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 商品を買ったりサービスを受けたりするためには、客は対価を支払わなければならない。これにより商品やサービスの提供者は、対価に応じた価値を提供する必要があるが、逆に言えば対価を超えた価値を提供する義務を負わない。

 しかし、日本では、自分が「客」というだけで神様か殿様のような振る舞いをする人たちが少なからずいる。大した支払いもしないのに、異常に尊大な態度を取る大人があとを絶たない。そして、不況下で増加する「モンスターカスタマー」の理不尽さに悩まされる労働者も数多くいる。

 顧客の厳しい視線によって、商品やサービスが鍛えられる面はあるだろう。しかし、いま多く行われているのは、末端の現場の労働者たちが「おもてなしの心」の名の下に強いられる不当な「献身」だ。これは給与にそぐわない過重労働であり、一種の搾取である。

 

 
「ぶっ殺すぞ」「ブス」「ババァ」と罵声の嵐

 比較的裕福で良質な顧客がいると思われる某有名百貨店にも、おかしな顧客はいるようだ。20代の受付嬢は「愛想笑い」が職業病になって、日常生活にも支障をきたしている。もっとも、裕福な家の奥方の方が威張っている可能性もあるのだが…。

 「各売り場に対するクレームが毎日多い…入社当時は神経をすり減らしていたが、今となっては他人事。感情を込めたふりをした謝り方が身についてしまい、プライベートでも出てくる始末…彼氏にも友人にも、その表面(的な)謝り方なんとかして、感情がこもってなさすぎるといわれます」

 百貨店でさえこれだから、価格の安さを売りにする店では、さらにひどい目にあうことは容易に想像できる。最近100円メニューを打ち出すファストフード最大手で働いていた20代前半の女性は、お客からの理不尽なクレームが多かったと振り返る。

 「ドライブスルーなんか最悪でした。(注文が)聞き取りずらくて、再度聞き返すと、『ぶっ殺すぞ』『ブス』『ババァ』と罵声の嵐。いちいち気にしてたら続けてられません。あと、意外に多いのが主婦からのクレーム。言いたい放題でしたね…」

 勝間和代さんもお気に入りの格安ファミリーレストランで働く、20代後半の男性も、「とにかくお客さんの質が悪い」と嘆いている。

 「安いものを売っているか(ら)必然的にお客さんも安くなると思います。安い人間を相手にするのは本気に疲れます。その反面、自分はあんな人間になりたくないというお客さんばかりなので、あんな人間にならないよう普段から意識しています。理不尽なクレームばかりです」
 


会社と労組はモンスター客より従業員を守りなさい

 おかしな客は至るところに出没する。ある有名大学病院に勤務していた40代医師は、1人の「モンスターペイシェント(患者)」のせいで、何人もの医師が退職に追い込まれたと明かす。

 「患者からの理不尽なクレームが多い。それに対してパラメディカル(医療補助者)や病院のバックアップがあればかなり我慢できるが、ほったらかしにされることが多い。渉外担当という人もいるが、数が少なくほとんど機能していない」

 大手宅配便会社で働く50代前半の女性も「(クレーム受付が)女性だと態度も大きく(なる客がいるので)大変嫌な思いをすることが多い」と憤る。

 「自分がよその会社にクレームを入れると、ほとんどが男性の人が出てきて、対応する。うらやましくなる。750円や790円の時給でここまで責任を問われるのは、かなりの負担」

 もちろん、「クレームのようなお客様でも、それを丁寧に対応することで、再来店頂き、今では自分指名の上得意様となっているパターンもあります」(大手家電量販店)という人もいるが、それはもとから比較的まともな客だったのだろう。

 接客を伴う業務であれば、会社は「モンスターカスタマー」が出現するリスクがあらかじめ存在することが分かっているはずだ。トラブルの解決を末端の労働者に押しつけるのではなく、サービスポリシー(方針)を定め、自社の従業員を守れる仕組みを整備しなければならない。労働組合も、そういう視点で声を上げるべきだ。


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