戦場が生まれているわけですが、そこで今後の2社がどういった面白いことを仕掛けていくのか、すごい楽しみですね。この後お二人のフォトセッションとかがあって、多分握手している写真とかを撮られると思うんですけれども。もしかしたらこの2社が、3年後とか5年後に、GoogleとAmazonとかアップルとかみたいに、昔は仲良くしてたけど、その後、お互い血で血を洗う抗争を始めるみたいなことになるかもしれないわけです。そういったところの展開も含めて楽しみだなと個人的には思います。

角川: あれ? 結構、冷静だな(笑)。

津田: そうですか。すごい楽しいなと思います。本日はご参加頂き、お二人ともありがとうございました。また、最後までご覧頂いたユーザーの皆さんもありがとうございました。両社の会長対談は以上となります。さっき、川上会長から「これは始まりに過ぎない」という発言もありましたけれども、またこの2社で新しいサービスの発表会見なんかもあるんじゃないかなと思います。その時の会見で、またお会いしたいと思います。それではどうもありがとうございました。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]全文書き起こし部分から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv69352807?po=news&ref=news#35:50
・ニコニコ静画(電子書籍)
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(協力・書き起こし.com

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