「ゲーム脳」が再び議論されている
デイリーニュースオンライン

 東北大学は1月5日、「長時間のゲームプレイは小児の脳の発達や言語能力に悪影響を及ぼす」との研究結果を発表し、これを発端にネット上で議論が発生している。かつてメディアでもてはやされた「ゲーム脳」を彷彿とさせる部分があり、賛否両論を呼んでいるようだ。

「脳トレ」川島教授が発表…「ゲーム脳」は正しかった!?

 同成果を発表したのは同大学加齢医学研究所の竹内光准教授・川島隆太教授らの研究グループ。5歳~18歳(平均11歳)までの健康な小児を対象に、ゲーム習慣の聞き取り調査や知能検査、MRI撮像を実施し、3年後に再び同様の検査を実施。解析に必要なデータが揃っている283名の行動データ、240名分の脳画像データを解析し、平日にゲームをプレイする平均時間と言語性知能、動作性知能、総知能、脳の局所の水分子の拡散性と呼ばれる指標の関係を調査した。

 結果、初回検査時に長時間のゲームプレイ習慣のあった被験者は言語性知能が低く、3年後の検査でも一層の低下につながっていたという。

 同グループは長時間のビデオゲームプレイと言語知能の低下を関連づける研究結果としており、「今回の知見により発達期の小児の長時間のビデオゲームプレイには一層の注意が必要であると示唆されたと考えられます」とコメントしている。

 今までも脳科学者の森昭雄氏が提唱した「ゲーム脳」に代表されるゲーム悪玉論は存在した。ゲーム脳は「ゲーム漬けになっている人の脳波は認知症患者と同じ」といったセンセーショナルな内容だったが、あまりにも科学的根拠が薄いために「疑似科学」と揶揄されていた。

 しかし、今回は研究者の独自の発表ではなく、大学の研究チームによる成果。さらに驚くべきは、グループの中心人物の一人がニンテンドーDSで大ヒットした「脳トレ」シリーズの監修者として知られる川島教授であるという点だ。

 当時から川島教授は「ゲームをすること自体が悪いとは思わない」と前置きしつつ「ゲームの恐ろしいところは、いくらでも多くの時間を注ぎ込めることだ」と警鐘を鳴らしていた。勉強や家族との会話に使われるべき時間がゲームに費やされる危険性を訴えていたが、それを研究によって証明したともいえる。

ネット上は賛否も…研究に批判的な意見目立つ

 この発表に対してネット上では賛否両論。研究結果に納得する声が上がる一方、懐疑的な意見もあって以下のようなコメントが寄せられている。

「高橋名人の『ゲームは1日1時間』は正しかった」
「川島教授が言うと説得力ある……」
「酒だって読書だって運動だってやり過ぎれば身体に悪いというごく当たり前のこと」
「ファミコンやりまくってた世代は普通に社会の中心になってると思うけど」

 ネット上ではどちらかといえば批判的な意見が多く、ゲームばかりがヤリ玉に上がってテレビやスマホなどはあまり問題視されないことに不満を漏らす声もあった。さらに「開示されてるデータが今一つ信用できない」「長時間ゲーマーのサンプル数が少なすぎるのでは」といった指摘もある。

 また、川島教授自身がゲームをやらないことや「脳トレ」の監修で得た十数億円を全て研究所の建設費に提供してしまうほどの仕事人間であることから「ゲームに理解がない」との声もあった。

 しかし、同成果は発達期におけるビデオゲームプレイの言語機能や神経メカニズムへの悪影響を明らかにした画期的な研究として米国精神医学雑誌「Molecular Psychiatry」に採択されるなど、今後の一つの指標として扱われることになりそうだ。

ゲームが「学習能力に好影響」との海外研究も……

 その一方、海外では「ゲームが脳に好影響を与える」とする研究結果も出されている。

 2015年にドイツのルール大学ボーフムの研究グループが、週に20時間以上ゲームをするグループと全くゲームをしないグループを対象に学習能力テストを実施したと発表。一般的なパズル問題を解いてもらった結果、ゲーマーグループの方が成績が良く、複数のヒントから問題を解こうとするマルチタスク的な思考法が顕著に見られたという。一方、ゲームをしないグループは単一のヒントでパズルを解こうとする傾向が目立った。

 さらに被験者の脳をMRI検査したところ、ゲーマーグループは記憶力や学習能力を司る前頭葉や海馬の活動が非常に活発であるという診断結果になったと明かされている。

 また、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のアダム・ガザレイ教授は脳の認知機能改善にゲームが有効だと主張。アルツハイマー病や認知機能障害などを改善するためのゲームを開発し、実際に60~80歳の高齢者が週12時間ほどプレイすることで劇的に回復したとの成果を発表している。

 近年は暴力的なゲームの悪影響も盛んに取り上げられているが、東京大学大学院の開一夫教授らが暴力的なゲームの脳への影響を調査したところ「長期的な影響は不明」と発表。従来の研究では悪影響があるとされてきたが、その大半が20~30分の短時間だけゲームプレイした直後の状態を健闘したものが多かった。同研究ではプレイ直後に男性の攻撃性が高まったことは確認できたが、3か月後には元の水準に戻っていることが分かったという。

 ゲームが脳に何らかの影響を与えることは間違いなさそうだが、そのメリットとデメリットは不明な点が多い。ワケも分からずにゲームに責任を転嫁するよりも、まずは各々の家庭の問題と捉えた方が子供たちの幸福につながるのではないだろうか。

佐藤勇馬(さとうゆうま)個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、ネットや携帯電話の問題を中心に芸能、事件、サブカル、マンガ、プロレス、カルト宗教など幅広い分野で記事を執筆中。歌舞伎町や新大久保をホームグラウンドに飲み歩くのが唯一の楽しみ
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