「刑法犯」が戦後3番目に少ない121万件、 日本の「治安」は良くなったのか?
弁護士ドットコム

2014年に全国の警察が認知した刑法犯の件数が、警察庁のまとめで戦後3番目に少ない121万2240件(速報値)だったことが報じられた。前年比7.8%減で、12年連続で減少している。

認知件数は、1996年から2002年までは連続して戦後最多を更新していた。しかし、2003年から減少に転じ、以来12年連続で減っている。ピークだった2002年は369万3928件。それと比べると、2014年は約3分の1になった計算だ。

殺人などの凶悪犯罪のニュースは毎日のように見かけるが、この数値から「治安が良くなった」と言うことはできるのだろうか。元警察官僚・警視庁刑事という経歴をもち、刑事政策にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。

●大幅に減っているのは法定刑の軽い「窃盗犯」

「これらの数値から、ただちに『治安が良くなった』と一概にいえないと思います」

澤井弁護士はこのように述べる。数値上は犯罪が減っているが、なぜ、そう考えるのだろうか。

「2013年と比較して減少した件数(10万1900件)の8割以上を占めているのは窃盗犯です。

窃盗犯には大きく分けて

(1)空き巣や金庫破りなどの『侵入盗』

(2)自転車やバイクなどを盗む『乗り物盗』

(3)ひったくり、すり、万引きなどの『非侵入盗』

があります。

たしかに、これらの窃盗犯は、ほぼすべての類型において認知件数が減少してます」

それでは、やはり犯罪は減って、治安がよくなっていると言えるのではないか。

「窃盗犯は、刑法犯の中では相対的に法定刑も軽く、詐欺などと比べると被害金額も少ないです。どちらかというと軽微な犯罪といえるでしょう。

これに対して、暴行や傷害などの粗暴犯、強姦・強制わいせつの件数は、ほぼ横ばい状態です。振り込め詐欺などの知能犯事件は、8%以上も増加しています。殺人事件や放火事件も微増しています。

法定刑の高い生命・身体に対する犯罪類型は微増か横ばい状態で、減少はしていません。また、窃盗よりも被害金額が高く、悪質な詐欺類型はかえって大幅に増加している状態です」

つまり、全体として見ると、治安が良くなったわけではないということか。

「全体的に見れば、犯罪認知件数自体は減少しているものの、実際に減少しているのは、被害金額も少なく法定刑の軽い窃盗類型にすぎません。

それ以外の法定刑の重たい犯罪類型は、ほぼ横ばい状態です。被害金額の大きい詐欺や殺人にいたっては、かえって増加となっています。

ですので、今回の統計データからただちに治安が良くなったと一概にはいえないでしょう」

澤井弁護士はこのように分析していた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所で非常勤裁判官も兼任するなど幅広い分野で活躍。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:弁護士法人海星事務所東京事務所
事務所URL:http://kaisei.tokyo/

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