ファミコンにおけるRPGのパーティが4人のワケ
新刊JPニュース

 フランス・ノルマンディー地方の都市、バイユーには高さ約50cm 長さ約70mの歴史的遺物が存在する。
 ノルマンディー公兼イングランド王ウィリアム1世によるイングランド征服の物語をつづった刺繍作品がそれだ。
 リネン製の布に草木染めによる毛糸で刺繍が施されたその作品は、少ない色数で巧みな配色がなされており、センスと技術が融合した歴史的価値・美術的価値の高いフランスの国宝である。

 限られた材料の中で それらを最大限に生かし表現する――この条件のもと、センスと技術が形になったものが時を経ても人々に受け入れられている事がひとつの芸術として考える事が出来るのであれば、1983年に誕生した、任天堂の家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」(以下、ファミコン)もその「芸術的」作品の1つであるとはいえないだろうか。

 『ファミコンの驚くべき発想力―限界を突破する技術に学べ―』(松浦健一郎、司ゆき/著、技術評論社/刊)は、ファミコンのハードウェアの特性と、プログラム技術を紹介した一冊だ。そして、タイトルにも挙げたRPGにおけるパーティの最大人数が4人である理由とは、ファミコンの持つハードウェア上の制約によるものであった。

 8ビット。これは、ファミコンのCPUの容量を表す数字であるが、かつて日本中を席巻し現在のゲームの礎を築いたテレビゲーム機は、現代の携帯電話で撮影した写真1枚の容量よりも遥かに低い数値の能力においてグラッフィック、サウンド、メモリのすべてを担っていた。
 当然ながら、この制約はソフトウェアの作成にも大きく関与してくる。
 当時のソフトが制約ギリギリに挑戦し、いかに工夫をし、最大限の表現を盛り込んだ商品として作成されていたか。それらの例えもまた興味深い。

 例えば、有名なソフトである「ドラゴンクエスト」(以下、ドラクエ)は、使用できるカタカナの文字数は20文字との制限を持って作成されている。これは、文字を限定する事で使用する絵柄パターンを節約し、テキストの容量を圧縮することができるためだという。物語を進行させる形のRPGではテキストを大量に使用する為、このような工夫を持って容量の軽減化を図っているのだ。
 つまり、ドラクエをプレイしている人にはなじみの深い「ホイミ」や「ルーラ」などの魔法の呪文は、工夫された結果の20文字から成り立っているのだ。

 現在のゲームはグラフィックスもサウンドも格段に進歩し、エンターテイメント性や美しさという観点で見るならば、こちらの方が「芸術的」という表現が当てはまるであろう。
 だが、「芸術」の定義の範囲をほんの少しだけ広げてみて、違った角度から見る事で「芸術」を身近なものとして気軽に楽しめるのではないだろうか。
(ライター/胡桃沢梅子)

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