■「キネマニア共和国」

(C)2017 田辺・弁慶映画祭 第10回記念映画プロジェクト

みなさんは“詩のボクシング”をご存知ですか?

これはステージの上でふたりの朗読ボクサーがそれぞれオリジナルの詩を披露し、その勝敗を競うという、いわば言葉の格闘技です。

競技そのものは既に20年の歴史を数えるとのことですが、このたび“詩のボクシング”を題材にした映画が誕生しました……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.233》

『ポエトリーエンジェル』、これは言葉の格闘映画であり、群像劇であり、親子の物語であり、そして若い男女の心の繊細な機微を描いた青春映画の快作です!

個性的でどこか哀しき面々が
繰り出す熱い言葉バトル!

『ポエトリーエンジェル』の主人公は、まもなく22歳を迎える玉置勤(岡山天音)。高校卒業後、父(鶴見辰吾)の梅農家を手伝いつつ、現状に全然満足できず悶々とした日々を過ごしていた彼は、ふとしたことから“詩のボクシング教室”に参加することに。そこには一癖も二癖もある面々ばかりが集っていました……。

一方、高校に通いながらボクシングのトレーニングに勤しむ丸山杏(武田玲奈)。彼女は誰とも口をきかず、友人を作ろうともせず、ひたすら孤独な日々を過ごしていました……。

なかなか試合に勝てない勤たちに、ようやくリベンジ戦の機会が訪れますが、勤の良き理解者でもある老人・基次郎(下條アトム)が勤の父の仕事の手伝い中に倒れてしまいます。規定上、メンバーが5人揃わなければ試合ができません。勤は、前々から気になっていた杏に思い切って詩のボクシングに誘い、彼女もそれを了承します。

そして試合当日……。

本作は生きる目標を見い出せずにいる若者のジレンマを基軸に、彼を心配する両親との葛藤、その中で特に父と子の確執といった、誰もが通過するであろうモチーフがみずみずしく綴られていきます。

(C)2017 田辺・弁慶映画祭 第10回記念映画プロジェクト

詩のボクシングのメンバーも、どこかエキセントリックな、しかしそれゆえに一般から疎外されているような心寂しくも濃いキャラクターが勢揃い。おなじみ《東京03》の角田晃広や、最近の日本映画に欠かせない顔になってきた芹沢興人と山田真歩、そしてベテラン下條アトムと、好もしき個性派で占められています。

そして主演の岡山天音。『合葬』(15)や『ディストラクション・ベイビーズ』(16)、最近では『帝一の國』(17)にも出演している若手演技派の彼ですが、ここでは立ち位置の定まらない若者ならではの浮ついた軽薄さと、それゆえの心の悩み、そしてようやく熱くなれるものを見出した歓びの感情といったものを等身大に醸し出す好演です。

(C)2017 田辺・弁慶映画祭 第10回記念映画プロジェクト

5月6月と4本の新作が公開される
期待の若手女優・武田玲奈

本作のヒロイン杏を演じる武田玲奈も、今年一押しといってもいい注目株の若手女優でしょう。

(C)2017 田辺・弁慶映画祭 第10回記念映画プロジェクト

15年に『暗殺教室』で映画デビューを果たし、同年のテレビドラマ「監獄学園―プリズンスクール―」でヒロインを演じた彼女。non-no専属モデルとして活動する一方で、女優としても、たとえば舞台『四谷怪談』でアイテムとして使用されたルービックキューブを、女子高生たちの麻雀青春映画『咲―Saki―』(17)で習った麻雀を、それぞれ特技欄にアップできてしまうほど役に対して熱をもって取り組むタイプ。

本作でも撮影の数か月前からボクシングを習い(これも彼女の特技として今のプロフィールに載っています)、また孤独を保ち続けるヒロイン杏の根幹にかかわる大きな要因の裏付けのために施設を訪れて役作りに備えるなど、意欲的に本作に臨みました。

実は彼女、岡山天音とともに本作を監督した期待の新進若手・飯塚俊光監督の『チキンズダイナマイト』(15)に出演しており、それが今回の抜擢にも繋がっていますが、こういった同世代感覚で参加できるインディペンデント映画には今後も意欲的に関わっていきたいとのことです。

ちなみに今月は、彼女がレギュラー出演していたテレビドラマの劇場用映画『ラストコップ THE MOVIE』、VR映画『交際記念日』、そして本作と、武田玲奈出演映画が一挙に3本も見ることができるというお楽しみ月間であり、しかも6月は主演映画『パパのお弁当は世界一』も公開されます。

やはり今後要チェックの若手女優として、武田玲奈を強く推したいところです。

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(文:増當竜也)