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 都心部でOLやサラリーマンの人気を集めている「猫カフェ」。ペット禁止の集合住宅に住んでいても、気軽に猫と触れ合える"癒しスポット"として話題だが、動物愛護法の施行規則改正で、2012年6月1日から午後10時以降の営業が禁止される方針が固まった。深夜まで残業している人にはつらい内容だが、一体、なぜ猫カフェ規制が必要なのか。今回、ニコニコニュースでは環境省の担当者と、猫カフェ経営者の双方の言い分を聞いてみた。「規制される側」と「規制する側」――彼らの主張はどこが異なるのだろう。

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■環境省「"展示"ならペットショップも猫カフェも同じ」

 もともと今回の規則改正は、犬や猫のペットショップでの夜間展示を規制するのが狙いだった。展示を午後8時以降は禁止することの余波で、猫カフェも午後8時までになる方針だった。

 しかし、猫カフェ経営者達の反対で午後10時までに緩和された経緯がある。4月16日の環境省の中央環境審議会では、「カフェ内で猫たちが自由に動き回れる環境を整備すること」を条件に、猫カフェの営業を午後10時までの営業を認めることになった。ただし1歳未満の子猫には適用しない。

 これは規則改正後2年間の経過措置であり、この間に夜間展示がペットに与える影響などを把握し、今後の規制のあり方を再検証する。環境省は今後、市民の意見を公募するなどした上で、2年後の猫カフェ規制の最終決定をするという。

 そもそも、今回の規則改正の目的はどこにあるのか。環境省自然環境局総務課・課長補佐の杉井威夫氏に、改正の意図・目的について聞いた。

 杉井氏によると、今回の規則改正の発端は、「夜間にペットショップ等で動物を"展示"しているという行為が問題だ」という指摘だった。杉井氏によると、特に幼い犬猫は夜間に展示されて睡眠等が妨げられると、成長ホルモン等の関係で成長が阻害されたりするという事例も報告がされているという。

 動物愛護法は、動物の健康を保持し、よりよい生活を送らせるための法律だ。その意味において、「深夜・夜間に動物を展示することは規制したほうが良い」という議論は以前からあった。杉井氏は、

「夜間に(動物を)"展示"をしているのなら、猫カフェであろうとサーカスであろうと動物園(のナイト・ズー)であろうと、動物を"展示"をしていることには変わりありません。最終的に行為としての展示を規制するに当たっては、猫カフェさんをはじめ、ペットショップ以外の業者を含めて対象になります」

と述べ、動物を"展示"している業種であれば夜間営業の規制対象にする方針だと明かした。

 しかし、猫カフェ経営者達はペットショップのように「販売目的の展示を行う業種」と、動物園や猫カフェのような「展示のみを行う業種」が一緒にされているのが問題だという指摘もある。一口に"展示"として括らないで、"売るための展示業"と"展示のための展示"を分けてほしいという意見をどう思っているのだろうか。

「そういうご意見はありました。しかし、販売業者だからといって(必ずしも)不適切な取り扱いをしているわけではありません、当然商品ですので。不適切なものを売ったら商売にならなくなる可能性もあります。そこは、『猫カフェさんだから良い』『ペットショップだから悪い』ということではないと思います」

として、今後も「展示」の区別は行わないだろうとの見解を述べた。

■「猫カフェは全く忘れられていた」と経営者

 規制する側である環境省の言い分は分かった。かたや、規制される側である猫カフェの経営者は今回の深夜規制をどう思っているのだろうか。

 「決め方自体が少し強引で、公平性にかけていたのではないかと思う」。猫カフェの経営者らで作る「猫カフェ連盟準備委員会」の福井隆文委員長は、まず今回の規則改正の手続きを批判した。彼は猫カフェ きゃりこの代表者。午後10時以降も営業する2店舗を運営している。今回の展示規制は、ペットの深夜販売を規制することが本来の意図だったが、それがいつの間にか猫カフェも規制される内容になっていたという。


「幼いペットの"販売"規制が、いつの間にか"展示"の規制になり、深夜の規制と言っていたものが夜間の規制になり、いつの間にか午後8時の規制になっていました。その間に、猫カフェの経営者はヒアリングにも呼ばれませんでした。(環境省審議会の)部会の議事録を読んでみても、委員の人たちが猫カフェを多少なりとも知っている風でもなく、猫カフェは全く忘れられた存在になっていました。そしてある日突然、『今年の6月からは深夜営業してはいけませんよ』とポンッと出されてしまい、『えっ?』という感じ。うちのお店も、まだ(環境省から)正式な通達は来ていません。こういう規制の決め方は『どうなの?』って思います。せめて規制内容の話に、私たちも参加できるならまだしも・・・。」

 福井氏は、ため息をついた。ペットショップ業界に比べて、猫カフェ業界はまだ規模が小さい。また、猫カフェという業態が出来たのも、ここ7年程のことだ。そのため、規制内容を話し合う環境省審議会の動物愛護部会の中でも猫カフェの存在が忘れられていた節がある。昨夏に行われた意見公募をした際に、初めて環境省から猫カフェという言葉が出てきた。

■「猫達にストレスがかかる時間帯ではない」

 今回の規制で猫カフェ経営者たちが納得できないのが、営業時間を夜間22時までとする点だ。福井氏によると、猫はそもそも夜行性。夜間はむしろ元気で、猫達にストレスがかかる時間帯ではないという。

「(夜間展示の)規制の目的は、『猫や犬のストレスを軽減させるため』ということでした。ただ、猫カフェにおいては、夜はお客様が多い時間帯でありませんし、仕事帰りの方とかリピーターのお客様が多い時間帯なんです。また、夜間は猫達が元気な時間帯ですし。猫はもともと夜行性ですから。猫達にストレスがかかる時間帯ではないんです」

と、福井氏は猫カフェの深夜規制が、必ずしも猫のストレス軽減に当たらないと話す。また、

「規制自体がペットショップの狭いケージ(ペットを入れるカゴ)の中で飼育されることが前提に考えられているので、『展示=ストレスがかかる』という風に捉えられているわけです。『猫カフェ』という展示業態が、当初から規制の想定に入っていなかったんです」
「閉店後は体調や食事の管理をするため、ケージで猫達を管理するお店が多いのですが、営業時間を短くされると猫達がケージに入る時間帯が長くなる。それは(逆に)猫達にとっても良くないのではないかと思うんです。猫のストレスや健康状態を考えると、営業時間を短くすることは猫達のためにはならず、逆に悪影響がある場合もある」

として、閉店後にケージにいる時間が長くなることで、猫のストレスがむしろ増大しかねないと指摘している。

■"猫のストレス"をめぐって食い違う見解

 猫カフェの深夜営業で、猫達にストレスがかかるのかをめぐって、環境省は「ある」、猫カフェ経営者は「ない」と対立しており、今のところ主張は平行線だ。だが、環境省の杉井氏も、

「今回は猫カフェの問題も含め、動物を大切にするという観点から多くの方に(動物愛護法の施行規則の一部改正に)関心を持っていただきました。展示規制の話もありますが、動物を取り巻く環境にとって一番重要なのは飼い主さんの問題だと思っています。今、ペットは犬猫だけでも約2000万匹、子供の数より多い。ペットを飼っている人もいない人も、今回の件を動物と人間とのあり方を考える機会にしていただければありがたいです」

と、動物行政に対する思いを漏らした。また、猫カフェ『キャリコ』経営者の福井氏も、

「猫達にストレスに与えないようにしているのが猫カフェなので、そこを理解していただければと思います。時間規制に反対しているのも、その点にあるのだと分かっていただければと思います」

と、猫達に寄せる思いを打ち明けた。立場は違うが、環境省も猫カフェ業者も、「動物のために」という思いは共通している。これからの2年間は、「何が猫達にとって一番良い方策なのか」という認識を両者の間で、どう詰めるかが課題となるだろう。

(吉川慧)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]ニコ生フライデー「猫カフェ 最後の日!?」 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv90361112?po=news&ref=news
・中央環境審議会動物愛護部会(第29回)議事要旨‐環境省
http://www.env.go.jp/council/14animal/y140-29.html
・猫カフェ きゃりこ‐公式サイト
http://catcafe.jp/

(吉川慧)

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