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障害者施設での激しい虐待や、東芝の「不適切会計」、化血研の薬剤不正製造など、内部告発によって組織の不正が明るみに出る事件が相次いでいる。日本ではこうした内部告発が、年間4000件も通報されているという。

しかし勇気を出して告発しても、報われないどころか報復攻撃にさらされるケースも少なくないというから驚きだ。1月21日放送の「クローズアップ現代」(NHK総合)では、公益のために告発した人が苦悩する実態を伝えた。

告発者は「言うだけ損な法律」と酷評

千葉県がんセンターで勤務していた麻酔科医のSさんは、適切な指導なく歯科医師が全身麻酔を行う現状に危機感を抱いていた。当時のセンター長に訴えたところ、改善されるどころか仕事を全く与えられなくなり、退職に追い込まれた。

Sさんは「公益通報者保護法」を頼みの綱に、厚生労働省へ不正を告発するメールを送ったところ、返ってきたのは驚くべき返答だった。

「公益通報者は労働者であることが定められております。通報時点で退職されている場合は、この労働者に該当しません」

その組織に所属していなければ、通報者として認められないというのだ。Sさんは最後の望みを絶たれ、やむなく千葉県を相手に自身のパワハラ賠償裁判を起こした。その過程で、がんセンターの不備を訴えたのだ。

去年9月、がんセンターの不備を含めた主張が認められたものの、裁判には3年もの歳月がかかった。Sさんは、こう胸の内を明かす。

「勇気をもって告発しても、それが受け止められない。『言うだけ損な法律』という認識がありますよね」

食品会社の賞味期限偽装を告発した男性も、必死で証拠を集めて保健所に告発したが、調査に入った職員はわずか1分ほどで「不正は認められなかった。再調査の予定はない」と結論づけた。これを目撃した新聞記者が県に通報したことから、ようやく不正の実態が明らかになり、営業自粛に至ったという。

識者は「ダメなことはダメと言える」意識変革を訴えるが

10年前に施行された「公益通報者保護法」は、組織が通報者に不利益を与えることを禁止している。組織の不正を暴くことは、公共の利益につながるからだ。

しかし通報者を守るための法律のはずが、国が行った調査では半数近くの人が解雇や嫌がらせなどを受けていることが分かった。消費者庁で公益通報制度を担当していた日野勝吾さん(淑徳大学助教)は、この法律の問題点を次のように挙げた。

「保護の条件が限定的(労働者のみ)」
「報復行為への罰則がない」
「専門の行政機関がない」

こうした現状に見直しを求める全国団体が2015年7月、報復行為を受けてきた当事者たちによって設立された。国も改正に向けての議論を始めている。公益通報の専門部署を大統領直属の機関に設置している韓国では、通報者が不利益を被れば国が裁判までしてくれるという。

日野さんは、日本では専門人材の教育や各省庁の権限の問題などがあり、そのまま移入することは難しいとして、労働組合や消費者団体のバックアップ、NPOがある英国を一つの参考とすることを挙げた。また、意識を変えることの重要性、「ダメなことはダメと言える社会をつくっていかないといけない」とまとめた。

立法や行政側にこそ「企業優先」の意識があるのではないか

労働者は、勤務先に生計を握られる弱い立場にある。だが不正を目の前に黙っていたり、加担することに良心の呵責を覚えながら働きつづけたりするのは辛いことだ。

それゆえ、内部告発による不正が発覚するたびに、なぜ悪いことしていても「従業員は黙っていてくれる」と思っていられたのだろうと疑問だった。

しかし番組を見て、組織は従業員を信じているのではなく、告発者に対する報復や見せしめの手法をガッチリ持っているため、ある種の自信があるのだろうと感じた。

識者は「意識を変えること」というが、意識よりも法律やしくみをきちんと変えるべきだろう。むしろ変えるべきは、立法や行政側の「企業優先」の意識ではないか。こうした現状が改善されない限り、「国産だから安心安全」などと言えないと思う。(ライター:okei)

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