『ヤン研』(矢野稔貴×シゲ/白泉社)
おたぽる

 我が国において「三国志マンガ」は一つのジャンルである。基本となっているのは、横山光輝『三国志』であるが『蒼天航路』やら『覇―LORD―』やら、三国志を題材にした作品は無数。それに、ナンタラ三国志とか、三国志的に三つの勢力が対立している作品まで加えたら……もはや、数え切れない。

 そんな三国鼎立ワールドに、新たな作品が登場。矢野稔貴×シゲ『ヤン研』(白泉社)である。この作品、簡単にいえばオタクとヤンキーとギャルという決して交じり合うはずのないヤツらによる三国鼎立ワールドだ。

 気弱なオタクの主人公が部長を務めるアニメマンガ研究会。そこは、いま地元でも有名な不良3人組のたまり場になっていた。おかげで、部長以外の部員はまったく寄りつかなくなってしまう始末。加えて、部長はマンガの貸し借りをして妙に懐かれてしまっていたのだ。そんな部室で、ヤンキーたちはちょっとしたことで口論になる。例えば「将棋の飛車と角はどちらが強いのか」をめぐって。

 まあ、怖いけれども多分いいヤツである。何しろ、オタクな部長にヤンキーの定番であるウンコ座りのレクチャーだってしてくれる。それどころか、部長のためにコンビニの一番クジを引いて目当ての賞品を当てることにも、命がけで取り組んでくれるのだから。

 でも、彼らは親切だけれど、ちょっとバカ。部長の話すアニメのストーリーに熱くなり「そいつどこ中よ」と現実と空想の区別がつかなくなってしまうのだ。

 そんなオタクとヤンキーという相容れない人種が共存する部室にさらにギャルも入り浸るようになって、物語は混迷を深めていく。

 この作品の中で力関係を三国志に例えるなら、ギャルは間違いなく魏である。なぜなら、作中でギャルは「かつて肩で風を切っていたヤンキーに取って代わり現代日本で最強の生物となったのが“ギャル”である」と、めっぽう評価が高いのである。具体的には、ギャルは人との距離を詰めるのが上手く、すべて「マジうける~」「ありえね~」で処理してしまうんだそうだ。

 いやいや、作者の中でのギャルへの幻想。すなわち、ギャルは見た目は派手だけど中身は優しい女の子なんです。もしかすると、以外と純で処女かも……なんて思ってるんだろ! と、感じてしまう展開である。

 そうした側面だけ描くなら、最近の密かなギャル人気に便乗した凡作だろう。でも、この作品をオススメするポイントはギャルVS腐女子というドリームマッチが描かれているからだ。ギャルVS腐女子ならば、どちらが強いか考えたことのある人も多いだろう。これは、いわば猪木VSアリ戦。もしくは、虎とライオン、ティラノザウルスとライオンに匹敵するどちらが勝者かわからぬ勝負だ。

 そして、この作品は見事にギャルに軍配をあげる。「もう、すっかりオタクだよ~」というギャルに腐女子は「光の世界に帰れ」と心の中で叫ぶことしかできないのだから。

 というわけで、この作品を読んで以来、ギャルVS腐女子はリアルにどちらが強いのか、気になって夜も眠れない。この作品は最終的な決着まで描いてくれるかと思いきや、一巻完結。残念! ギャルVS腐女子について一家言ある方は、ぜひお便り下さい。
(文=是枝了以)

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