アニメ番組には、制作サイドの大人の都合で本編から脱線したオリジナルストーリーが放送されることがよくあります。

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設定を丸っと無視したぶっ飛びストーリーや、ツッコミ待ちとしか思えないほどの作画崩壊には、子供心に違和感を覚えたものです。

そこで今回は、歴代名作アニメの脱線エピソード&作画崩壊回を振り返ってみたいと思います。

庵野秀明不在の産物……!『ふしぎの海のナディア』南の島編

1990年から1年間にわたってNHKで放送された『ふしぎの海のナディア』。SF小説の『海底二万里』と『神秘の島』を原案に制作されたこちらの作品は、『新世紀エヴァンゲリオン』でおなじみの庵野秀明氏が総監督を務めたことでも知られる名作アニメです。

勝気で正義感の強い美少女・ナディアと、発明好きで純朴な少年・ジャンの冒険を描く本作は、往年のSFアニメを想起させる本格的なメカニックデザインと、庵野氏の十八番である繊細な人物描写で多くのアニメファンを虜にしました。

……しかし、そんな視聴者を漏れなくワナワナさせたのが、いわゆる「南の島編」と呼ばれる中盤のエピソード。

万能潜水艦ノーチラス号から脱出し、無人島に流れ着いたナディア達のサバイバル生活を描くこのお話……もう作画崩壊と脱線エピソードのオンパレードなんです(笑)。

ベジタリアンであるナディアが無人島の食事にかんしゃくを起こしたかと思えば、食料調達に行ったジャンが幻覚作用のあるキノコを食べて精神崩壊するドタバタ展開。それまでの作風から180度転換したスラップスティックコメディー調のやり取りは衝撃の連続でした。

実はこの「南の島編」を制作していたころ、庵野監督は過密な制作スケジュールに力尽きて現場から一時的に離脱していたのだとか。

そこで代打を引き受けたのが樋口真嗣監督。庵野氏は樋口氏に仕事を持ちかける際に「気楽なアニメをやってみないか?」と話したそうです。

その結果、(作画を海外の制作会社に外注したこともあり)まったく別作品のように変わり果てたナディアが生まれてしまったわけです。

そんな『ふしぎの海のナディア』も「南の島編」以降の放送では庵野監督が戦線に復帰。見事な大団円で、その評価を不動のものとしました(本当によかった……)。

ヤムチャが野球? ドラゴンボールZの脱線エピソードとは?

ヤムチャには野球の才能があったらしい……!『ドラゴンボールZ』の脱線っぷりは秀逸です

週刊少年ジャンプの人気作品の中には、原作の連載とアニメの放送が同時進行で進むものが数多くあります。当然ながらアニメは原作よりも進展が早いため、連載に追いつきそうになってしまうことも日常茶飯事。そんなときには、アニメ版だけのオリジナルストーリーを放送することで時間を稼ぐわけです。

その最たる例が『ドラゴンボールZ』。

悟空とピッコロがチチに促されて自動車教習所へ通うエピソード(第125話)や、ヤムチャが野球選手のアルバイトを始めるエピソード(第10話)など、例を挙げ始めるとキリがありません。筆者はリアルタイムで放送を見ていましたが、ヤムチャが狼牙風風拳(ろうがふうふうけん)の構えで三打席連続ホームランを打ったときには流石に「これは違くね……?」と違和感を感じたものです(笑)。

しかし、『ドラゴンボールZ』で描かれたオリジナルストーリーの中には名エピソードと語り継がれているものも少なくありません。

悟空の父であるバーダックとフリーザの戦いを描いたテレビスペシャル『ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦~フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父~』は、原作のスピンオフ作品としてファンの間でも高く評価されていますし、当初アニメだけのオリジナルキャラクターだったバーダックは、後に原作にも登場しています。

このようにアニメオリジナルキャラクターが原作に逆輸入されるのは珍しいケースですが、ファンからすればたまらないサプライズですよね。

大ヒットで急遽放送を延長!『美少女戦士セーラームーンR』の魔界樹編

1992年から5年間にわたって放送されたアニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズ。少女達から絶大な支持を集めたこちらの作品にも、アニメ版だけのオリジナルストーリーは数多くありました。

特に有名なお話と言えば、第2期の『美少女戦士セーラームーンR』で描かれた「魔界樹編」でしょう。オリジナルキャラクターのエイルとアンを軸に、魔界樹とセーラームーン戦士達との戦いを描いた名エピソードでしたね。

実はこの「魔界樹編」は、急遽放送が決定した第2期用に作られた突貫制作のストーリーだったのだとか。当時は原作のストックがなかったために完全オリジナルストーリーで展開するしかなかったのです。魔界樹編からセーラームーンデビューをしたというファンの方も多いかと思いますが、これは意外な裏話ですよね。

作画崩壊!? ガンダムの異色のエピソード

作画崩壊なガンダムの名エピソード(1)「時間よ、とまれ」

もはや説明不要の名作アニメ『機動戦士ガンダム』。ファーストガンダムのテレビシリーズに2話だけ、異彩を放つストーリーと、首をかしげる映像が満載の回があります。ファーストガンダムファンにはおなじみの、14話「時間よ、とまれ」と15話「ククルス・ドアンの島」です。 

地球に降りたホワイトベースの目の前でガルマが散って、イセリナが後を追い、アムロが白目むいてランバ・ラルがザクとは違うことを証明し、シャアが「坊やだからさ」とつぶやいて、アムロが母さんに会ったあとの第14話で、それまでスムーズに進んできたストーリーが急に脇道に逸れます。

「時間よ、とまれ」は、ジオン軍のクワラン曹長率いる若手の兵士たちがガンダムをおびき出し、ワッパという搭乗者むき出しの軽量戦闘機でゲリラ戦を挑む話です。地球は、ジオンにとっては言わば最前線。ガンダムを仕留めて手柄を挙げ、宇宙にあるジオン本国、サイド3に帰りたかったのです。

作戦は、ガンダムに爆弾を貼り付けて機銃で狙い撃ち、爆破するというシンプルなもの。ちっこい爆弾なんかでザクマシンガンの直撃を受けても傷つかないガンダムが壊れるのかと思いきや、シールドに付いた爆弾が爆発すると、何とあのバズーカの弾丸すら受け止めるガンダムシールドが粉々に砕けます。

超硬合金ルナチタニウムが粉々になるという、とんでもない破壊力です。

結果的に、アムロが実は時限爆弾だった爆弾を手作業で撤去、事なきを得るという話でした。撤去した爆弾が離れたところで爆発するのですが、完全に核爆発級のキノコ雲が上がっています。この爆弾が一番スゴイです。

インパクトのある作画崩壊も随所にあり、爆弾を外すために座ったガンダムの全高が、本来は18メートルのはずなのに100メートルくらいあったり、足の先が尖っていたりと、よく話題になっています。

ただし、アムロあこがれの女性仕官「マチルダさんの見下ろしポーズ」という、ガンダム界では殿堂入りのシーンも描かれています。「寝るのもパイロットの仕事のうち」なアレです。

当時の子どもたちは何のために作られた話だったのか全然わかりませんでしたが、1話完結のわかりやすいストーリーや憎めないジオン軍兵士たちのキャラとも相まって、今になって高く評価するガンダムファンも多い回です。

作画崩壊なガンダムの名エピソード(2)「ククルス・ドアンの島」

もうひとつの「ククルス・ドアンの島」は、元ジオン軍のパイロットだったククルス・ドアンが、子どもたちを守りながら生きている島でのエピソード。

戦闘中に子どもたちの親を殺してしまったドアンが、自分の罪を償うため子どもたちを連れて逃げたのですが、島を防衛するためにザクを持っていることもあって、それ以降、ジオン軍の追っ手がたびたびやってきていたのです。

ドアンにつかまった連邦軍兵士を助けるために、コア・ファイターでその島にやってきたアムロですが、ドアンが操縦する素手のザクにやられてしまい、島の娘に看病されつつ心優しいドアンの素性を知っていきます。

その後、やってきた追っ手のザクをガンダムでやっつけていいところ見せようとしたアムロですが、逆にドアンのモビルスーツによる見事な格闘戦を見せつけられて終わりました。活躍の場なし。

するとアムロは、ドアンに向かって「あなたの体に染みついている戦いのにおいが原因だ」などと意味不明なことを口走り、あろう事かこれまで子どもたちを守ってきたドアンのザクを、ガンダムで海に投げ飛ばして沈めてしまいます。

それを見て怒る子どもたちにドアンは「あのお兄ちゃんのやったことはとてもいいことなんだよ」となだめていますが、「これ、この先またザクが来たらどうしようもないのでは?」という視聴者の疑問は、今になっても解消されないままです。

この異色のエピソードですが、各シーンの構図はカッコいいのに作画崩壊がひどいです。

モビルスーツの格闘戦が多いこともあって、ねじれる関節、やせたり太ったりするザク、伸び縮みするモビルスーツの腕、偵察機ルッグンにぶら下がるザクなど、絵的にも設定的にも崩壊レベルは相当高いです。にもかかわらず、今でも名作として評価が高い話になっています。

ちなみに当時の子供たちは、何のための話だったのだろうと不思議に思いながらも、劇場版ではスッパリとカットされたことに何となく納得したものでした。

……さて、若干アツく語り過ぎた感はありましたが、いかがだったでしょうか?

子供のころに見ていたアニメを見返してみると、当時は気付けなかったツッコミどころや伏線が見えてくるものです。

もしかすると、子供心に違和感を覚えたあのエピソードにも知られざる裏事情が隠されているかもしれません。

みなさんも、制作背景に思いを巡らせながら懐かしのアニメを鑑賞してみてはいかがでしょうか。