■「"べき論"では変わらない」
宮台: そういうことができる(ジャリンコの新聞記者が、名刺一つで仕事できる)国っていうのは、実は日本以外にはまったく存在しないに近いんですよ。(アメリカでは)基本的には、地方からだんだんと中央に出てきて、最後にワシントン・ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙に行く。それは中国もまったく同じシステムですよね。(アメリカでは)政治家もそうで、村長や町長から始まって、あるいは市議会議員になったところから始まって、州知事を経て、あるいは上院議員になり下院議員になり、そして大統領になる。こういうルートがまず基本的なんですよね。実際、中央政府の議員になるとか、議長になるということは、それだけである種の実績を積んできたことの証であるし。実績を積んできたことを前提とした議論がなされる期待が人々にあるわけだけれども。
日本の場合、政治家にそういう実績による信頼醸成なるものは、実はまったくないので。単に「今まで通りやってくれりゃいいんだ」みたいな。政策的な頭・能力を、まったく期待をしないような、簡単に言えば、政治家に対して「既得権益を温存してくれりゃいいんだ」というだけの期待だけで政治をやってきているから、世襲議員も放置されてきていたし、選挙区の不平等問題もずっと放置されてきていたし、あるいはなんとかチルドレンという本当のチルドレンが議員になる愚昧な事態も完全に放置されてきているわけで。党を問わず、日本の中央の議会は、本当に人材乏しいんですよね。烏合の衆の集まりとしか言いようが無い状況で。それ自体は別に問題じゃない。彼らが悪いわけじゃなくてね。このようなシステムが、「なぜ放置されてきたか」というところに、やはり問題があるわけで。僕はよく思うんだけど、そうした議論は僕が初めて言ったわけではなく、戦後60年ずっと言ってきているわけですけれど。それを言ってきたのが一部の論壇手なわけだけど。日本は「べき論」では絶対変わらないんですよ。「何とかするべきだ」って、まだ言ってる人たちはいるし。最近では『WEDGE』(ウェッジ)っていう雑誌が大笑い状況で(笑)。
大塚: 新幹線のグリーン席においてあるやつですね(笑)。
宮台: そう(笑)。僕もグリーン車に乗ったときに、本当に爆笑させていただくので。本当に愉快な娯楽誌になったと思いますけれども。つまり、ああいうレベルのものが論壇と呼ばれていて。このニコ生も『ニコ論壇』と呼ばれているの、どうなのこれ? 大丈夫なのか?一体。こんなところで「べき論」なんか話したって変わりゃしないから。もう、さっき大塚さんと3分ぐらい話したたけで「もういいんじゃないかな」っていう気になっちゃったんですけどね(笑)。
■橋下現象に期待する人々
大塚: うーん、まぁ、なんだ(苦笑)。疲れたな・・・(笑)。
藤岡: では、大阪の話はひとまずということで・・・。
宮台: あー、じゃあ、大坂の話続けると・・・。
藤岡: はい。
宮台: 僕、この間ちょっと関西学院大で仕事があったので、西宮市とか芦屋市とか、あの辺の人たちの話を聞くチャンスがあったんだけど。やっぱり、兵庫県の人たちも、かなりの人たちが橋下現象に期待をしてるのね。それはどういう事かと言うと、橋下さんがポジティブな存在だということよりも、橋下を批判している人たち、あるいは「従来橋下的ではなかった議会や地域の首長たちは一体何をやってきたんだ」と深い失望があって。簡単に言えば、「こちらはクソだ」って分かっている。でも、橋下は未規定だと。もしかしたら、大クソかもしれないけど、クソだって分かっているものを選ぶよりは未規定のものを選んだ方が良いと思っているわけですよ。
大塚: そのギャンブルは怖いですねぇ。
宮台: はい(笑)。
藤岡: 大塚さんは橋下さんのことを、あまりお好きではないという趣旨のことを仰っていたんですが。
大塚: 僕は左翼だから、君が代とか日の丸を強制するっていう段階で、もう嫌だもの(笑)。ただ、宮台さんの話にくっつけていけば、ずっと神戸にいるでしょう?例えば、神戸震災(阪神・淡路大震災)のときにニュースで観た長田区とか、今ああいうところに行くとコンクリートの高層マンションがズラーッと並んでて。でも、かつてそこに居た人たちはそこにいないわけですよ。あの時の復興資金がいくらだったかは全然覚えていないけど、めちゃくちゃ集まったでしょ。それを全部、ああいうもの(高層マンションなど)に突っ込んで、挙句の果てに、くっだらない「鉄人(28号)」とかを最後に残っていた金で建ててね。ルミナリエもやったのか。
いろいろ聞いたんで言っちゃいたいんだけど、「こんなのに金使ってんの?」っていうバカみたいな使い方しちゃってさ。それで仮設住宅で死んでっちゃってる人たちだっていたわけでしょ。みたいなことを自分たちでやっといてさ。嫌な言い方すると、10年後20年後には長田区みたいに、東北はなっているんだよな。その時に、「橋下氏に期待する」と言っても、例えば神戸の人たちなんかは「もうお金落ちてこないんで、なんか知らないけど大阪の方から降ってこないかな」ぐらいのね。所詮これもカーゴ・カルトっぽい感じで。
宮台: (苦笑)
■3.11後に起きたある変化
大塚: 神戸は何もできなかったんですよ。偉そうに東日本大震災の後、神戸の連中は「自分たちの経験の経験は碑石だよ」とか言ってるけどさ。「何言ってんの?」みたいな。駅前のくっだらねぇモニュメントとか、(そういうものを)ウチの大学のバカ学長が作ったりするわけですよ。そんなんで金使ってるみたいなことを、東北は繰り返してしまうんですよ。
宮台: そうですねぇ・・・。
大塚: だから繰り返したくなかったらば、東北の人は橋下とは関係なく、まともに考えて議会に立候補して、自民党も民主党も維新の会も関係なく、全部ほっぽって自分たちで議席とって、自分らで変えていくみたいなことをしない限りは、多分神戸の繰り返しだろう。その辺りは、神戸にいてよく感じますよ。あともう一つ、流れで神戸の話をしたので。前に宮台さんに、ウチの近所の高校に来てもらったじゃないですか。
宮台: うんうん。
大塚: そこで毎年毎年、絵本書いてもらうワークショップをやっていて、一昨日、またやってきたんですよ。その時、ちょっと面白かったんだけれど、すごく内省的っていうのかなぁ・・・。自分の事について淡々と一人で考えるみたいなモチーフの作品が今年はすごく多くて。9割がそうだったのかな。ちょっとそれが面白かったんですよ。こんなふうに、17歳の子達が内省的になってモノを書くのっていうのは、同じ高校で6年教えているけど、初めてそういうものが集中して出てきて、「一体、何が変わったのかな?」て思った時に、なんとなく地震のことを思い出して。
10代半ばの多感な子たちが、変にボランティアだとか、社会的なこととか、公共的なこととかを言わないで、ただひたすら内向・内省的に考えていて。しかも彼らの書くものに、ちゃんと風景とか世界がしっかりしていて、こんなふうに、もし震災で17(歳)子が変わったと言えるのだったら、違う良さかもしれないけど、それはちょっとだけ「希望が持てるのかな」っていうふうに思ったりもしたんだけど。まぁ、そんだけですね(笑)。
(続く)
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 全文書き起こし部分から視聴から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv78999016?po=news&ref=news#0:00:50
・「インフラとしての近代はネットが可能にした」 大塚英志×宮台真司 対談全文(後)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw191036
(書き起こし・ハギワラマサヒト、吉川慧、武田敦子、藤平昌寿、登尾建哉、小浦知佳 編集・山下真史)

















