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 本は誰のものか――。作家の東野圭吾さんらが2011年12月20日、書籍をスキャンして電子ファイルを作成するスキャン業者に対して行為差し止めを求める訴えを提起したことを受けて、漫画家の佐藤秀峰さんは12月22日、自身のブログで「本は購入した方の所有物だから、破こうと捨てようと作家は口出しできる立場にはない」と主張した。一方、この佐藤さんの発言に対して、作家の岩崎夏海さんが反論し、ネット上で話題になっている。

 書籍をスキャンして電子ファイルを作成する"自炊"と呼ばれる行為がある。この"自炊"を代行するスキャン業者のうち2社に対して、作家の東野さんや『島耕作』シリーズで知られる漫画家・弘兼憲史さんらが、今月20日に行為差し止めを求める訴えを東京地方裁判所に提起した。

 この作家たちの"スキャン代行の差し止めを求める訴え"を受けて、「ブラックジャックによろしく」などで知られる漫画家の佐藤さんは22日、自身のブログで「読者にも『本を裁断する』という行為には抵抗感がある方は多いでしょうし、作家ともなれば、著作本を大事に持っていて欲しいという気持ちは自然な物だと思います」「『自炊』という行為は、悪として語られることもよくあります。僕も目の前で著作本をビリビリに破かれたら悲しい気持ちになるだろうし、自炊を悪としたい気持ちも分からなくはありません」としながらも、

「本は購入した方の所有物ですから、破こうと捨てようと作家は口出しできる立場にはありません」

と主張。さらに、佐藤さんは

「自炊は本をデータに置き換えて、個人の範囲内で使用する物ですから、作家活動には何ら影響を与えません」

などと持論を展開している。

 この佐藤さんの意見に対し、小説「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の作者・岩崎さんは12月25日、自身のブログで次のように異論を唱えている。

「本は、購入した人の所有物ではありません。そもそも、太陽とか土とか水でできた紙を使ってできた本を、数百円払ったくらいで『所有』しているという考え方がおこがましい。当たり前ですが、本でも何でも、一個人の完全な所有物となるものなんて、この世にはありません」
「当たり前ですが、それを破いたり捨てたりしたら、作家のみならず、誰でも、この世界そのものの一員として(一部として)、それを咎(とが)め立てすることができます。と言うより、咎め立てするべきです。それは、権利と言うよりは、この世界そのものの一員としての責任です。ぼくは、誰が持っている本であっても、その持ち方や使い方を誤っている人がいれば、行って『誤っている』と勇気を持って指摘してきたいと考えています」

 この岩崎さんの意見を受けて、佐藤さんは26日、再反論を試みている。佐藤さんは自身のTwitterで「宗教的価値観、共産主義的価値観では、万物は『世界そのもの所有物』という言い方もできなくもないけど、僕は資本主義社会、法治国家に暮らしている。読み方も自由だと思う。座って読んでもいいし、寝転がってもデータ化してもいい」と述べている。

◇関連サイト
・「自炊代行について。」佐藤秀峰・日記 - 漫画 on Web
http://mangaonweb.com/creatorDiarypage.do?cn=1&dn=32817
・「佐藤秀峰さんの本やマンガへの考え方について」 - ハックルベリーに会いに行く(岩崎夏海さんのブログ)
http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20111225/1324797973

(山下真史)

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