SHOWROOM「声優発掘オーディンション」より
Business Journal

 プレスコ&アドリブという手法を用いたコメディアニメ『てさぐれ!部活もの』、リアルタイムモーションキャプチャーを用いた史上初の生アニメ『みならいディーバ』。そして2017年1月~3月に放送され、ミラクルヒットとなったテレビアニメ『けものフレンズ』(テレビ東京系)は、全国各地の動物園をはじめとする多種多様なコラボ企画や商品が生まれたほか、主題歌「ようこそジャパリパークへ」を歌ったどうぶつビスケッツ×PPPは、『ミュージックステーション』をはじめとする各音楽番組に出演、とうとう「Animelo Summer Live 2017」(さいたまスーパーアリーナ)にも登場するなど、いまだ勢いに陰りが見えない。

 その『けものフレンズ』などの制作を担当、新海誠、細田守というビッグネームに並びTwitterのフォロワー数もアニメ監督3位の注目の若手アニメ監督たつきを擁する「ヤオヨロズ」が“夢を叶える“ライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」と手を組み、「声優発掘オーディション」を開催中だ。

 もともとヤオヨロズは女優の真野恵里菜、声優の潘恵子、石井マークなど多数の芸能人が所属する芸能事務所「ジャストプロ」のアニメーション事業部だが、今後はさらに本格的に声優マネジメントに力を入れるということなのか、それとも『けものフレンズ』のような斬新なアニメを次々と打ち出すヤオヨロズだけに、新しい事業プランを思いついたりしたのだろうか。

 どんな狙いでオーディションを開催したのか、そして何より気になる今後のたつき監督作品に出演したりすることもあるのか。ヤオヨロズ株式会社取締役で株式会社ジャストプロ社外取締役でもある福原慶匡プロデューサーに尋ねてみた。


●「アニメ制作にかかわるすべてを自分で汗かいて理解したいんです」(福原P)

――声優オーディションを、というアイデアは、いつ生まれたものなんですか? ジャストプロさんはもともと声優マネジメントをやられていて、『けものフレンズ』にも小野早稀さんや本宮佳奈さんなど何人か出演していますが、所属声優を増やすわけではないんですよね。

福原慶匡PD(以下、「福原」) まず去年12月にもSHOWROOMのオーディションを1度やりまして、そのオーディションの当選者に『けものフレンズ』にも出演してもらったんですが、いろいろな方たちを見れて、面白いなと思っていたんです。

 加えて僕はアニメの制作に関連する事業を全部やりたいと思っているんです。アニメの制作・製作って、すごい数の人間がかかわってくるじゃないですか。中心にアニメを作るスタッフがいて、その先に声優さんや音響スタッフさんなどさまざまなスタッフがいる。もともと僕は音楽アーティストのプロデュースをやっていたんですが、僕がやっていたころは「着うた」がすごく流行っていたころで、着うたサイトのトップ画面を取るためにみんな必死に営業していたんです。でも今はもうスマホが主流になっていて着うたってあまり聞かなくなっていますよね。

 そういう時代の移り変わりを見て、そのカテゴリーのど真ん中をしっかり押さえないと、その時々の流行りに振り回されて、ビジネスモデルが変わったタイミングで事業の背骨がなくなってしまうと考えたんです。アニメであればアニメ制作、音楽であればアーティストをしっかり押さえたいなと。またアニメの場合は、かかわる人数が音楽よりもさらに多いですよね。

――制作スタッフさん、製作委員会メンバーなど、かなりいますよね。

福原 それだけ多くの人間の意思の疎通を図るのはすごく難しいことなんです。さらに失敗したときのリスクがアニメは大きい。ですから、どの会社も勝手知ったる気の合うスタッフさんを集めてチームを作ろうとされるんですが、加えてうちの場合は特殊な作り方というか……『てさぐれ!部活もの』は、作中の会話をすべてキャストさんがたにアドリブでお願いしましたし、『けものフレンズ』もかなりフレキシブルで、半分プレスコっぽい感じでしたし。我々の現場では声優さんに臨機応変な対応をお願いするケースが多いんです。

 当然やり方の違いに戸惑う声優さんもいらっしゃいます。そこで一緒にアニメを作っていく人を、なるべく僕らの仕事のやりかたを理解している人たちで固めたほうが、最終的な作品のアウトプットが良くなるのではないかなと。アニメの制作過程で一番お尻にある音声の収録=声優さんたちの仕事と、動画の制作をシームレスにつなぐことで、作品としてブレが少ないものを制作できるのでないか。そう考えたわけです。


●「より本音をぶつけ合えるチームにしたいなと」(福原)

――実写映画でもいわゆる●●組、有名監督の作品には必ず呼ばれるというスタッフさんや俳優さんがたがいますし、アニメでも監督さんによっては、ある程度スタッフさんや声優さんを固定されるかたがいます。そのように今後ヤオヨロズの新作を制作していく時に、小野さんや本宮さん、尾崎由香さんなどを配置するというだけでは物足りない?

福原 それで別にダメではないんですけど、選択肢はいくらでもあってもいいと思うんです、声やお芝居、年齢、性別の合う合わないはありますし。あと、キャリアがあるかたはそのかたのスタイルが確立されていますが、我々の現場は変わったことをしているので、そのスタイルとどうしても相性が悪い、というケースもあるんです。そういうとき、新人の方は先入観も少なくチャレンジ精神にあふれていますよね。

――キャリアの浅いかたは、目の前のことをがんばりますものね。

福原 もちろんベテランでも柔軟なかたもいるし、相性としか言い様がない部分もありますが。本当は現場で出会う前に、一度でも何かの形で会ってるとやりやすいんですよね。オーディションの場や顔合わせもありますが、人気があるかただと、事前顔合わせに参加するのもスケジュールが合わず難しいというかたもいらっしゃいますし。

――我々編集者がライターさんやカメラマンさんに仕事をお願いするとき、人となりを知っているとやりやすい、というのと一緒ですね。

福原 ああ、たしかに一緒でしょうね。加えて今のアニメは声優さんに求められている役割のウェイトが大きい。僕の立場ではその声優さんの持っている人気や集客力みたいなものも見てはいるんです、やはり表に出られる方々ですから。

 一方で、作品を作る上では声優さんは単なる1スタッフでもあるわけです。制作が進んでいくと、アニメーターさんが1人いなくなっても作品の雰囲気が変わることもありますから、そういう意味では声優さんにもチーム感を作れるという面を求めているのかもしれません。

――それこそ尾崎さんが所属するブシロードさんは、長年『ミルキィホームズ』シリーズを展開していて、『ミルキィホームズ』の4人は演技面での息の合いかたやフットワークの軽さがすごいですが、意識されていたり、目指しているという面もありますか?

福原 あの息の合いかたはいいですよね。

 ただ、一方で実際大きな会社さんだとチャンネルが違っているというか、グループ内にアニメ制作、音響制作、声優プロダクションを抱えていても、普通に別の法人として成立していて、セクショナリズム等がありうまくつながっていないケースもあるじゃないですか。

――Aという大企業の傘下に、Bというプロダクション、Cというアニメ制作会社があったとして、Bの声優さんがCの作品にばかり出ているかというと、まったくそんなことがなかったりもします。

福原 そうなんですよね。同じ企業の傘下ではあるけど、それぞれ別々の法人でつながりが薄いところも多い。もちろん同じグループの作品に出演しつづけることのプラスもマイナスもあると思いますが、ウチの場合は少人数で全部を見ていますから、つながりの良さは保てると思います。

 思いついたアイデアを、スピード感をもって実現するためには、つながり、以心伝心でもって物事を回していくことが大事ですし、そういうところでアニメのクオリティはあがっていくんですけど、それは組織をまたがることによって難しくなっていくんですよね。やはり組織同士になるとマナーやルールは守らなくていけませんから。

 でも、習慣的に「できない」と思っているだけのことも多いんです。そういったところでも踏み込んでいかないと成果を上げづらいというか、常識的に考えて普通にやっていたら、ウチは大きな会社に勝てないんですよね。

――『けものフレンズ』が大ヒットになった要因はいくつもありますが、たつき監督や福原さんを中心に少人数でフットワーク軽く動いていたというのも、要因の一つとして挙げられると思いますが、声優さんにも同じようなノリを持ち込みたい?

福原 そうですね。先ほどのたとえ話に乗っかると、仲がいいカメラマンさんだったら「ごめん、今から収録なんで撮影手伝って!」とお願いできるし、「しょうがないな、わかったよ」と言ってもらえますけど、初めましての人にそんなこと言ったら、「なんて無礼な奴だ」となりますよね。

――往って来いだと、お互いわかっているから言えるわけですものね。

福原 そうそう。ですが、その急な1時間や数十分の手間をかけるかどうかで、クオリティが変わるときがあるんです。今はどんな大手の制作会社でもクオリティ向上のため、(納期を)落としているような状態なので、ウチみたいな会社が、クオリティ向上のための工夫の一つをフットワークの軽さに求めることも、ウチなりの企業努力と思っています。

 もちろんスケジュールをしっかりこなす、きちんと段取ることが大前提ですが、絶対に面白くなる! というアイデアがひらめいたら、そっちをやりたいなと思うんですね。そのときにやっぱり、より物事を率直に言える、応えられるチームにしたほうが最終的にはクオリティはあがると思いますから。


●「フリーでもジャストプロでも他事務所でも、やりやすい形に」(福原)

――オーディションを始めてみて、どんな印象、手応えを感じていますか?

福原 現段階で個々の印象に触れるのは難しいですが、全体的な印象を話すのなら、まずは皆さんすごく前向きだなというのがまずひとつ。あと、現在各オーディション参加者がSHOWROOMで各自映像を生配信中ですが、今の人たちはしゃべりが達者ですよね!

 ニコ生がはやっていたときにやったことがあるんですが、1人で画面に向かってぺらぺら話すことができなかったんです。でも参加者の皆さんは上手で。それぞれがどうというよりも、ネットネイティブなんだな、世代が違うんだなとジェネレーションギャップを覚えました(笑)。

――(笑)。スマホで写真も映像も、撮り、撮られ慣れているんでしょうね。

福原 ただ、逆になんか上手すぎてこなれていて、あざとく感じるというか。YouTuberとかを参考に、喋りのテンプレートをなぞっているだけ、というように感じるんです。ただ、僕は別企画で、AbemaTVで渡辺直美さんと一緒にオーディション番組(『渡辺直美の女子高生オーディション!』)もやっているんです。そこで感じたんですけど、アーティストでもクリエーターでも、おもしろいなと外から見ていて思える人ほど、新しいメディアに食いつく、そういう新規のチャンネルに対して抵抗がないというか。

――合わないな、ということで後々やめたりはしても、とりあえずSNSとか積極的に乗り出してみたりする傾向にあるように感じます。

福原 アンテナが鋭い人、若い世代の人は新しいチャンネルに対して肯定的な傾向がありますよね。ウチはたつき監督もそうですけど、手書きアニメがまだまだ主流のなか、CGをチョイスする会社なんです。ウチみたいな会社にはまる声優さんというのは、SHOWROOMのようなメディアでこそ探せるのかなと。AbemaTVで音楽のオーディションをやっているのも同じ理由ですね、新しくて先進的なものに対して、肯定的という感性を持った子を見つけられるのではないかと期待しているわけです。

――最終選考が9月下旬に行われる予定です。勝ち残った人はヤオヨロズ作品に出演ということですが、この場合ジャストプロさんに所属するのか、それとも外部声優事務所さんに預ける形になるんでしょうか?

福原 そこはあまり考えていませんね、せっかくですから今後も一緒に仕事したい、そういう環境になったらいいなというくらい。ずっとフリーでも、ジャストプロに所属してもらっても、他社さんでもいいですし。

 初めての試みですからどういう結果になるかわからない部分もありますが、僕は普段お仕事を声優さん、声優事務所さんにお願いする立場ですけど、素晴らしい方々が沢山いるので、そういう事務所を作ることができればいいなとざっくり考えているところです。もちろんヤオヨロズ以外の作品に出演したいとオーディションを受けるのもありです。

――意思疎通がしっかりできて、一緒に作品を作っていければ、形はどうでもいいということですね。

福原 そうですね。僕らの事業、アニメ制作というのは、100人くらいでバケツリレーするような仕事だったりするんです。途中で一回誰かが水をこぼした時点で、その水はもう増えない。列の最初に満タンの水を持っている状態がアニメ会社で、それを誰かに渡すたびに少しずつチャプチャプこぼれていく。僕は最後まで水をこぼすことなくリレーしたい。

 ウチは制作スタッフの数をめちゃくちゃ絞っていますから、3人ぐらいで100人分のバケツリレーをしている感じなので、あまりこぼれていない。どうしてもこぼれる場所というのは外部制作会社にお願いするセクションになってくるので、それを防ぎたいんですよね。

――お話を聞くまでは、ビジネスマン・福原が「声優マネジメントでも一旗揚げてやる!」と野望に燃えているのかなと考えていたんですが、実はアニメ制作プロデューサー・福原として、よりよいアニメを制作するための企画だったんですね。

福原 そうですね。ただ、その2つはほぼ同じというか、高いレベルで野望が実現したらイコールになってくるのではないかと思います。自分のところにものすごくいい声優さんがいて、うちの会社の制作方針を理解していて出演するとなったら、それはアニメ制作会社としても声優プロダクションとしても成功ですからね。

 ただ、ヤオヨロズの作品には一切出演していない、求めるものがまったく違う役者だらけなのに、ほか作品で成功しているみたいな事務所になったとしたら……それはそれでビジネスにはなるでしょうけど、腑に落ちない気持ちになるでしょうね(笑)。そこはできればくっつけていきたいと思いますし、同じ人間が両方を仕切っていますから、ベースのマインドがどんどん外れていくということはないと思います。

――読者やファンは、たつき監督の次の作品に出られるのか、どんなキャラクターを演じるのか、というところも気になっていると思います。

福原 今のヤオヨロズはいろいろオリジナルの企画を仕込んでいるんですよ。たつき君が絡まないものも、絡むものも。この前もたつき君がTwitterで新作の映像を1本出していましたけど。

――8月15日、Twitterに監督がアップした「♯傾福さん」ですね。

福原 そうですそうです。あれは、ヤオヨロズというよりは、たつき君のやっている自主制作サークル「irodori」の作品というか、irodoriが原作、ヤオヨロズが制作みたいな形なんですけど。本当のことをいえば、あの映像も氷山の一角で、いろいろなことをやっていますから。いろいろな作品を作るので、沢山かかわっていくことができればと思っています。

――『けものフレンズ』という大ヒット作がありますが、ヤオヨロズにはまだ弾が多数あって、選考を勝ち抜いた人には合致する役柄、キャラクターをどんどん積極的に演じてもらうと。

福原 そうですね。かといって、たとえば、着うたを流行らせるためにこのアーティストをデビューさせました、というような目的と手段がひっくり返るようなこと、オーディションを勝ち抜いた声優さんを売り出したいがために、アニメを制作するということはないです(キッパリ)。そういうあべこべな事をやるとなんかクリエイティブの神様に見捨てられちゃうんですよね(笑)。

(取材・文=編集部)

●ヤオヨロズ公式サイト
http://yaoyorozu.info/

●オーディション
https://www.showroom-live.com/campaign/yaoyorozu_seiyu_0501

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