エディさん(画像はニコニコ動画から)
ねとらぼ

 スーパーファミコン版の「ファイナルファンタジーVI(以下「FF6」)」発売から、23年が経過しました。多くの人にとっては既に“過去の名作”となってしまった同作ですが、2017年現在になってもいまだにやりこみを続け、視聴者を驚愕させる動画を投稿し続けている1人のプレイヤーの存在を皆さんはご存じでしょうか。

【画像】エディさんの手によってバグりまくったFF6

 そのプレイヤーの名は、「エディ」さん。

 ねとらぼでも過去にRTA(※1)やTAS動画(※2)でご紹介したエディさんですが、既に何もかもやり尽くされていたと思われていた「FF6」をなぜいまだにやり込み続けているのか。「FF6」の何がエディさんを突き動かしているのか。話を聞いてみました。

(※1)RTA:リアルタイムアタック……ゲーム開始からクリアまでの時間の早さを競う(※2)TAS:ツールアシストスピードラン……ツールによりフレーム単位の操作をしてクリアまでの早さを競う

「ここで飛空艇バグを起こします」

 その前に、まずエディさんがどれだけすさまじいやりこみプレイをしているのか、いくつか先にご紹介いたしましょう。彼の代表的な動画といえば、やはり「極限低歩数攻略 」。

 “低歩数攻略”とは、その名の通りできるだけ少ない歩数でクリアすること。「FF6」ではメニュー画面に今までの「歩数」が表示されるようになっており、この数字がどれだけ少ない状態でクリアできるかを競うというものです。

 “低歩数クリア”の難しいところは、レベルが上げられない、アイテムも取れない、店の施設も利用できないなどなど、シナリオ進行に合わせてただ真っすぐ進むしかないところ……というのは“普通の”低歩数クリアでの話。エディさんの「極限低歩数攻略」は、ゲーム中に存在するバグ技をフル活用した、異次元の攻略チャートとなっていました。

 主に活用しているのは、2011年頃に海外で見つかった“飛空艇バグ”。これは、ゲーム後半に入れるようになる「魔大陸」で特定の行動を取ってから全滅すると、最後にセーブした場所から飛空艇に乗ってゲームが再開するというもの。この現象を利用し、序盤からノーセーブで進めて“飛空艇バグ”を起こすと、いきなり飛空艇を使えてしまいます。

 飛空艇に乗っている間は歩数がカウントされないうえ、全滅すると歩数などは直前のセーブまで巻き戻され、かつレベルは引き継がれるため、“低歩数クリア”においてはこのバグが無双の大活躍を見せることに。普通に進めた場合とは桁違いに歩数を節約できます。

 ただし、飛空艇入手前にバグを起こした場合は着陸と同時に飛空艇が消えてしまうため、イベントをクリアするたびにノーセーブでシナリオを魔大陸まで進めてバグを起こすというとんでもなく時間のかかる作業をこなすハメに。さらに、シナリオの進行順を無視すると仲間キャラが“ティナ防衛イベント”のモーグリ(一部キャラは魔列車の「ゆうれい」)に置き換わってしまい大幅に弱体化したり、場合によってはフリーズしてしまいます。

 そのためこの攻略では、「ほとんどまともにアイテムや装備を取れないまま」「大幅に弱体化した味方を引き連れ」「少し進むたびに数時間かけて“飛空艇バグ”を起こし」進んでいくという大変エクストリームな内容となりました。ちなみに、12人の仲間を4分割して進むラストダンジョンは、モーグリ3匹とゴゴのみという意味不明なパーティで進み、ラスボスはゴゴ1人でとんでもない時間をかけて撃破します(モーグリはバグるため参戦不可)。

 これらの果てしなく厳しい縛りの末に、エディさんは5219歩でクリアを達成しました。2014年6月の出来事です。これらの動画をもって、「FF6」にエディありと知らしめました。

 なお、その後新しいバグが見つかり、低歩数攻略の更新が確実に。4479歩でのクリアを目指し、2017年4月23日から……現在……再走中です……!!

 なお、さまざまなバグを駆使し、オープニング終了直後にエンディングが始まる「0歩クリア」(クリアタイム9.8秒)も実現しています。もうこんなのゲームじゃないよぉ……。

狂気の3面作戦

 さらに、エディさんは現在、「飛空艇バグ有り高ステータスデータ作成」シリーズと、「低やりこみ度攻略」という2つの長編やりこみ動画を製作中。もちろん、どちらも「FF6」のとんでもないやりこみシリーズです。

 「飛空艇バグ有り高ステータスデータ作成」は、レベルアップ時に魔石を装備しているとステータスが上昇するシステムを“飛空艇バグ”で最大限活用し、通常のプレイではありえない高ステータスなデータを作成するやりこみ。こちらは“低歩数”と違い低レベルなまま“飛空艇バグ”を起こす必要があるため、1回“飛空艇バグ”を起こすたびに10数時間を要するとのこと。

 「低やりこみ度攻略」は、PS版の追加要素である「やりこみ度」の数値をできるだけ低い状態のままクリアするというもの。一般的な低レベルクリアに加え、魔法とオリジナルコマンドの習得も一切できないため、非常に進行が厳しくなっています。なお、こちらも相変わらず“飛空艇バグ”でとんでもない時間を毎回消費しているのですが、Part3にしてモグを“全滅レベルアップ”させてしまっていたという致命的なミスが判明。現在……! 最初から……! 再走中です……!!

 このように、一般人ではとても達成できないような「FF6」のやりこみシリーズ動画が、現在3つ同時に進行中となっています。特に、低やりこみ度動画の最初からやり直しは、全視聴者が「ああああああ!」となりました。なぜ心が折れないのか。

●またエディさんがFF6壊した

 その他、エディさんはFF6のバグを活用した怪現象動画を多数投稿。あらゆる手を尽くして「FF6」の世界にカオスを呼び起こしています。ほとんどの動画がモーグリや「ゆうれい」まみれになっているのが特徴的。世界もシナリオも崩壊している……。

エディさんに話を聞いた

 エディさんは何を思い、どのような生活のなかで「FF6」のやりこみを続けているのか。話を聞いてみました。

―― 「FF6」との出会いについて教えてください。

エディ:「FF13」をやった後なので2010年です。18歳でした。「FF13」をクリアした後にFFシリーズを一通りクリアしようと思いまして、PSアーカイブスで「FF1」から順番にやっていって、FF6に出会いました。

―― 初めてクリアしたときの感想はどうでしたか。

エディ:初回は散り散りになって敗北を喫した後、再び集まってリベンジする展開がとても好き。ケフカのような小物キャラが成り上がりでラスボスになるのも、意外性があって良かったです。

 現在は、バグらせて遊ぶのが楽しいです。

―― やりこみを始めたきっかけは何かあったのでしょうか。

エディ:“飛空艇バグ”です。

 それまでは既存の攻略をまねたりなぞったりするだけでしたが、“飛空艇バグ”の存在を知って未知の領域を自分で開拓していく楽しさを知りました。

―― 「FF6」はどのハードのものを、何本ずつ持っていますか。

エディ:SFC版2本(SFCとWiiUVC)、PS版2本(FFコレクションとPSアーカイブス)、GBA版1本(WiiUVC)、スマホ版1本(iOS)の計6本です。現在new3DSVC、ミニスーパーファミコンを購入予定です。

―― VCやアーカイブス版も持っているのは、VC版限定のバグなどもあるからでしょうか。

エディ:データを複数用意できるからですね。スケッチバグや52回全滅バグは調査用のデータを複数用意しておくと便利なのです。

―― どのバージョンのFF6がお気に入りですか。

エディ:やりこみじいさんのあるPS版も捨てがたいですが、52回全滅バグやタイマーでいろいろ遊べるSFC版が1番ですね。

―― 52回全滅など、バグの存在を知ったときの感想はどうでしたか。

エディ:こんなことよく思い付くなぁと感心します。取りあえず試してみたくなります。

―― 何回ぐらいエンディングを見ましたか(バグっているものも含めて)。

エディ: 多分60回は見てるのではないでしょうか。1年前のTASの最適化の際に、エンディングへの到達を確認するときに何度も見たので……。フルで見た回数なら20回強といったところだと思います。

―― “低歩数”や“低やりこみ度”で、再走が決まった瞬間、何を思いましたか。

エディ:さらに記録を更新できる! と喜びました。再走は大変ですが、それ以上に新バグへの興味関心や記録更新の事実の方が大きいので、意外とダメージはありません。

 ただ、低やりこみ度は別です。あれは完全に自分のミスが招いた結果なので、再走はかなりショックでした。GWを丸ごとムダにした傷はいまだに癒えません……。

―― よく「またFF6壊した」とコメントが付きますが、実際にデータやソフト自体が大変なことになったりしたことはありましたか。

エディ:ないです。どんなにバグってもハードリセットすれば元通りになりました。

―― 週に何日ぐらいFF6を起動しますか。また、1回の平均プレイ時間はどのくらいですか。

エディ:週3日、平均2時間くらいでしょうか。実際にプレイするよりも頭でいろいろ考える時間の方が多いです。

―― やりこみ1回の完走にどれくらい掛かっていますか。

エディ:私の場合、やりこみは動画投稿と並行、しかも複数同時に行うので、完走には年単位でかかってしまいます。

―― 具体的にどのような流れで行われているのでしょうか。

エディ:頭でなんとなくのチャートを作ったら、そのまま本走です。試走はしません。本走は動画投稿と並行して気が向いたときに行っており時間がかかります。その間に気になったところを下調べして、作ったチャートを少しずつ練り直していきます。

 段階を踏んでやっているわけではないので、それぞれにどれくらいかかっているのかは何ともいえません。

―― 「FF6」の何がエディさんをここまで駆り立てるのでしょうか。

エディ:「FF6」はまだまだ未開拓であり、いまだ新発見が絶えません。それを自分で開拓していくのが楽しいのです。

―― 「FF1」から順番にクリアしていったとのことでしたが、最終的に「FF6」のやりこみに行き着いたのはなぜでしょう。

エディ:FF6ばかりやりこむことになったのは「やりこみじいさん」のせいです。こういったやりこみ表などは可能な限り理論値を目指したくなる性分なのですが、やりこみじいさんは各項目の最低値まで記録するものだったので、最低レベルやら最少歩数まで目指す羽目になりました。

 飛空艇バグの調査をする気になったのも「やりこみじいさんの最低記録を更新できるから」ですね。1〜5にはやりこみじいさんのような要素がなかったのでクリアするだけで終わってしまいました。もしやりこみじいさんがなければ、FF6も一度クリアするだけで終わっていたと思います。

―― 他のシリーズ作品で挑戦しようと思ったことや、その予定などはありますか。

エディ:他のFFシリーズもなにかやってみたいとは思うのですが、なぜかすぐFF6の方に戻ってきてしまって……。

―― 今後最も開拓の余地がありそうだと感じているのはどのバグでしょうか。

エディ:データのぞき見によるタイマー再作動現象はまだまだ調査不足であり、52回全滅バグに頼らなくてもなにかできるのではないかと思っております。

※編集部注:「データのぞき見によるタイマー再作動現象」とは、世界崩壊後のツェンの崩れる家(マッシュを仲間にするところ)のタイマーをバグで外に持ち出すことでさまざまな怪現象を起こせるもの。タイマーを持ち出してセーブしたデータをロード画面で選択→キャンセルして別のデータを読み込んだり「ニューゲーム」を選択すると、イベントのタイマーが別のデータでそのまま発動し何の脈絡もなくマッシュが突然の死を迎える。

―― 作成した攻略チャートの画像などを見せていただけますか。

エディ:チャートは画像や文章という形では残していません。スマホ版低レベル&低歩数攻略用に作った幻獣防衛戦の経験値の振り分け表なら残っていました。

―― 現在やりこみシリーズを3つ同時に並走していますが、途中で混乱してくることはありませんか。また、どのタイミングでシリーズを進めるようにしているのか、方針のようなものはありますか。

エディ:なんだかんだやることはかなり異なっているからでしょうか、不思議と混乱はありません。動画の編集、投稿は気が向いたときにやっています。特に方針はありません。

―― 完走済みや現在進行中のものも含め、最も過酷なやりこみや挑戦はどのシリーズだと思いますか。

エディ:高ステ作成はかなり大変な方だと思います。崩壊前の低レベル飛空艇バグが難しいのはもちろん、崩壊後は育成、アイテム収集、あばれる習得にひたすら時間がかかりますから……。

―― このタイミングで初めてのTASに挑戦されたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

エディ:TAS制作はずっと前から考えていたのですが、ROMデータの入手方法がどうにもよく分からず踏ん切りがつきませんでした。最近になって吸い出す方法を知って、これならできそうだと思い制作に踏み切ったというわけです。

―― RTAやTASについて、ゲーム本来の遊び方の延長なのか、それとも全然別の遊びなのか、どのように捉えていますか。

エディ:どちらもゲームの遊び方の一つと思っていますが、メモリ破壊とかやり出したらもうゲームで遊んでいるとはいえないかもしれません……。

―― RTAやTASについて、楽しさと苦痛、どちらが上でしょうか。

エディ:RTAは私にはかなりつらい競技です。ちょっとしたミスでもやる気を失ってしまうので、ミスがあって当たり前のRTAで自分が納得できるタイムを出すことはできないんじゃないかと思います。

 TAS制作はとても楽しかったです。時間をかけて1f短縮し、着実にクリアタイムを早めていく作業は性に合っていました。

―― 「FF6」関係で、注目している走者や投稿者はいらっしゃいますか。

エディ:YouTubeに動画を投稿しているwantan03さん。この方は52回全滅バグを発見したり、長年原因不明だった狂信者の塔フリーズバグの再現方法を解明したりととにかくすごい人です。またなにかしでかすのではないかと監視しております。

 今なおやりこみを続けるエディさんは、やはり「FF6」に対して並々ならぬ時間を掛け、思いを込めていました。「まだまだ未開拓」ということなので、今後の展開にも期待大です。

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