“瀬戸内レモン味”大ヒットの要因とは? 「会社が干渉しなかったのが、かえってよかった」
週プレNEWS

このところ、レモン風味の食品が大ブームだ。

それもただのレモンじゃない。ジュースにお茶にそうめん、スナック菓子、即席焼きそば、たこ焼き、さらにはシュークリームまで、「瀬戸内レモン味」と名づけられた商品が続々と登場、飛ぶように売れているという。

爽やかなレモンの酸味は今のシーズンにぴったりだが、この「瀬戸内レモンブーム」の火つけ役といわれているのが、まるか食品(広島県尾道市)の「イカ天瀬戸内れもん味」だ。「イカ天瀬戸内れもん味」が大ヒット商品に大化けするまでには、いくつかの幸運があったという。前編に続き、まるか食品の松枝修平企画課長に聞いた。

* * *

【幸運2】 ネーミングの挫折










当初、このイカ天は「広島れもん味」と命名されるはずだった。あまり知られていないが、広島はレモンの生産量日本一。そのレモンがふんだんに使われている上、まるか食品も広島県の企業。「広島れもん味」は、ごくごく自然なネーミングだろう。

「ところが、調味料メーカーからストップがかかったんです。調味料には広島、愛媛両県で採れたレモンが使われているため、『広島れもん味』では偽装表示になってしまう。そこで泣く泣く『瀬戸内れもん味』としたんです」

ところが、これが後の大ヒットにつながるのだからビジネスはわからない。

「この『瀬戸内れもん味』、地元の人が行くスーパーなどではほとんど見向きもされなかったのに、駅のキヨスクや観光地のお土産店でよく売れた。つまり、観光客の方々が、土産物として興味を持ってくれたんです。だったら、お土産の定番商品としてリニューアルし、生産を続けようということになりました」

そこはやはり「瀬戸内れもん味」というネーミングの効果が大きかったようだ。

「単なる『れもん味』では全然、売れなかったでしょう。『広島れもん味』でも、ここまでは売れなかったと思います。ひとつの町の名前がつくと、どうしても商品に対するイメージが狭まりますからね。その点、『瀬戸内』だと、この地域のあらゆるいいものを取り込んだイメージが大きく膨らむ。『地中海レモン』がいい例だと思いますよ(笑)」

【幸運3】若手女性スタッフの彗眼










生産継続が決まったとはいえ、「イカ天瀬戸内れもん味」の生産量はごく少量。それもあって定番化にあたっての商品リニューアルはひとりの若い女性社員に託されたという。

「会社が干渉しなかったのが、かえってよかったみたいです(笑)。以前のパッケージは、明朝体に黒字の商品名でかなりおやじくさかったんですが、リニューアル後はパステルカラーを使い、女性が手に取りやすいように大変身。一度に食べきらなくてもいいように密閉チャックもつけた。その結果、女性客の評判がよくなり、瀬戸内観光の思い出にまとめ買いされるケースも多くなったんです」

【幸運4】マツコ効果で工場がパンク










まるか食品の販売担当者が異変に気づいたのはリニューアル販売スタートから3ヵ月後の14年春のこと。全国のスーパーなどから、異様な量の注文が連日舞い込むようになったのだ。

「『瀬戸内れもん味』というネーミングにしたこともあって、『せとうち観光推進機構』から、ブランド商品の認定を受けました。この団体に大手の問屋が数社加盟していて、そこの流通ルートで全国販売できるようになった途端、びっくりするほどの注文が入るようになったんです」

14年夏には月産10万袋を突破。「イカ天瀬戸内れもん味」はまるか食品のトップ商品となった。

だが、そのフィーバーはあくまで序の口。まるか食品がメガトン級のうれしいショックに揺れたのは15年6月のことだった。

「忘れもしません。6月に放映された『マツコ&有吉の怒り新党』(テレビ朝日)で、マツコ・デラックスさんと有吉弘行さんが『瀬戸内れもん味』をかじりながら、『うまいうまい』と絶賛してくださった。その直後、殺到する注文をさばききれず、弊社の工場はパンクしました(苦笑)」

その後の生産ライン増強、そして瀬戸内レモンブームの到来は冒頭で触れた通りだ。松枝課長がこう顔をほころばす。

「社内には一時的なブームに終わるとの声もあったんですが、発売から3年半過ぎても収まるどころか、ますます販売量が伸びている。まさに瀬戸内レモンのおかげです。広島にはカープやお好み焼き以外にも名物がある。レモンもそのひとつで、『イカ天瀬戸内れもん味』以外にもさまざまなレモン商品があります。そのレモン商品を求めて、たくさんの観光客が広島に来てくださるとうれしいですね」

最近では瀬戸内レモンを配合したクリームやボディローションなど、コスメ商品も登場している。この瀬戸内レモンブーム、当分落ち着きそうにない。

(取材/ボールルーム 撮影/村上庄吾 日野和明)

全文を表示