アメリカ版任天堂サイトより。
おたぽる

 いわゆる“ファミコン世代”も40歳を越え、それ以前からPCやMSXでゲームをしていた世代は今や50代になりつつある。高齢者がビデオゲームに興じてもまったく違和感がなくなってきたが、実際にビデオゲームは特に高齢者にとって様々なメリットがあることがわかってきている。


■ゲームをプレイすることのメリットが続々と明らかに

 今や全世界で12億人といわれているビデオゲーム人口だが、今後もなお業界の成長が見込まれ、市場規模が1000億ドル(約12兆円)の大台を越えるのも時間の問題だと言われている。女性や高齢者など今まではあまりゲームをしないと考えられていたクラスターが日常的にゲームをするようになったことも市場拡大の大きな要因だ。

 一方で従来からビデオゲームには暴力表現や依存症問題などネガティブなイメージがつきまとっているが、それを埋め合わせてなお余りあるメリットがあることがいくつかの研究で明らかになっているのだ。そして先頃、ビデオゲームが心身に与える好ましい影響について「BBC」が報じている。

●運動スキルの向上

 今年8月に任天堂Wii Uのダウンロードコンテンツとしてリリースされた『Underground』は洞窟の中でロボットのアームを操作して様々なミッションをクリアするパズルゲームだが、実はこれを開発したのは外科医のヘンク・テン・ケイト・フーデマーケル医師だ。

 なぜ医師がビデオゲームの開発を手がけたのか? なんとこの『Underground』は、緻密な手作業を要求される腹腔鏡下手術のトレーニング教材として開発されたのである。

「まず第一に、2Dのディスプレイを見てアームを操作することで遠近感を把握する能力を高め、次にハンドル操作とアームの動きを一致させる感覚を鋭敏にし、また今扱っているものの手触りや質感などの想像力を豊かにできるのです」とフーデマーケル医師はBBCのドキュメンタリー番組『Horizon』の中でこのゲームでのトレーニング効果を語っている。スキル獲得のための優れたトレーニング教材として、実際にビデオゲームが活用されているのだ。

●視認能力の向上

 スイス・ジュネーヴ大学のダフネ・バヴェリア教授が日常的にゲームをプレイする者としない者の動体視力を比較・分析したところ、特にアクションゲームを日常的にプレイしている者は、してない者よりもきわだって動体視力が高いことが判明したという。

 アクションゲームは注意を払うポイントが次々とめまぐるしく移り変るため警戒を怠ることができず、その結果脳に入ってくる視覚情報をより効果的に処理できるようになると考えられているのだ。

●脳の発育

 独・ベルリンのマックス・プランク人間発達研究所のシモーネ・クーン教授が、『スーパーマリオ64DS』を2カ月間以上プレイした被験者の脳をfMRI(functional MRI)にかけて分析したところ、ゲームをプレイする前よりも脳の3カ所(前頭前皮質、右海馬、小脳)に発育が見られたという。

 ニンテンドーDSの2画面の表示を同時に見て車体の動きを把握しながら操作することで、脳の発育が促されたのではないかということだ。

●明晰さの維持

 米・カリフォルニア大学のアダム・ガザレイ教授が率いる研究チームが開発したドライビングシミュレーションゲーム『Neuroracer』は、高齢者の認知機能を向上させる目的で作られたゲームだ。

 この『Neuroracer』を累計12時間プレイした60~85歳の高齢者は作業記憶力が向上し、集中を持続できる時間が延びたということだ。またゲーム初心者の20歳の若者を負かすほどゲームの技量も向上したのだ。このことから、ビデオゲームは現実の生活に役立つ能力を育み、老化による知能低下を食い止める可能性を秘めていることが示唆されることになったという。

 また、BBCのドキュメンタリー番組『Horizon』の中で、高齢者にカートレースゲーム『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を週に15時間、5週間にわたってプレイしてもらったところ、作業記憶力と集中持続可能時間がそれぞれ30%向上したということだ。

 ゲームが脳に及ぼす好影響ついてはまだまだ研究の入り口にあるとしながらも「将来、精神科医や神経科医は処方箋を書く代わりに、このゲームを2カ月プレイしてくださいと処方するようになったら愉快ですね。これはまさに“デジタル処方薬”です」とガザレイ教授は話す。この分野の研究ははじまったばかりだが、ビデオゲームは決して“卒業”するような子どもの遊びではなく、末永く一生つきあえる娯楽であることは確かなようだ。
(文/仲田しんじ)


【参考】
・BBC
http://www.bbc.com/news/technology-34255492

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