東京ディズニーリゾート(「Wikipedia」より)
Business Journal

 2016年度の東京ディズニーリゾート(TDR)来園者数は、前年度同期比0.6%減となり、2年連続の減少となった。対照的なのが、西の巨大テーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)。同年度の来園者数は前年度より5%増で、3年連続で過去最高を記録した。

 来園者数が下がり続けるTDRと、上がり続けるUSJ――。こうした図式になっているが、その要因とはいったい何なのだろうか。立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に、マーケティングの視点からこの国内二大テーマパークの現状を分析してもらった。

●成長期のUSJと、成熟期のTDR

「“明暗”というと、ややミスリードな気がします。確かに短期的にみれば両園の来園者数の推移は対照的ですが、TDRのほうは来園者数が頭打ちの状態なのだと思います。TDRは83年の開園以来、徐々に来園客を伸ばし、今では年間に3000万人近い人が訪れています。前年度比では下がってはいますが、まだまだ莫大な数字です」

 一方のUSJの16年度の来園者数は約1460万人と、TDRの約半分。TDRの約3000万人という数字は、4年間で国民のほぼ全員が来園した計算になるほどの数字だ。

「これは驚異的な数字で、これからさらに右肩上がりを続けると考えるのは現実的ではあり得ません。経済学には『収穫逓減の法則』という用語があります。これは、何かを生産する場合、始めは順調に生産量が増加しますが、ある程度のところまでいくと伸びが緩やかになり、やがては生産コストに見合わなくなってしまうことを意味しています。現状のTDRの来園者数は、まさにこの法則に類似したピークが近づいているのではないでしょうか。また、マーケティングでは製品の市場での時間的推移を『導入期』『成長期』『成熟期』『衰退期』という4期に分けて説明するプロダクト・ライフ・サイクル(PLC)という理論がありますが、TDRはこの『成熟期』に入っていると考えられます。今後は、いかに衰退期に向かわないように努力するのかが経営のカギとなるでしょう」

 しかし、USJが好調なのは事実だ。

「先のPLC理論にあてはめれば、USJは『成長期』にあるといえます。では、なぜその軌道に乗れたかのというと、TDRとの方針の違いにあるでしょう。TDRは基本的にディズニーのキャラクターを前面に訴求したテーマパークとなっていますが、USJはアメリカ映画を切り口にしてはいるものの、漫画やアイドルなどの要素も“ごちゃ混ぜ”に取り入れているのが特徴的です。普通は多くのキャラクターが林立すると猥雑に陥りやすいのですが、USJはエリアをうまくゾーニングして、それぞれの持ち味を出させています」

 視界にその世界観以外のモノを入れないというのは、敷地外のモノを見えないように設計されたTDRと共通しているといえるのかもしれない。

●USJ成長の秘密は「セレンディピティ」

「そしてUSJの強みは、TDRのようにキャラクターに縛られていないので、目当てのエリアがあって来園したとしても、パークを周遊している間に他のエリアの魅力を発見し、次回に訪問するきっかけをつくっているところにあるのではないでしょうか。このように、予期した以外のモノと偶然に出会って、そのモノに対して別の価値を見出すことを『セレンディピティ・マーケティング』と最近は呼びはじめています」

 USJはテーマパークエリアにおいて、この「セレンディピティ」を誘発させるようなキャラクターの集め方をしているのでは、というのが有馬氏の分析だ。他方、TDRには別の強みがあるとのこと。

「TDRは周知のキャラクターが圧倒的に多く、来園者に安心感と納得感を与えます。ですから、今後来園者が右肩上がりになりにくい半面、独自の世界観を大切にした期待を裏切らないテーマパークとして多くの人々に愛され続けるのではないでしょうか」

 どちらの経営方針が正解ということはない。それぞれの持ち味を発揮し、来園者の期待に応え続けることが、両園が共存共栄していく上で重要になっていくのだろう。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)

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