昨日……というか今日の夜中、テレビ朝日にて放送された『現役・OBレスラー200人&ファン1万人がガチで投票! プロレス総選挙』。午後8時58分という素晴らしすぎる時刻から放送されるかと思いきや、直前のWBC中継が予想通りに延長してしまい、結局は0時13分から放送という憂き目に遭っている。やはりプロレス中継といえば、深夜が定位置となってしまうのか!?(日曜深夜といったら、90年代の『全日本プロレス中継』を思い出す)

とは言え。このような番組が企画されるなんて、10数年前には思いもよらなかったはず。かつてのプロレス界には“冬の時代”が訪れ、当時の世の興味は「PRIDE」や「HERO'S」といった格闘技イベントに注がれ気味であった。ちなみに今回の番組でナレーターを務めているのは、「PRIDE」&「K-1」煽りVにおけるナレーションが印象深い立木文彦氏である。

予想通り、アントニオ猪木が1位
現役・OBプロレスラー200人&ファン1万人を対象に「スゴイと思うプロレスラーは?」とアンケートを実施し、合計のポイント数でランキングを作成するというのがこの番組の企画趣旨。結果、以下のような順位が出来上がっている。

1位.アントニオ猪木
2位.ジャイアント馬場
3位.初代タイガーマスク
4位.オカダ・カズチカ
5位.力道山
6位.棚橋弘至
7位.ジャンボ鶴田
8位.獣神サンダー・ライガー
9位.三沢光晴
10位.スタン・ハンセン
11位.長州力
12位.武藤敬司
13位.小橋建太
14位.天龍源一郎
15位.ケニー・オメガ
16位.橋本真也
17位.蝶野正洋
18位.ハルク・ホーガン
19位.真壁刀義
20位.アンドレ・ザ・ジャイアント

……と、ここにランキングを掲載してはみたものの、言ってしまうと順番はあまり重要ではない。

猪木さんが1位を獲得することは初めから明白だったし、プロレス界に厳然と存在する“格”にも、そして新旧のバランスにも留意した、ある意味礼儀正しい並びになったのではないだろうか。(そういう意味で、ジャイアント馬場さんがご存命の時期にこのような番組を行うことは不可能)

長州―浜口の絆が、意表を突いてこぼれ落ちる
この番組で何が面白かったかというと、やはり歴史である。チラリと見せるプロレスラー(現役・OB含む)の表情から、選手同士の関係性が浮き彫りとなるのだ。

例えば、11位にランクインした長州力に向かってものすごい勢いで立ち上がり「力ちゃん!」と声を掛けたアニマル浜口。維新軍時代、長州力の女房役として二人三脚でマット界を席巻した盟友である。

浜口は、愛娘・京子を鍛えるトレーニング法を長州力から学んで考案したと告白する。「ありがとう、力ちゃん!」(浜口)、「浜さん、俺の方こそありがとう!」(長州)

この2人といえば、どうしても忘れられないエピソードがある。
「長州がジャパン・プロレスに走って間もない頃の話である。知人に頼まれて、レスラーのサイン会に一役買うことになった。『長州でお願いします』と言われた私は、その旨、長州に申し入れた。長州の返事は意外なものだった。『浜さんと二人でということなら……。オレ一人でというのなら断らさせてもらいます』(中略)サイン会が終わった直後だった。長州がわざわざ私の許へやって来て、深々と頭を下げたのである。『無理を聞いてもらって……。浜さんと二人でというのなら、どんなことでも飛んでいきますから……』。信じられない長州がそこにいた。私ごとき取るに足らぬ記者に、あの長州が体をふたつに折って頭を下げたのだ」(別冊宝島「プロレスラーマル秘読本」から)
井上義啓氏(I編集長)寄稿のコラムにて明かされた秘話が、2人のやり取りで不意に蘇った。

天龍源一郎越しの松井珠理奈
このような“ニヤリ”とさせるポイントは、他にも数多く散見されている。
長州の「キレてないですよ(実際は「キレちゃいないよ」)」発言が有名な試合の対戦者である安生洋二が「完全にブチギレてたでしょ……」とぼやくVTRを、安生の後輩である高山善廣がいい笑顔で見つめてたり。思わず、こちらもニヤリとさせられた。

10位にはスタン・ハンセンがランクインし、しかも実際に収録会場へ登場! そして当事者たちを前に勝俣州和が「ハンセン失神事件」(龍原砲がサンドイッチ延髄でハンセンを失神させてしまう)に言及し、目醒めた後のハンセンが天龍をボコボコにしたことを振り返っている。

天龍 彼はね、もう本当にムチャクチャでしたよ。
ハンセン お前もクレイジーだったよ!
ちなみに、爆笑問題・太田光から「トランプに(票を)入れましたか?」と問われたハンセンは「トランプ大統領に投票した」と回答した。

そして、4位にはオカダ・カズチカがランクイン。『豆腐プロレス』(テレビ朝日系)で「ハリウッドJURINA」を演じる松井珠理奈は「好きすぎて、コンサートとかドラマの中でついついやってしまう」というレインメーカーポーズをオカダの眼前で披露している。……のだが、そのポーズを捉えるカメラの構図が天龍源一郎越し。思わずカメラに睨みを利かせる天龍であったが、天龍の引退試合の相手を務めたのはオカダ・カズチカであった。

「“100年に1人の逸材”なので、1位じゃないとおかしい」(棚橋弘至)
6位には“100年に1人の逸材”棚橋弘至がランクイン。天龍、小橋、武藤、長州、ハンセンといったレジェンド中のレジェントが登場した後だというのに派手に見栄を切りながら登場し、「6位はうれしいんですが“100年に1人の逸材”と言ってしまってるんで、1位じゃないとおかしい」と断言する棚橋。そんな彼からは、並々ならぬ覚悟を感じることができる。

番組は、プロレス界“冬の時代”においてジャンルの底上げを図るため精力的に動き、会場にファンを呼び寄せた彼の奮闘ぶりを伝えるVTRを制作、かなりの時間を割いて放送していた。

SNS上では「なぜ、あの選手が入ってないんだ!?」というプロレスファン(特に古株ファン)によるつぶやきを数多く目にしたが、レジェンドばかりが顔を揃えるランキングはあまり健康的じゃないという気がしてしまう。懐古趣味もありつつ、“明るい未来”を醸す今回のような構成の方が有意義ではないだろうか。しかも、久々にプロレスがゴールデンタイムへ進出したのだというのだから! いや、厳密にはしてなかったですね……。
だから、今度はプロレス中継自体がゴールデンタイムへ復帰するくらいにがんばれ! オカダや棚橋を前にした松井珠理奈や美保純らの目は、本気でキラキラしてました。
(寺西ジャジューカ)