すでに発掘されているエサルハドン王の石碑 「Wikipedia」より引用
TOCANA

 偶像崇拝を敵視し、中東において多くの古代遺跡を破壊している過激派組織ISIS(イラク・シリア・イスラム国)。重要かつ希少な遺跡の破壊行為を繰り返す彼らに国際社会の非難が集まっているが、皮肉なことにそんな破壊者側であるISISによって歴史的大発見がもたらされていた。


■ISISが掘った地下トンネルの中に紀元前の遺跡が出土

 2014年7月、ISISはイラク北部の都市モスルにある、ユダヤ教、キリスト教、及びイスラム教の預言者ヨナが埋葬されているといわれているナビ・ユヌス聖廟を爆破した。

 最近になりモスルの一部を奪還したイラク軍が同国の考古学者ら専門家を派遣し、破壊された廟付近の調査を開始。すると、ISISが掘った地下トンネルの中に紀元前のアッシリア帝国時代のものと思われる、多数の極めて貴重な遺物が眠っていたことが判明したという。

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 ISISの拠点のひとつがある丘の中心へ向かうトンネルの壁に沿って、古代アッシリアのエサルハドン王(在位:紀元前681-669)の銘が大理石に楔形文字で刻まれているほか、“生命の水”をまいている半神半人の彫刻が発見されたのである。

「今回のような大きなサイズの遺物は過去に類がありません。ISISの破壊行為によって重大な発見がなされたことは遺憾ですが」と、イラクへの文化的支援や発掘調査を行う英チャリティー団体(The British Institute for the Study of Iraq)のエレノア・ロブソン代表はコメントする。

 発見された数々の遺物は歴史的・文化的価値が高く、強国を誇った新アッシリア王国時代の埋蔵物がほかにもある可能性を示しているという。先述のエサルハドン王やその息子アッシュールバニパル王(在位:紀元前668-627)の前代・センナケリブ王(在位:紀元前705-681)も巨大宮殿を建てたと考えられており、手がかりとなる遺跡の発見が期待されているそうだ。


■トンネルが崩壊する危険性も

 悲観的な見立てとして、すでにISISが発見していたとすれば宮殿内を無傷で保つはずもなく、もし高価な埋蔵物があれば直ちに売却してしまっているに違いない。イラクの考古学者でモスル博物館の元学芸員であるレイラ・サリー氏は「懸念なのは我々がたどり着くまでの間に彼らが先にどこまで遺跡や遺物を発見してしまっているかです」と話す。

 ISISが掘ったトンネルは今後数週間以内に崩壊する危険性があり、これらの遺物を博物館へ移動させるのも困難だという。

 現在氏は他の5人の研究者と共に現場で見つけることができるすべての遺物を急ピッチで記録している最中で、「すでに陶器などの運び出すのが容易な小さなものはほとんど持ち去られているでしょう」と肩を落としながらも、「それでも残されたわずかな遺物が私たちの研究に役立つはずです」と期待を見せている。

 これら文化財の保存に対してユネスコはパリで緊急会合を開き対応策を協議、国際社会も協力を惜しまない姿勢である。
(文=Maria Rosa.S)


※画像は、すでに発掘されているエサルハドン王の石碑 「Wikipedia」より引用

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