酸欠少女さユリ/今回の収録に合わせて、過去のMV「ちよこれいと」「ふうせん」の舞台となった渋谷のロケ地や、かつて路上ライブを行なっていた場所を巡った
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アニメ『乱歩奇譚 Game of Laplace』のエンディング・テーマ『ミカヅキ』を8月26日にリリースし、待望のメジャーデビューを果たしたシンガーソングライターの酸欠少女さユりさん。

【酸欠少女さユり インタビュー 孤独を優しく抱きしめる彼女が、渋谷で歌い続ける理由の画像・動画をすべて見る】

デビューシングルである『ミカヅキ』は、オリコンシングルデイリーチャート最高12位、iTunes総合チャート最高5位・ロックチャート最高1位、発売3週目でも1位を獲得、現在も上位にチャートインと好調なスタートを切った。さらに、10月16日(金)から25日(日)の期間中に開催される、100名以上の女子クリエイターが大集結する祭典「シブカル祭。2015」への参加も決まるなど、ますます注目が集まっている。

そんな彼女の音楽活動をクローズアップする今回は、渋谷をはじめとした、精力的な活動が目立つ路上ライブでの経験を中心に、音楽を始めた当時や、さユりさんの根底にある思い、そして、さユりさんの拠点となりつつある渋谷という街をさユりさんの目線から語ってもらうことで、彼女が歌い続ける理由を紐解いていく。

取材:よしだゆうや/文:恩田雄多

息苦しさを感じて、1人になるようになった



──8月26日に発売された『ミカヅキ』でメジャーデビューを果たしたさユりさんですが、改めて音楽を始めたきっかけを教えて下さい。

さユり 音楽活動を始めたのは14歳からです。中学生の時、学校に居場所がなくて、自分の居場所を見つけたくて始めました。

──学校に居場所がなかったのは、その頃から、さユりさんが歌っている「息苦しさ」を感じていたからなのでしょうか?

さユり 友だちはすぐにできるタイプだったんですよ。色んな人と積極的に話して、友だちというか、知り合いはたくさんいました。でも、私はそこから心を開くことができなくて。楽しい時に楽しい顔ができない

そんな状態を続けていたら、本当に楽しくなくなってきちゃって、みんな楽しそうなのに、自分だけ宙に浮いているような感じになってしまったんです。それは誰のせいでもなく、自分のせい。自分が悪い、自分に原因があると思い始めたら、だんだんと1人でいるようになって。そしたら、家で引きこもるようになりました

私は音楽で生きていく 決意の上京


──引きこもっていた時期に、ちょうど音楽活動を始めたんですね。

さユり ギターを弾くようになり、音楽を聴くようになってから、どんどん自分だけの世界に入り込むようになりました。

音楽を始めたのが先なのか、引きこもるようになったのが先なのかは自分でもよくわかってないんですが、「息苦しさ」を感じたり、今まで考えたこともないようなことを考えるようになったからこそ、音楽に熱中するようになれたと思います。

──14歳で音楽活動を始めてからは、どんなことをしてたんですか?

さユり 最初は1人でやる自信がなくて、2人でユニットを組んで、ライブハウスを中心に活動していました。私は曲をつくってギターを弾いて、もう1人がボーカルを担当してたんです。でも、だんだんと「1人で歌いたい」という気持ちが強くなってきて、ちょうどそのタイミングで活動休止の話が出てきたので、1人で弾き語りを始めました。

──中学校を卒業してからは、どうしていたんですか?

さユり 東京に行きたいという気持ちがずっとあって、ある時、急に飛び出したくなり、高校を休学して、高2の夏に上京しました。

──不安はありませんでしたか?

さユり 音楽をやることしか考えてなくて、それ以外のことは全然考えてなかったので不安はなかったですね。私は音楽だけで生きていくんだって、自然と思ってました


やめたいけど、やめられない路上ライブ



──それから上京してきて、路上ライブでの活動が徐々に注目を集め、話題になっていきますね。

さユり 一昨年の2013年に上京してからの1年間は、しばらくライブハウスを中心に活動していました。でも、今年、私が行かなくなった高校の卒業式と同じ日の3月1日に開催することになったワンマンライブの日程が迫る中で、チケットが40枚くらいしか売れなかったんです(笑)。初めてのワンマンなら、絶対にソールドアウトにしたいと思って、去年の9月から路上ライブを始めました。

最初にやったのは新宿駅の南口でしたね。その頃は、週に4〜5回くらいのペースでやっていたので、通行人が聴いてくれなかったらどうしようと、毎日のように腹痛を起こしていました(笑)。だけど、やっぱり立ち止まってくれるとうれしいので、やめたいけどやめられないみたいな感じで続けていました。

──街の雰囲気はどうでしたか?

さユり 新宿駅の南口は、仕事帰りのサラリーマンの方が多くて、道行く人みんなが急いでいるような雰囲気でした。路上自体も、殺伐とした空気感がありましたね……。

東京では、ほかに渋谷・吉祥寺を中心に路上ライブしていたんですけど、それぞれ雰囲気が違いますね。たとえば吉祥寺では、街にいる人たちがすごく幸せな空気に包まれていて、割とゆるい気持ちで歌ったほうが聴いてくれたりするんです。

一方で、渋谷は新宿・吉祥寺に比べて若い人が多かったです。最初は座って歌ってたんですけど、「歌を聴いてほしい」の一心で、立ちながら必死に歌うこともありました。今では立って歌うことも多いです。

ホームレスとの出会いをきっかけに、路上で歌っていることに気づいた


──路上ライブで特に印象的だった出来事を教えてください。

さユり ある日、渋谷でやったときに、ホームレスの方が聴いてくれたことがあって、ライブが終わった後、話しかけてくれたんです。話してると、私が出演するイベントに行きたいって言ってくれたので、会場までの地図を描いて渡しました。

そしたら、携帯も時計もなくて時間がわからないから、何時間も前から会場で待っててくれたんです。イベントスタッフさんに「怪しい人がいるけど、大丈夫ですか?」って心配されて、それがちょっと悲しかったんですけど、ライブが始まったら最前列で見てくれました。

この時に初めて気づいたんです。私は、色んな事情を抱えた人たちに向けて、歌を届けているんだ、私は路上で歌っているんだって。普段の生活では関わることがない人たちと、歌を通して関わることができるかもしれない、それが路上ライブなんだと。あの日、ホームレスの人がイベントまで私のライブを見にきてくれたことで、「私は路上で歌っている」ということを初めて実感できました。

──色んな人との出会いやコミュニケーションは、距離が近い路上ライブならではの経験ですね。

さユり 本当にそう思います。学校に行ってない時もあって、なかなか人と会う機会が少なかったので、路上ライブを通して色んな年代、職業の人と話せるのはすごく貴重だし、その思い出は大切にしたいと思っています。

その街にとって、違和感な存在であり続けたい


──その後のワンマンライブや継続的な活動などを経て、いまや路上ライブができないほど、多くの人が集まるようになりました。

さユり 当初の路上ライブの目的は、度胸をつけたり、修行としての側面も強かったのですが、続けていくことで色んな方が集まってくれることはすごく光栄だし、うれしいです。

ただ、ゼロから聴いてくれる人を増やすという意味では、そこに甘えたくないし、迷惑にならない範囲で、今後もやっていきたいと思ってます。

──さユりさんにとって、路上ライブはどのような存在でしょうか?

さユり 路上ライブは本来、違和感を感じさせるものです。街の中心部で、ギターを持って裸足で歌うって、普通に考えて異質な存在じゃないですか?

だから、人が集まるようになって、「またさユりが歌ってるね」みたいに、その光景が街に溶け込んでしまって、異質じゃなくなるのはイヤなんです。通行人やその街にとって、ずっと違和感であり続けたい。

路上ライブは、本気で挑まないといけない戦いだと思っています。だから、誰かに振り向いてもらえることはとても幸せです。私にとって、とても大切な場所です。


歌っている自分は愛せるから、歌い続けたい


──学校に行かずに、家で引きこもっていたさユりさんが、路上やステージで自分をさらけ出して歌い続けるのは、路上ライブを通して出会った人や、聴いてくれる人との出会いという経験が大きいのでしょうか?

さユり もちろんそれもありますが、正直、今でも自分のことは完全には好きになれません。それでも、友だちとか、自分の大切な人たちが、「歌っているさユりが好きだよ」って言ってくれて、好きって言ってくれると、歌ってる自分は好きになれるし、それは自分を愛せることにもなるから、歌い続けようって思えるようになったんです

私は学校に行かなくなったので、学期も学年が変わることや、卒業するということをしばらく経験してなくて、節目というものがありませんでした。

これは自分で決めたこととはいえ、どこか自分だけ取り残されているような気持ちがどこかにずっとあって。でも、路上ライブを続けて、こうして色んな人に歌っている姿を見てもらえるようになったり、メジャーデビューしたり、その曲が『乱歩奇譚 Game of Laplace』のエンディング・テーマに起用していただいたりしたことで、私にとっての大きな節目になりました。

少しづつだけど、色んな人たちとの繋がりを持てて、それが広がっていくのが嬉しいし、歌っていく理由がどんどん自分の中で強くなっていきました。

多くの孤独が生きる街・渋谷で、あえて自分をさらけ出す



──路上ライブをはじめ、「ちよこれいと」や「ふうせん」のMVなど、渋谷はさユりさんの拠点となりつつありますが、さユりさんから見て、渋谷はどんな街ですか?

さユり きれいなものやそうでないものが、混ざり合って成立している街ですね。色んな人がいるという意味では、本当に、日本で最も刺激的な大都会だと思います。

音楽に関しても同様で、街中にさまざまな音があふれているじゃないですか。ストリートミュージシャンもいるし、街頭演説もあって、音楽だけでなく、思想も飛び交っている。四六時中止まない騒がしさが魅力ですね。

──そんな騒がしい街を中心に活動するのはなぜですか?

さユり 騒がしさの中に孤独を感じるからですね

私は、孤独は部屋の中よりも街にあると思っています。私自身、人と関わるからこそ、余計に息苦しくて、孤独を感じるんです。渋谷は色んな人がいるので、それだけ多くの孤独を抱えた人が集まっているんじゃないかと。

「自分はひとりぼっちだ」と思う人がたくさんいる渋谷で、私の孤独をぶちまける。あえてさらけ出すことで、同じような感情を抱えた人たちに届けたい、歌を聴いたことで、少しでも救われたと言ってもらえたらいいなって。私にとってそれができるのが、渋谷なんだと思います。






いつかみんなでカッパを着て雨乞いフェスをやりたい


──10月には、渋谷を舞台にしたイベント「シブカル祭。2015」への参加を控えていますが、特に気になるクリエイターさんはいらっしゃいますか?

さユり 昨年も参加されていた、詩人で小説家の最果タヒさんが大好きなんです! タヒさんが書いた、雨にまつわる詩があって、その詩から伝わってくる雨の孤独感がとても好きです。

──さユりさんは雨が好きなんですか?

さユり 6月生まれなので、本能的に好きなんだと思います(笑)。雨が降ると視界も遮られるし、強くなると雨音もすごいじゃないですか。そういうカオスな雰囲気が楽しくて、雨が降るとテンションが上がります。

──実際に、雨の中での路上ライブなどもあったんですか?

さユり 何度かありますね。名古屋に行った時は台風の中でやりました。最初は屋根のあるところでスタートしたんですけど、徐々に雨に降られる位置まで出ていって(笑)。最近は始める前に雨が止むことが多くて、周りから雨上がり女子と呼ばれてます(笑)

いつかみんなでカッパを着て、雨乞いフェスをやりたいですね。降水確率が高い日を狙って、みんなで雨に打たれながら楽しむみたいな(笑)。ゲストには、雨にまつわるアーティストや逆に晴れっぽいイメージの人を呼んでみたいです。超個人的な願望ですけど……(笑)。



──願望という意味で、今後の定期番組『酸欠少女さユり 夜明けのパラレル実験室』でやってみたいことは何ですか?

さユり せっかく名前に“実験室”とあるので、本当に科学的なことをやったりしたらおもしろそうですね。まだ考えがまとまってないんですけど、見にきてくれたお客さん同士が触れ合える企画とかもやってみたいです。

酸欠少女 さユり デビューシングル 『ミカヅキ』“ノイタミナ”アニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」ED


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コアラモード出演! さユり 記事連動型定期ライブ番組を生中継!


9月16日(水)21時からは、さユりさんの定期ライブ番組『酸欠少女さユり 夜明けのパラレル実験室 supported by 2.5D × KAI-YOU』をUstreamニコニコ生放送で同時生中継。こちらには、さユりさんの新曲初披露に加え、コアラモードも出演するので、下記の番組からぜひ視聴してほしい。







※スマートフォンから視聴したい場合は、niconicoアプリをダウンロードの上、こちらからご覧ください。



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