■「最善手を求めることが使命。人かコンピュータかは関係ない」
朝日新聞・ムラセ記者(以下、ムラセ記者): この開催が決まったときにもおそらく話があったかと思うのですが、改めて今回決着がついた時点でコンピュータがこれだけ強くなったことについて、どのように感想を持たれていますでしょうか。また、コンピュータ将棋の今後などについても教えていただけますか。
米長: 6二玉はいい手ですからね。朝日新聞社にも申し上げておきます。
CSA(コンピュータ将棋協会)と日本将棋連盟とはずっと長い付き合いで、毎年5月の(コンピュータ将棋の)世界選手権のときに日本将棋連盟はささやかではあるのですけれども、お金と人を出しているわけです。38年間、社団法人としてささやかではあるのですけれどもずっと応援していて、今度の5月にも応援するのです。
ですから、我々のほうは、コンピュータソフトがプロを負かすのか負かさないのか、そういうことではなくて、どこまで強いのか、最善手を求めていくことが我々にとって一番大事なことですので、それが人間であるかコンピュータであるのかということは全く関係ありません。
しかし、親子みたいな関係で赤ん坊を抱いているうちはよかったのですが、だんだん親に反抗するようになってきてですね。もう息子のほうが強い、娘はうちを飛び出すとか、そういうふうな事態になったわけです。
この後はどうなるかというと、今日は一番負けましたけれども、だからプロが弱いということではないのです。この後はコンピュータはコンピュータとしてさらなる進化をしていって、人間は人間として、やはり脳みそを使って、脳に汗をかくほど一生懸命将棋を指す姿が多くのファンに感動を与えて。駅伝・マラソンと車の会社のような関係で、駅伝・マラソンは車が横をさっと抜けるのだと思うのですが、(車は)ノロノロ走っている。それは、ランナーの汗というものに感動するから。
そこはできれば皆さんがどのようなときにも、プロ棋士を尊敬し、またプロの将棋は素晴らしい、面白いと思っていただけるようにお願いをしたいです。読売新聞社の竜王戦、朝日新聞社・毎日新聞社の名人戦、引き続きどのような事態になりましても、ずっとやっていくということをよろしくお願いしたいですね。
ムラセ記者: 今日の対局にのぞむにあたって、いろいろ研究を積まれたかと思うのですが、対ボンクラーズ、ボンクラーズを負かすという技術の研究と、会長自身が現役当時の力を取り戻すための研究・鍛錬というところで、分けられると思います。会長自身、現役当時の力とどれくらいまで戻って、今日の対局にのぞまれたと思いますか。
米長: 正直言ってボンクラーズの研究は1日6時間、延べ300時間くらいになるのですかね。(正確に)わかりませんが相当な時間を費やしましたけれども、プロと指す場合には全く役に立ちません。これはボンクラーズに勝つための研究をしたのであって、プロとやって現役に復帰するであるとか、自分の将棋をさらに高められたということとは全く関係の無い話でして。そこは人間相手の研究をする人間と、勝つということだけをやってくるコンピュータとは多分違うのだろうと思う。
私は全盛時代よりは弱くなっているとは思うのですけれども、この後は私が答えるより、(記者会見に同席している)渡辺明(竜王)と谷川浩司(九段)に「率直な本音を言ってください」と聞いたほうがいいですね。
(会場から笑い)
渡辺明・竜王: すいません。率直に言いまして、私米長先生の全盛期の強さがわからないので、ちょっとコメントが出せません。
私がプロになって米長先生と公式戦を一度指しているのですけれども、その頃米長先生は引退の近くの頃でしたので、先生がおっしゃっていた全盛期には当たらないと思います。ちょっと全盛期との比較ということでいうと、私はわからないというのが正直なところです。
谷川浩司・九段: 私は米長先生とタイトル戦を何度も戦っておりますので、永世棋聖の全盛期をよくわかっております。
渡辺さんのように逃げることができないのですけれども、やはりちょっと勝負勘というところで、(米長)会長もおっしゃっていましたが、序盤・中盤は押さえ込みをはかって、でもやはり押さえ込みだけではなかなか勝ち切れないので、どこかで斬り合いにいかなければいけなかった。それは先程、会長も手順を記されましたけれども、そのあたりが現役を退かれてから8年間というのは少しひびいて、このような結果になってしまったのではないかと思っています。会長に対して失礼なことを言ってしまいました。












