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TOCANA

 今年1月にオープンしたウェブサイト「サイエンスニュース(http://sciencenews.co.jp/)」。「科学で世界をブリッジする」をコンセプトに、科学の世界とそうではない世界をつなぎ、科学の面白さをたくさんの人に伝えている。

 物理・数学・宇宙・化学・生物などの科学系のすべての分野をカバーし、難しい事柄でもより多くの人に伝えるためのわかりやすい、科学的知見に立った解説が注目を集めている。

 そんな「サイエンスニュース」で編集統括を務める、サイエンスライター川口友万氏と、編集記者を務める山下祐司氏に、科学にまつわるあんなことやこんなことをインタビュー。

 今回は、第6の味覚といわれる「脂味(あぶらみ)」の正体について語ってもらった。

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■それ自体には味がない、第6の味覚「脂味」

――2015年7月、米パデュー大学が甘味、酸味、塩味、苦味、うま味に続く味覚として「脂味」を発表し、人間に第6の味覚があるとして話題になりましたが、これはどのようなものなんですか?

川口友万氏(以下、川口) これまで認定されていなかった、脂の「味」の存在が認定されて、「オレオガスタス」という名前になるっていう話ですね。どういうことかというと、脂自体にはそんなに味がないのに、脂身があるお肉の方がおいしく感じるのはなぜかっていう話なんです。

 味には2パターンあるんです、ダイレクトに分子の刺激を受けるというものと、溶けてイオンになって結合するものと。でも、脂はそのどちらにも該当していない。だから厳密には味ではないんですけど、おいしく感じるんだから味にしようよ、というのが今回の話です。

 基本的に生物は、生存に関係するものの味を最優先に感じます。まず、脳を含め、体を動かすのに糖がいるでしょ、だから甘いものに敏感なんです。

 それから、人間の体はほとんどタンパク質なので、タンパク質を取らなきゃいけないわけですよ。そうすると、そこから得たアミノ酸の味を感じる、これがうま味。

 そして、最後の一つが脂肪。脂肪は、短期間で最も効率よくエネルギーに変わるという意味で、とても重要なものであるのにもかかわらず、いままで味覚に入っていなかった。それで、味として認定しようかということになったんですけど、舌に単独で受け取る場所がないので、わかんないんです、普通の味覚ではない。

――それだけでは味がない?

川口 それだけでは大した味にはならない。うま味もそうなんですけど、それ自体がおいしいわけではなくて、ほかと組み合わさることでおいしくなる。うま味調味料もそうじゃないですか。それだけを舐めてもそんなにおいしくないけど、ちょっとほかのものにかけるだけでおいしくなるでしょ。脂味もそういうものとして分類しよう、という話ですね。


■脂味のキケンな中毒性とは?

――生命に必要な糖分とタンパク質と脂質という、栄養学的にも大きい3つですね。

川口 実は、この3つって、麻薬性があるんですよ。脂なんて一番強烈で、アヘンなんかと同じ働きをするんです、脳内で。

――そうなんですか、じゃあ脂いっぱい食べまくったら……

川口 廃人にはならないですけどね、体型的には廃人になる(笑)。まあ、麻薬と同じところにレセプター(受容体)があっても、麻薬は脂肪の何万倍という密度だから。ただ、その仕組みが一緒ってこと。

 京都大学の伏木亮先生の、マウスを使った有名な実験があります。水とサラダ油を置いて、レバーを押したら出るようにして、ネズミに与えるんです。1回押したら出る、2回押したら出るというように。それをどんどん回数を上げていくと、100回でも200回でも押すの、狂ったみたいに。

――必要とは関係なく?


■ラーメンは行列したほうがウマい

川口 関係なく、中毒になっちゃう。このメカニズムが非常に面白くて。例えばラーメン屋さんで行列するでしょ。あれは行列した方がおいしいんですよ。待っている間にどんどんドーパミンが出るの、これは期待値ですね。それで、食べ始めると今度はセロトニンが出てくる。まあどちらの状態も気持ちいいわけです。中毒っていうのはこのドーパミンが出る状態。期待値が高まって、抑えが効かなくなっている状態。脂にはこの中毒性があるんですよ。

 まあ、脂味が味として認められるというのは、すごくいいことだと思いますよ。味としてちゃんと、単に栄養的な問題だけではなくて、ほかの味覚との関係もようやく研究対象となってくるので。


■ラーメン二郎の戦略は生物学的に正しかった

――最近行列するようなラーメン屋は脂ギトギトのところが多いですよね。

川口 やっぱりラーメン屋は成功しようと思ったら、化学調味料山ほど入れて、脂を山ほど入れて、安い麺で、野菜とか入れて、甘くして。つまり……。

――イメージ的には、ラーメン二郎ですね(笑)。

川口 二郎は正解なんです。成功したい人はみんなラーメン二郎真似すればいいんです。おいしいこだわりのスープとかいらない、あれが一番儲かる、絶対リターンする。

――人間というか動物的な体の動きからするとそれが合理的だと。

川口 そうそう、生物的にはそういうことですよね、中毒にしちゃえばいい。

――ちなみに何の脂の価値が上がってきそうなんですか?

川口 それはこれからですね。まあ当然、動物性の油の方が人間の体には吸収が早いのでいいってなるとは思うけど、例えばマーガリンの問題とかあるし、脂ならなんでもいいというわけでもない。そのへんはこれからじゃないですかね。

――ちなみに(ラーメン二郎に)行かれたりはするんですか?

川口 いや、行かない。まあ何回かは行きましたよ、仕事で。

山下祐司氏(以下、山下) 川口さんに中毒性はなかった?

川口 いやあるある! 山盛りでね、絶対食えないと思うじゃん。だけどまあ食べるわけですよ、そしたらお腹パンパンになる。もうラーメンなんて見たくもないし、1カ月は食べない、二郎なんて二度と行かないって思うの、だけどあれ一発だよね。2日か3日後に、突然食いたくなる。全然おいしくないのに食べたい衝動が湧いてくるの。

――確かにすごくおいしいかと言われれば、そんなにおいしくはないんですよね。

山下 え、でも食べに行くんですか?

――よく行きます!ジロリアンです。急に食べたくなるんです。おいしくなけど、おいしいんです(笑)

川口 でしょ、それは中毒。3回で中毒になるらしいよ、まあわかりませんけど(笑)。


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