酒井氏が最近転売用に買い集めたプレイステーションVR。年間に5000万円ほどの売上があり、転売した差額である1100万円が彼の年収だ
日刊SPA!

 大人気ゲーム機ニンテンドースイッチの品薄が止まらない。大手家電量販店の抽選販売では100台の入荷に対して2000人もの人が列をなし、先着順で販売のゲームショップでは、翌日のオープンを待つために閉店直後に寝袋を持ち込んで並ぶ人までいる有様だ。

 ゲーム機に限らず、apple製のイヤホンである「airpods」やプラモデルの「ガンダムメタルビルドシリーズ」もまた、過去に同様の状況だった。

 このような人気商品は、なぜその商品を欲する人すべてに行き渡らないのか。

 まず考えられるのは、商品の需要を見誤ったり、生産に時間がかかるものであったりなどの理由で、需要に対して供給が不足していることだ。しかし、その他にも品薄の原因を生み出しているものがある。

◆年収1100万円の転売屋の日常とは

 それが、いわゆる「転売屋」と呼ばれる人たちだ。彼らは品薄の商品を買い占め、オークションサイトやフリマアプリでそれを売りさばき、利益をあげている。

 おそらく、世間的な転売のイメージは「商品を買い占めてそれを売り、仕事もせずにラクに暮らしている人たち」かもしれない。

 だが、転売屋には転売屋の苦労がある。本記事では、2年前に勤めていた会社を辞め、現在は人気商品の転売のみで生計を立てている、プロ転売屋の酒井佑一郎氏(25歳・仮名・転売の年収1100万円)に知られざる転売屋の苦難を語ってもらった。

「仕事の内容はシンプル。品薄の商品をロックオンしたら、あとはそれをどれだけ買えるかです。列に並びながらノートパソコンで通販サイトをチェックするのは日常茶飯事。ニンテンドースイッチみたいに特にオイシイ商品が出てくると、朝から晩まで繁華街で買いまわります。家に帰ってからオークションの出品や発送作業などをやるので、忙しいときは一日3時間くらいしか寝られないこともザラです。現在の年収は1100万くらいありますが、労働時間だけで言えばチェーンの居酒屋店員よりブラックかもしれません

 そんな酒井氏が抱えている苦悩とは…?

「一番ツラいのは、結婚できないことですよね。こんな稼業だから職場での出会いなんてあるわけないし、同窓会なんかも恥ずかしくて行けない。ちょっといい感じになっても、レア物の販売情報が入ったらそっちを優先しちゃうから、すぐダメになる。元カノの誕生日に10万円儲かるスニーカーの再販が入っちゃって、泣く泣く食事をキャンセルしたら、それで大ゲンカして別れました」

◆転売のためにウンコを漏らしたことも

 上述したように、転売は時間との戦いだ。朝から一歩もその場から動けなくなることは珍しくない。

「朝は先着販売の店舗に並んでいることが多いです。商品が1個しか入荷しない店舗に1番乗りしたときは毎回冷や汗をかきますね。だって、一度列を離れたらアウトなわけですから。ほかに人がいれば『ちょっとコンビニ行ってくるんで、見といてください』とか頼めますけど、自分しか並びがいない状況だとそうもいかない」

 さらに、酒井氏から転売屋特有の仰天エピソードが飛び出した。

「午前9時開店の店に始発で並んだとき、開店まであと2時間ってところで猛烈に腹が痛くなって。だけどここで列を離れたら買えない。なんとかお腹を我慢してたんですが、あと30分ってところで限界に達して、漏らしてしまいました。後ろに並んでる子供が『あのおじさんウンコ漏らしたー!』って大きい声で叫ぶんですよ。もう最悪です

 酒井氏はその後、ウンコを漏らしたまま30分並んで商品を購入したという……。ウンコを漏らしても手に入れたいモノがあるのは、それだけで彼が生計を立てているからに他ならない。

 しかし店舗での辛いことはそれだけではないようだ。

「1人1個までって書いてある商品を何個も買うと、店側にマークされるんですよ。なので毎回レジに違う店員が来たタイミングで買ってるんですが、それでもやりすぎるとバレる。

 家電屋(ヨドバシ)でプレミア商品を1日27個買ったら売り場のリーダーらしき店員に『お客さん、いい加減にしてください。次買ったら出入り禁止にしますよ』って言われたんですが、無視してフロアを変えて買っていたら、スーツを着た社員が3人くらい出てきて、ダッシュで追いかけてきました。捕まったらグループ全店出入り禁止になるかもしれないと思ってこっちも全速力で逃げたんですけど、それ以来監視カメラの顔写真がレジ裏に貼られたみたいで、店員を変えても買えなくなりました。こういう追跡はザラにある。最近は作業着に着替えたうえで、作業靴で身長もごまかしてから買ってますね

 生活のためとはいえ、そこまでする執念のが転売屋。彼の言葉を聞いて、脱サラして転売屋になろうと思った人は思いとどまったのではないだろうか。

<取材・文/牧野俊>

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