※イメージ画像:thinkstock
TOCANA

 なぜこんなことをしているのか、自分でもよくわからない行動を選択したことがないだろうか。またどうしても足が向いてしまう場所があったり、無性に会いたくなったり電話したくなる人物がいるというケースもあるだろう。こう言われて思い当たる節があっても今の時点でうまく説明がつかないようなら、その行為は、ひょっとすると未来の自分に導かれているのかもしれない……!?

【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2017/07/post_13830.html】


■未来が過去に影響を及ぼす“逆因果”とは

“量子もつれ”の状態にある2つの量子は、たとえ物理的に引き離したとしてもいわば運命共同体のように分かちがたく結びついた存在であることが、実験からも証明されている。また引き離された距離がたとえ北極と南極ほど離れていても、あるいは宇宙の端から端までであったにせよ量子論的には2つの量子は一心同体の振る舞いを見せるはずなのだ。例えばもし宇宙の端から端まで離れていたとした場合、一心同体の振る舞いを見せるためには2つの量子の間のコミュニケーションは光の速さを優に越えていることになる。したがって量子論はまさに時空をも超えた理論ということになるのである。

 そして単に時空を超えているだけでは済まされなくなっているようだ。なんと時間が過去へ向かって流れているケースも考えられるというから驚きだ。時間は前に進むだけでなく“巻き戻って”いる場合もあるということになる。

 この驚くべき理論は逆因果(retrocausiality)と呼ばれており、その名の通り時間を逆回しにした因果関係のことである。通常、発生したある現象は因果関係のある過去の何らかの出来事が原因になっていると考えるが、逆因果とはこの逆で、今起こっている出来事は未来の現象の影響を受けているとする考え方である。つまり原因は過去にあるのではなく未来にあるというわけである。

 米・チャップマン大学のマシュー・ライファー氏と、カナダ・理論物理学ペリメーター研究所のマシュー・ピュージー氏の2人の研究者が現在、この逆因果についての研究に本腰を入れて取り組み始めている。

「現在、物理学者と哲学者の少数のグループがこの逆因果について、研究すべき価値があると考えています」とマシュー・ライファー氏は科学系オンラインジャーナル「Phys.org」に話している。

 逆因果はあくまでも思考実験の上で登場した仮説理論なのだが、今やアカデミズムに属するサイエンティストが本気で研究対象に選んでいるのである。はたして本当に未来が過去に影響を及ぼしているケースがあるのだろうか。


■「時間が未来だけに向かっているという証明はできない」

 逆因果を研究するにあたってライファー氏とピュージー氏がそのよりどころとしているのが、ベルの不等式(Bell's Theorem)である。

 ベルの不等式は、1964年にアイルランドの物理学者、ジョン・ベル博士が提唱した数式で、ざっくりと言ってしまえば何か不可解な現象について、それが一般的な物理法則の中での例外的な出来事なのか、それとも量子論を持ち出さないと説明できない現象なのかを見分けるための数式である。つまりこの数式に収まる範囲内であれば一般的な物理学で説明できる現象であり、この数式を超える結果になってしまう現象は量子論に属するものになるというわけだ。具体的にはその現象が“量子的重ね合わせ”の状態であったのかどうか、“光速を超える速度”を伴っているのかどうかなどを見極めることである。

 ライファー氏とピュージー氏はこのベルの不等式を空間から時間に置き換えて適用させた結果、時間が未来だけに向かって流れているという証明はできないと結論づけたのだ。つまり、逆因果の現象が存在する可能性があるということと、量子もつれの状態にある2つの量子は時間を遡るかたちでも影響を及ぼしあっているということである。ということはまさに一心同体の2つの量子は未来であれ過去であれ時空を超えて結びついていることになる。

「逆因果の研究が価値のあるものだと考えている理由は、一般的な物理学で量子論の解釈を試みるという、ベルの不等式を含む多くのノーゴー定理(no-go theorem)にあります。これらはつまり標準理論的な解釈ではつじつまが合わないという特徴を持っています。したがって、唯一の選択肢は一般的な物理学を放棄するか、標準理論のフレームワークから脱却することだと思われるのです」(マシュー・ライファー氏)

 しかしながら逆因果はまだ多くの科学者が完全には受け入れてはおらず、この2人にしたところで逆因果が正しいのかどうかは今後の自分たち次第であることを認めている。

「私の知る限り、物理原則全体をカバーし、なおかつこの逆因果を取り入れた量子論的解釈はありません。逆因果は現時点では説明のためのアイディアなので、他の物理学者が懐疑的であるのは当然であり、ゆえに我々には逆因果を具体的な理論にする責任があります」(マシュー・ライファー氏)

 ともあれ、今起きている現象の原因が過去にあるのあるのではなく未来に導かれたものであると考えてみるのは、思考のパラダイムシフトをもたらすものになるだろう。ひょっとするとあまり理由がわからずにしてしまう行為は未来の自分の“おぼしめし”なのかもしれない!?
(文=仲田しんじ)

※イメージ画像:thinkstockより引用。

全文を表示