そこにいたのは、「3人」だった。

「アベ政治を許さない」
「戦争させない」

つい1週間前、この国会議事堂前で何千、何万と掲げられていたあのプラカード。冷たい雨が降る中、それを持って立っていたのは、3人の男性だった。

議員会館前にも人っ子1人なく

2015年9月19日、安保関連法可決。それまでの数週間、国会前には連日のように多くの市民が押し寄せ、「戦争反対」「民主主義の危機」を叫んでいた。現に記者も、それを目の当たりにした1人だ。そこには、確かに「祭り」めいた熱気があった。

ところが1週間後――9月25日午後。国会周辺からは、すっかり人の影が消えていた。
たとえば、学生たちが、ハンストを繰り広げていた議員会館前。

それほど大きなニュースがないときでさえ、何かに「反対」する人がよく座り込んでいるこの歩道だが、いるのはレインコートを羽織ったお巡りさんと、修学旅行か何かで見学に来たらしい小学生の集団ばかりだ。平和である。

雨に濡れて道路に張り付く「戦争させない」

ぐるりと、国会の柵に沿って歩いていく。普段より多めに配備されているお巡りさんもやはり退屈そうで、久しぶりの不審者(=記者)にはやたらに厳しい目を注いでくる。

足元には、水分を含んでぐしゃぐしゃになった銀杏の実が、道を埋め尽くさんばかりに転がっている。うっかり踏みつぶすと、「ぶちっ」となんともいえない嫌な感触とともに、例の臭いがむんと立ち込める。季節が確実に、秋へと移っていることを感じさせる。

国会正門前に出た。可決直前にはまさにこの場所に、万単位の人々が集まり、道路を埋め尽くしたものだ。
だが、今日そこにいたのは、冒頭述べたように3人だけ。交差点の角に立ち、政権への抗議が記された垂れ幕を植え込みに掛け、静かに国会を向いて立っている。

車道に目を転じると、色あせた「戦争させない」のプラカードが地面に張り付いていた。

雨はなおも降る。

閑散とした国会議事堂前