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岡山大学は9月13日、通常の氷よりも密度が低い氷の結晶構造について、分子シミュレーションによって網羅的な調査を実施し、いくつかの安定な結晶構造が存在することや、理論的に予測される低密度氷「エアロアイス」には密度に下限がなく、空気よりも軽い氷も作りうることを発見したと発表した。

同成果は、岡山大学大学院自然科学研究科の松井貴宏 氏、平田雅典 氏、同大異分野基礎科学研究所の矢ケ﨑琢磨 講師、松本正和 准教授、田中秀樹 教授らの研究チームによるもの。詳細は米国の学術誌「The Journal of Chemical Physics」に掲載された。

氷を圧縮すると、だんだん密度が高くなり、次第に結晶構造が変化する。常圧で、冷凍庫でできる氷は、雪と同じ六角形の分子配列を持つ氷I(密度 0.92 g/cm3)だが、2000気圧を加えると氷IIIに変わり、約4000気圧で氷Vに、約6000気圧で氷VIへと構造が変化する。実験研究により、氷Iより高密度な結晶は13種類見つかっている。逆に、負の圧力で氷を伸長した場合にも、氷の構造は変化すると考えられており、これまで発見されている氷Iよりも密度の低い氷は2種類であった。そこで、研究チームは、ほかに種類がないかを調べた。

今回の研究では、負圧の氷構造を実験で調査することは極めて難しいため、理論的にこの問題の予測を試みた。氷と幾何構造が良く似ている、ゼオライトという酸化ケイ素無機結晶の構造をもとに、新しい氷の構造を設計し、分子シミュレーションによって、それぞれの構造の安定性を評価し、与えられた圧力で1番安定な氷を網羅的に調査した。調査した構造は300種類におよび、そのすべてが氷Iよりも低密度(0.5~0.9 g/cm3)であることが示された。

その結果、ある種のゼオライトの構造をもとに設計した氷は、実験で発見されている低密度の氷よりも密度が低く、しかも安定になりうることが判明。また、これらの低密度で安定な氷の構造の特徴をもとに、仮想的な氷の構造を設計したところ、さらに低密度な氷もありうることを示したという。この氷の構造は、エアロゲルと呼ばれる酸化ケイ素素材に似ていることから、エアロアイスと名付けられた。エアロアイスの密度は非常に低くすることができ(0~0.5 g/cm3)、「100xFAU」と名付けられたエアロアイス結晶の密度は、空気よりも軽くなるとしている。

なお、今回の成果について同研究グループでは、現実にエアロアイスを作る方法は今のところ不明だが、理論上は氷の密度に下限がないことが示されたことで、今後も実験的に新しい低密度な氷を見付け出す挑戦が続くと期待される。また、水が作りうる結晶構造が(現実に実験的に作られた17種類に比べて)多様であることが明らかになったことから、ゼオライトやカーボンナノチューブ、生体高分子などに存在する、ナノサイズの空孔にとらえられた水の構造や機能を理解する上での手掛りになるとコメントしている。
(釣見駿)

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