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 「この度の事故につきまして、地元の福島の方々はじめ、多くの方々に大変なご迷惑とご心配をおかけしてしまい、心からお詫び申し上げます」――。昨年の12月に体調不良を理由に退任した吉田昌郎氏の後任として現場トップとなった東京電力福島第1原発・高橋毅所長は、同原発敷地内で開かれた会見の冒頭、このように語った。

 この会見は、事故後2度目となる福島第1原発の敷地内の取材受け入れに合わせて開かれたもの。昨年11月の受け入れと違い、今回は新聞やテレビなどのマスメディアに加え、インターネットメディアが加わった。ネットメディアとして、ニコニコ動画とIWJ(岩上安身代表)が参加する中、高橋所長は就任後初めての会見で何を語ったのか。以下、記者会見の全文に書き起こして紹介する。

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高橋毅所長(以下、高橋): 前任の所長の吉田から引き継ぎまして、(昨年)12月から後任を務めております高橋でございます。この度の福島第1原発の事故におきましては、地元の皆様、福島県の皆様をはじめ多くの方々に大変なご迷惑・ご心配をお掛けしておりまして、誠に申し訳なく思っております。心からお詫び申し上げます。

 いま現在、プラントですけれども、今まで国内のみならず、国外からも多大なご支援・ご協力をいただきまして、昨年末にいわゆる冷温停止状態というところまで持ってくることができました。私どもも吉田(前所長)の思いを引き継いで、所員・協力企業の皆様一丸となって事故の収束に取り組んできているところでございますが、これまでの政府、それから協力企業の皆様、並びに関係の方々のご尽力に、また改めて感謝する次第でございます。

 これから1号機から4号機は、いわゆる廃止措置という段階に入っていきます。今プラントを安全で安定した状態に維持するとことが第一原則ですが、その上で、さらに(核)燃料を取り出していく新たな取り組みが始まったところでございます。これにつきましては、技術的な課題も非常に多くございまして、時間もこれから長くかかると思っています。現場では着実に一歩一歩、こういった作業に取り組んでいきたいと思っております。

 そういった中でありますけれども、先日2号機では原子力圧力容器の底部の温度計が上昇してしまった。これは最終的には、温度計の故障だということが判明したわけでございます。あるいは原子力格納容器を循環し冷却している設備といったところで、凍結などによると思われる漏洩事象が発生しまして、皆様に多大なご心配をお掛けしておりますことについても、お詫び申し上げます。こういったことがないように、しっかり管理していきたいと思っています。

 まもなく震災から1年になるわけですけれども、私どもとしましては、地元・社会の皆様が安心して見ていられるように、そういったプラントに維持・管理していきたいと思っております。これから、社員、あるいは協力企業の皆様方、関係者一丸となって作業に取り組んでいって、地元の皆様が一日でも早く戻っていただけるように、安全第一で着実に取り組んでいきたいと思います。そういった所存でございますので、よろしくお願いしたいと思っております。

■「原子炉は基本的に安定していると思っている」

ニコニ動画・七尾記者: 今ご説明ありましたが、改めて確認させて下さい。原子炉の現状について、「安定している」と今現在、自信を持って言えるのでしょうか。

高橋: 基本的には安定していると思っております。先日は、皆様をお騒がせいたしまして、申し訳ありませんでした。まず、プラントの中をしっかり水を供給して冷やしているということ。それから発災から1年近くなって、原子炉から出てくる熱量、熱自体も実際小さくなっております。そういった中で、しっかりと水を供給していることから、状態自体は安定していると。

 さらに、設備自体もおかげ様で、単一のものではなくて多重にバックアップを備えておりますので、先ほど申しました崩壊熱が小さくなっていること相まって、例えば何か故障があっても、それに対しては私どもは余裕をもって、ある程度対処ができる状態になっている。そのように認識してございます。

IWJ・岩上氏(以下、岩上): 温度計の故障だということが判明したわけですけども、こういった故障が残り2つにも起きないか。また、その時に代替はどのようにするのかという疑念ですね。
 
 もう一つ、4号機が大変心配されているわけですけども、使用済み核燃料をスムーズに取り出すことはできるのか。そして余震、あるいは大きな地震が今後あった時に、現在の4号機の使用済み核燃料プールを支えている支柱といった設備が耐えうるのか。この2点お願い致します。

高橋: まず、温度計の件でございますが、いわゆる機械ですので、これから残りのものが故障しないとは言い切れないというふうに思っております。これについては、温度計が複数あるということ。それから、温度計以外にも、基本的には燃料の中の状態は必ずしもよく分からないんですが、格納容器の中の圧力であるとか、あるいは実際に供給している水の量だとか、そういったもろもろ、あるいは何か中で不具合が出ていますと、外への(放射性物質の)放出量にも変化を与える。そういったことで、いろいろなパラメータを監視して、それで総合的に評価していくんだろうなと思っております。

 さらには先日、2号機の場合は格納容器の中にファイバースコープみたいなものを持ち込んで若干見たり、あるいは熱電水で温度を測定したりといったこともできましたが、こういった試みをさらに続けて、原子炉あるいは格納容器の中の状態が実際にどうなっているか、を既設のものだけに頼らないで把握するといった試みをしっかりと続けていく。そういったことが必要だと認識しております。

 それから、4号機の燃料の取り出しでございます。中長期的なロードマップでお示しさせていただいたように、4号機・3号機あるいは2号機・1号機といったものをやっていくわけです。その中で、4号機につきましては、まず使用済み核燃料プールに全燃料があるということ。それから、4号機自身では燃料の溶融とか大きなはずは多分ないと思っておりますので、それから着手しております。

 まずはプールから(核燃料を)取り除くために、プールの上に瓦礫等が落ちてございますから、今はそれを撤去する。あるいは、プールの上にある構造物そのものも邪魔になるといった状態でございますので、それを片付ける。そうした作業を現場でやっているところです。それが十分片付いたところで、実際の燃料を取り出すといったところにいくと思いますが、今はその準備段階でございます。これにつきましても、「実際いつ」ということを明確に申し上げることはまだできないのですが、先日発表しておりますロードマップに則って、しっかりとやっていきたいと思っております。

 地震の件ですが、これについても非常にご心配掛けて申し訳ございません。前回の地震があった時に、特に建物といったものが、どういった影響を受けるかを解析で検討しています。基本的には、「まず大丈夫であろう」と評価を得ております。さらに4号機では、特にプールの支持を補強するために、プールの床の下側に支持構造物を施工しまして、それにさらにコンクリートを打つといった補強もしております。そういうことから、あのような地震があっても、設備自体に大きな影響があってさらに事態が悪化するといったことを防げるのではないかと考えてございます。

■「放射性物質を多く含んだ液体を決して外に出してはならない」

日本テレビ: 所長が「今後難題である」とお考えになっていること、現在もしくは目前に迫っていること。それから、中長期ロードマップを遂行していく上でお考えになっていること2点聞かせてください。

高橋: まず現状ですけれども、基本的には燃料を冷却して維持するといったことはできているとは思いますが、あくまでも、燃料を冷却して燃料で汚染された水が出てきて、それを水処理して、またきれいにして使っているといった循環する回路を作ってやっているわけです。これについて、難題と言いますか一番重要なのは、そういった放射性物質を多く含んだ液体を決して外に出すようなことがあってはならないということだと思っております。その辺を確実にするといったことが一番重要なことだと思っています。

 これについては処理設備等から、昨年来、若干放射性物質を含んだ水を漏洩させてしまうといったことを引き起こしましたが、そういったことがないように万全の設備対策、あるいは管理を執っていく。それが重要だと思っています。

 中長期につきましては、なにぶんこういった経験、チェルノブイリがあるとは言え初めてでございまして、実際に燃料をどういった形で出していくかは非常に難しいと思っています。これについては、国の方も同じような考えで、実際に研究を推進するプロジェクト等も立ち上げていただきました。そういったところで、しっかり腰を据えて着実にやっていきたい。いま安定した状態をしっかり保っているので、焦るようなことがあってはならないと思っています。地元の方々等に迷惑を掛けないように、しっかりと研究開発された成果を活用して着実にやっていきたいと思ってございます。

毎日新聞: 温度計の問題で、「総合的に判断する」とおっしゃいましたけども、今後、温度計の故障が相次いでいくと、底部での温度が把握できなくなってくると思います。冷温停止状態の定義は今、底部の温度でやっているんですけども、冷温停止状態の定義について今後、例えば政府と検討を見直したいというか、そういう定義について、どう考えているかお聞かせください。

高橋: 冷温停止状態を定義する実際のところについて、それから細かい話については、これからどうやっていくかはまだの段階だと思います。基本的には、冷温停止状態は、燃料が原子炉あるいは格納容器の中にあって、常に水で冷却をされていて、それが十分崩壊熱を取って。冷温はいわゆる100℃以下だということですから、そういう沸騰が起こりますと、放射性物質がそれに伴って地中に出てくる量が格段に多くなりますから。そういった事態を引き起こさないということだと思っていますので。

 そういった状態を実際に何で監視して、どのように私どもが「これで大丈夫だ」というように思えるか。これが今ご質問になった温度計だとか、あるいはその他もろもろのパラメータになりますが、基本的には、今あるそういったパラメータを総合的に勘案していくことで判断できると思います。それに加えて、先ほど申しましたように、今格納容器の中の状態を現用設備だけではなくて見ていこうと努力もしておりますので。そういったものも含めて検討もなされていくと考えております。

毎日新聞: 冷却の原子炉注水系の、凍結によると見られる水漏れが1月の末に相次ぎました。保温材を巻いていなかったところが水漏れしましたけれど、そもそもこういった寒波を予想して、一番重要な施設を一番最初に保温材を巻くということをしなかったというのはどうしてなんですか。

高橋: まずは、こういった凍結等に起因する水漏れで、ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした。これにつきましては、もちろん寒さによる凍結を想定して保温等の処置をやってきたわけですが、結論から言えば、それが若干甘かったということだと認識しています。これにつきましても、まずはご指摘のように重要なものへの注水でありますとか、あるいは建屋に溜まっている放射性物質を含んだ水の処理だとか。それが破損すると漏洩に結びついてしまうとか。そういったところから、重点的にやってきたつもりでした。さらに、それに直接関わらないような場所、あるいはきれいな水が流れているところとか、あるいは主なラインから分岐しているもので、その先がどん詰りなっているところだとか、万が一凍結しても問題ないところは若干後倒しということでやってきたわけですが。

 私もここに長年おりましたが、今回マイナス6℃とか8℃とかで相当寒かったということもありまして。例えば、少量の水を流していたら通常では凍らないところも凍ってしまった。そういったことが起こってしまったことで、いずれにせよ想定が甘かったということは否めないというところでございまして、大いに反省しまして、そういった設備についても、あるいは保温だけではなくて温めてやることも含めて対応をしているところでございます。

福島テレビ: 今の水漏れの話とも一緒だと思うんですけども、今ある設備は、震災前の事故前の本設の設備とは違って、急ごしらえの仮設の設備だと思うんですが、ここをより信頼性の高い本設の設備に変えていくには、今後はどういうふうに進めていきますか?

高橋: 基本的にはご指摘の通り、この設備は早いものは震災から3ヶ月くらいで完成したような、非常に短期間で作った施設でございます。ご指摘のあった本設と呼ばれている設備と比べますと、設備単体の信頼性という意味では、若干弱いところがあることは否めないと思っております。これにつきましては、当然このままではいけないと思っています。これから燃料の取り出し等、新たな作業が続きますが、基本でありますところは、今ある燃料を冷やして、それを浄化して、放射性物質を外には漏らさない。それは、ずっと続ける必要があるわけです。

 これについて、ご指摘のように設備自体を急ごしらえのものから、もうちょっと信頼性のあるものに順次取り替えていくといったことをやってます。例えば、そういった汚染水を建屋の外を移送しているラインを、今までは地面の上をそのまま這わせていたものもあったわけでございますが、これらについてはちゃんとしたコンクリート性の通路を作って、そこに収納して、そこを流してやるといったことをやる。そういった形で、あるいは放射性物質を除去する新しい設備を作りますが、順次しっかりしたものに改善していく。これから長い期間になると思いますが、そういった処理が地元の人ももちろんですが、作業員の方が安心してやれるといった設備にしていきたいと思ってございます。

■発災から1年になろうとするが・・・

朝日新聞: まもなく地震から1年になりますが、先ほどお話いただいた以外で、福島県の方あるいは国民の方に、今メッセージとして伝えたいことはありますか。

高橋: とにかく発災以来、多大なご迷惑・ご心配をお掛けして大変申し訳ございませんでした。これから1年目がもうすぐ来るわけですが、いずれにしましても地元の皆様が避難せざるを得ないような状況になってしまったこと。それから、広く社会の皆様に放射性物質による心配・不安感を拭えないような状況にしてしまったことだと思っておりまして。

 まずはとにかく、現場としてはプラントをしっかり安定した状態にもっていって、そういた放射性物質をもう外に撒き散らすことはないと、皆がそれで安心していただけるような状況にとにかくもっていきたいと考えてございます。

読売新聞: 濃縮塩水のタンクを増設していますが、このまま増設していくわけにはいかなくて、いずれなんらかの形で海に放出しなければならないという話も昨年末来あって、今はタンクの増設でしのいでいますが、この問題については、今後どの時期にどのような形で判断されるのでしょうか。

高橋: あくまでも外への放出といったことについては地元方々をはじめ、あるいは海の場合だと漁業関係の方々のご理解を得ることが大前提となります。まずは私どもとしてできることは、なるべくそういったものを放出しない。あるいは放出する場合でも普通の水と変わりないものまで純度を高めていく。

 そういった私どもにできることを、とにかくまずはやることが先決。そういったことをやる中で、私たちの取り組みをご説明して、ご理解いただければということでございます。とにかく我々が発電所の中でやっていることをしっかりとやって、それをご説明するという段階にしか至っていないと思ってございます。

THE INDEPENDENT: 放射能が漏れないように下にコンクリートのトレンチ(溝)を作る予定がある。要するにオムツみたいなものを作る予定があるんですけども、それについてコメントをいただけますか。

高橋: 今やっていることはトレンチと言うか、放射性物質を含んだ廃液を廃棄物処理施設に置いた設備で、きれいにするということを行っている。ただ、放射性物質を含んだ廃液を発生するのは原子炉の建物でございます。それが今タービンの建物に流れていて、そこからポンプで汲み上げて、ホースに移送する。ここで今ご指摘があったところだと思うんですが、建物の外にいったん出て、処理する建物に持っていくところが、今まではホースを這わせただけでございます。(ホースが)何か穴が開いてしまいますと、そのまま地面に流れてしまう。

 これは非常によくないことなので、万が一それがあっても防ぐことができるように、今おっしゃったトレンチといった形ですが、コンクリート製のいわゆるU字型のものを屋外に配置して、ホースはその中を這わす。そうすると万が一ホースに穴が開くようなことがあっても、そのトレンチ内に留まります。(水が)敷地の中に出たり、さらに海の方にいったりといったことを防げるようになる。敷設については、今日御覧いただけるかもしれないですが、集中廃棄処理施設とタービンの建物の間に敷設してありまして、そこにホースを這わせてフタをしたところが出来上がっている状態でございます。

岩上: (最後に)健康状態だけお聞かせ願えませんか。吉田(前)所長が健康を崩された。高橋さんは健康状態いかがでしょうか。また、この設備の中で働くということが、健康を損なわずに仕事をし続けられる環境にあるんでしょうか。放射性物質の関連も含めて。

高橋: まず吉田については、順調に回復していると承っております。ここの環境でございますが、たしかに発災直後は、6、700人がすし詰めのような形で、寝るところも雑魚寝で、非常に環境が悪かった。あるいは食べ物の質も相当悪かった状態ですが、これについては、かなり最近改善されてきてます。相当良くなったと思っています。

 ただ、そうは申しましても、こういったところでの生活は通常とは違います。あるいは中に入って来てお分かりかもしれませんが、湿度が低くてなかなか大変なものがあります。これについても全社の協力を得まして、さらなる改善に務めて参っているところでございます。

 最近、例えばインフルエンザが福島県で流行っていますが、今回企業の方々含めまして6000人以上予防接種も受けております。たしかにインフルエンザに罹った方は若干出ましたけれど、そんなにひどくならずに回復されました。現場での勤務にそれほど支障が出る状況にはないと程度にようやくなってきたと感じてございます。

岩上: 高橋さんご自身は?

高橋: 私は大丈夫でございます。

(了)

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(山下真史、神田桂一)

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