『カルト村で生まれました。』(高田かや/文藝春秋)
ダ・ヴィンチニュース

 子どもの価値観というものは、生まれ育った環境に左右されるものだ。とても甘やかされて何不自由ない暮らしを送る子もいれば、某芸能人の子どものようにゲーム機を叩き壊されてしまうほど厳しく育てられる子もいる。それが価値観の形成に影響を及ぼすのは言うまでもない。はたから見れば賛否両論あるだろう。しかし、当の本人がそれに気づくことはない。それが当たり前の環境なのだから。
 『カルト村で生まれました。』(高田かや/文藝春秋)は、ぼくらの想像をはるかに超える幼少期を過ごした著書によるコミックエッセイだ。カバーには動物のイラストが並び、一見、ほんわかしたテイスト。しかしそこに並ぶ「カルト村」という文字だけが、やけに不穏な響きを持っている。そしてページを開いた先で待っているのは、衝撃的な事実だ。

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 生まれてから19年間ずっと「カルト村」で育ったという高田氏。本書は、大人になった高田氏が旦那さんとともに過去を振り返る形式で、カルト村での経験が語られる。表紙同様にポップなイラストが描かれているが、その内容がいずれも強烈! 思わず「かわいそうだったんだね」「マインドコントロールだよ」とツッコむ旦那さんに共感してしまうほどだ。

 たとえば、村での食生活について。食事は1日2食で、「お昼は腹八分目、夜は十二分目に食べよう」というのが村の方針だ。しかし、子どもたちの“世話係”の機嫌を損ねてしまうと、さあ大変。育ち盛りの子どもには残酷な、「食事抜き」という罰を与えられてしまうのだ。高田氏は特に問題児だったため、このご飯抜きがしょっちゅうだった。それで編み出したのが、なんでも食べてみるという荒業。理科室の塩を舐め、甘い歯磨き粉を舐め、挙句の果てに「お供え物」「薬」「動物のエサ」まで食べてしまったという……。これが先進国日本でのできごとだなんて、にわかには信じがたい。

 さらに村では、「体罰」が横行していた。しかも、高田氏がいた村はスパルタで有名なところで、子どもたちは常に戦々恐々としていたそう。「平手打ち」「裸で立たせる」「暗所への閉じ込め」などは、当たり前。「平手打ち」×「髪の毛掴み」×「引きずり回し」×「壁に打ちつけ」という恐ろしいコンボもあったとか。親元から引き離された数十名の子どもを、1~2名の世話係が管理するという状況下では、暴力での抑えつけが最も効率的だったのだろう。しかしながら、もはや虐待では済まされないレベルである。

 子どもたちを抑えつける手段として、徹底した情報の管理も行われていたという。顕著なのが、「手紙の検閲」だ。しかも、内容をチェックするに留まらず、「むかついた」や「さいあくだ」というマイナス表現は黒く塗りつぶされてしまう。旦那さんのツッコミを借りるとすれば、さながら「軍事国家」である。徹底的に情報規制し、子どもたちに知識を与えない。そうすることで、環境への不満が生まれないようにしていたのではないだろうか。はたから見ればどんなに異常だとしても、当事者たちがなんとも思っていなければ問題は生まれない。そう、これは独裁国家のようなやり方だ。

 こういった経験を積みながら成長していく村の子は、高校を卒業するタイミングで村を出るかどうか選べるようになる。高田氏はそこで一般社会へ出ることを選択し、旦那さんとめぐりあい、結婚。いまは普通の暮らしを楽しんでいるという。

 カルト村で育った高田氏は、ぼくらが当たり前のように享受している生活を、心の底から満喫している。会社で働くこと、買い物をすること、休日に出かけること……。そんな高田氏を見ていると、幼少期の経験は本当に貴重なんだと痛感させられる。なんにせよ、高田氏の今後の人生に幸多きことを願いたい!

文=前田レゴ

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