マクドナルドの店舗(撮影=編集部)
Business Journal

 日本マクドナルドホールディングス(HD)は2月9日、2015年12月期連結決算の最終損益が347億円の赤字(前年同期は218億円の赤字)と発表、01年の上場以来過去最悪を更新した。14年夏以降に発覚した期限切れ鶏肉の使用問題や異物混入問題などで業績が悪化し、回復のめどが立たない状態だ。

 マクドナルドは、もはや打つ手はないのだろうか。市場関係者や経済界では、再生は難しいという声が多数派だ。確かに、最終損益だけを見れば再生は不可能なようにも見える。しかし、徐々にではあるが状況は改善しつつある。

 たとえば、売上総利益がプラスに転じたことは評価できる。売上総利益とは、売上高から売上原価を差し引いたものをいう。15年第2四半期では57億円のマイナスだったが、それが通期では1億円のプラスとなった。

 ただ、プラスとなった要因としては、「フランチャイズ収入」から「フランチャイズ収入原価」を差し引いた金額の7億円の影響が大きい。直営店の売上総利益は6億円のマイナスで、直営店は依然として原価割れを起こしている。マクドナルドの直営店の売上原価は材料費がすべてではないため一概には言えないが、直営店ではハンバーガーなどの商品を売れば売るほど赤字になる可能性が高いという厳しい状態である。

 ここからわかるのは、これ以上の価格帯の引き下げを行っては経営が成り立たないということだ。売上総利益を上げる必要がある。そのためには利益率が高い商品を開発し、ある程度は高価格帯の商品も販売していかなければならないのだ。特に、競合他社と差別化を図る上で、ハンバーガーの新商品のヒットは必須といえる。

 ここ数年、マクドナルドの商品戦略は混迷を極めていた。以前であれば、「えびフィレオ」「メガマック」「てりたまバーガー」「チキンタツタ」「月見バーガー」など、多くのヒット商品があった。しかし、ここ数年でヒットした商品を挙げることは難しい。商品戦略は方向性を見失い、そもそも期限切れ鶏肉の使用問題や異物混入問題以前に、すでに低迷し始める要因となっていた。

●大博打の国産バーガー

 マクドナルドはこの1年で商品戦略を大きく転換しようとしていることが読み取れる。「アメリカンテイスト」から「国産」への転換だ。14年には“古き良き時代のアメリカ”をコンセプトとしたメニューを提供する「アメリカンヴィンテージ」キャンペーンを行い、15年の前半には「ハワイ州観光局公認」メニューの「ハワイアン バーベキューポーク」や「ロコモコバーガー」を販売するなど、「アメリカンテイスト」のメニューを大きく打ち出していた。少し時代は遡り、10年~12年にかけて計3回「Big America」キャンペーンを行っていたこともある。

 ところが、14年の後半ごろからアメリカンテイストのメニューは影を潜め、地域の食材を使った「北海道チーズ月見」や「マックシェイク 紫いも」など、国産メニューを販売するようになった。また今月発売の新バーガーの名前を公募すると発表したが、その仮称は「北海道産ほくほくポテトとチェダーチーズに焦がし醤油風味の特製オニオンソースが効いたジューシービーフバーガー」となっており、これも国産が前面に押し出されている。15年12月期の決算短信でも、「国産食材を使った商品の発売」を経営コンセプトとして明確に打ち出している。

 これは大きな転換だ。大きな賭けでもある。なぜなら、日本マクドナルドが国単位でゆかりがあるのは「日本」と「アメリカ」だけだからだ。すでに「アメリカ」のカードは出し尽くした感があり、今回の「日本」への方針転換で失敗することはできない。何がなんでもこの「国産」でヒット商品を生み出さなければならない。

 しかし、ハンバーガー業界で国産は競合がひしめいている。特にモスバーガーが大きく先行している。モスバーガーで使用される生野菜はすべて国産で、全国約3000軒の農家から新鮮な野菜を仕入れている。02年から「日本の味、地域の素材」を大切にしたご当地メニューづくりをスタートさせており、10年には「モス日本全国うまいものめぐり」と銘打ち、全国を5つのエリアに分けて地元の素材や名物料理を取り入れたメニューを販売している。モスバーガーは国産市場で長い歴史を刻んでいる。マクドナルドが消費者から“モスバーガーの二番煎じ”と突き放されないためには、斬新なアイデアが必要となる。

 マクドナルドは国産のメニューでヒットを生み出し、売上総利益を改善し、最終損益をプラスに転じさせることはできるのか。賽は投げられた。サラ・カサノバ社長の手腕があらためて問われる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

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