NHK記者がタクシーチケット「36万円分」私的利用で諭旨免職、犯罪の可能性は?
弁護士ドットコム

NHKは1月下旬、業務用のタクシーチケット36万円分を私的に利用していたとして、さいたま放送局の31歳男性記者を諭旨免職処分にしたと発表した。同様の手口で12万円分を私的利用した23歳男性記者に停職1か月、7000円分を私的利用した別の29歳男性記者に出勤停止5日間の処分を下した。

報道によると、諭旨免職処分になった男性記者は、2014年9月から2015年11月にかけて、41回にわたり、友人との食事や旅行、バイクの運転免許を取るための教習所への移動などの私的な目的のためにタクシーチケットを使用していた。別の記者は、仕事の合間にバッティングセンターに行くために使っていたという。

NHK内部からの通報で不正利用が発覚。3人は「タクシー利用の感覚がまひしていた」と話しているそうだ。全額返金しており、NHKは刑事告訴は検討していないとのことだが、もし刑事告訴していれば、どのような犯罪にあたる可能性があるのだろうか。星野学弁護士に聞いた。

●業務上横領罪や詐欺罪の可能性

「取材や深夜残業に対応するために渡されていたはずのタクシーチケットを利用目的に反して使用すれば、『業務上横領罪(刑法253条)』が成立します。

たとえ、NHKがあらかじめタクシーチケットを記者に渡していても、勝手に使って良いという意味で渡していたわけではありません。よって、タクシーチケットの所有権はNHKにあります。記者による私的な利用によって、NHKが本来の目的でタクシーチケットを使えなくなるような行為は『横領』と評価できます。

そして、このタクシーチケットは、記者がその仕事の性質上預かっているものですので『業務上』という評価になります。

また、使用目的を偽ってタクシーチケットの交付を受ければ『詐欺罪(刑法246条)』が成立する余地もあるでしょう」

今回の処分をどう見ているのか。

「NHKとして、この記者を刑事告訴せずに諭旨免職処分にとどめた背景には、被害額が低額であることや、被害弁償が済んでいるという事情があるからかもしれません。

犯罪に当たる行為をした記者が非難されるべきことは当然ですが、『魔が差す』という言葉もあります。NHKとしても、タクシーチケットを私的に利用できる状況を放置した、あるいは私的利用などないだろうと慢心していた点は非難されるべきです。

国民の経済的負担により運営されているNHKは、国民から徴収したお金の使い道についても神経を使うべきではないでしょうか」

星野弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
星野 学(ほしの・まなぶ)弁護士
茨城県弁護士会所属。交通事故と刑事弁護を専門的に取り扱う。弁護士登録直後から1年間に50件以上の刑事弁護活動を行い、事務所全体で今まで取り扱った刑事事件はすでに1000件を超えている。行政機関の各種委員も歴任。
事務所名:つくば総合法律事務所
事務所URL:http://www.tsukuba-law.com

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