VR ZONE SHINJUKUの人気アトラクション「エヴァンゲリオンVR The 魂の座」
ITmedia ビジネスオンライン

 さまざまなVR(仮想現実)関連機器やコンテンツが発表され、「VR元年」と呼ばれた2016年から1年が経過した現在、日本のVR市場はどこまで発達しているのだろうか――。

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 IDC Japanの調査によると、2017年上半期のAR(拡張現実)・VRヘッドセットの出荷台数は11.5万台で、既に16年通期の出荷台数を上回った。ただし、その過半数はソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション 4」向けヘッドセット「PlayStation VR」が占めており、「消費者レベルでのAR・VR体験者の数を増やすには、依然として課題が多い」という。

 しかし昨今、こうした状況を打破すべく、VRアトラクションに特化した日本のアミューズメント施設が相次いで誕生している。

 その代表例が、アドアーズが16年12月から運営する「VR PARK TOKYO」(東京・渋谷)と、バンダイナムコエンターテインメントが7月にオープンした「VR ZONE SHINJUKU」(東京・新宿)だ。両施設は開業直後から話題を呼び、首都圏を中心に高い人気を獲得している。

 これらの施設が成功している要因は何なのか。VRに関する展示会「Japan VR Summit 3」(東京ビッグサイト、10月11〜13日)で講演した、アドアーズの石井学社長らのセッション「日本型アーケードVRは世界に通用するのか?」を取材した。

●人気の秘密は?

カップルに人気の「VR PARK TOKYO」

 石井社長によると、VR PARK TOKYOの顧客層は20代が約60%、30代が約20%と若者世代が中心で、男女比はほぼ同数。VR機器の導入前は通常のゲームセンターとして運営しており、当時は男性客が8割を占めていたというが、こうした状況を改善できたとしている。7月には来場者数が累計5万人を突破した。

 石井社長は「若者の街・渋谷という立地の特性が生きた。デートコースの一環でVR施設を訪れるカップルが増えている」と自信を見せる。

 シューティングゲーム「ゴーストアタッカーズVR」や、ライドアトラクション「ソロモン・カーペット」など、2人での協力・同時プレイが可能なアトラクションをそろえたことが若いカップルからの人気につながっているという。

 当面の課題は、来店者の約9割を新規顧客が占めており、リピーターが少ない点。今後は“やりこみ度”の高いゲームタイトルの投入などの改善策を検討中という。

「インスタ映え」狙う「VR ZONE SHINJUKU」

 VR ZONE SHINJUKUのコンテンツ開発を担ったバンダイナムコエンターテインメント AM事業部の小山順一朗エグゼクティブプロデューサーによると、同施設の顧客層も20〜30代が中心。カップルが多い点も共通しており、カップルが全体の35%を占める一方、1人での来場は4%未満にとどまっているという。

 「マリオカート」「ドラゴンボール」「新世紀エヴァンゲリオン」など人気IP(知的財産)を利用したコンテンツが人気を博しているほか、プロジェクションマッピングを駆使した内外のインテリアが“撮影スポット”として話題を呼び、カップルが施設内でのツーショットをInstagramに投稿するケースも多い。

 「カラーチケット」と呼ぶ独自のシステムも特徴だ。1日券で利用可能なアトラクションを4項目に分類し、ユーザーは各項目から1種類を選んで遊ぶ仕組みで、小山氏は「再来店を促進するため、わざと全てのアトラクションを遊べないようにした。この施策のおかげで、リピーターの獲得につなげている」と説明する。

ホスピタリティーは“諸刃の剣”

 両施設では、スタッフが顧客のVR機器の装着を手伝うほか、機器の下に装着する紙製のマスクを配布し、機器の衛生面を保つ取り組みも行っている。紙マスクには、女性客の化粧崩れを防ぐ効果もあるという。

 こうしたホスピタリティーの高さは訪日外国人客からの支持にもつながっているというが、アドアーズの石井社長は「サービスの維持には人件費がかかる。当店では、約100坪の店舗に10数人のアルバイトを配置しているが、通常のゲームセンター運営よりもかなり多くのコストがかかっている」と難しさを話している。

●VR施設は「13歳問題」にどう対応すべきか?

 両施設は20代以上のカップル客が多い一方、一般的なゲームセンターに多いはずの10代のユーザーが極端に少ないという課題がある。その理由は、VR業界全体の課題とされている「13歳問題」だ。

 13歳問題とは、「13歳未満の子供は3D映像の視聴によって立体視の力が弱まり、斜視になるリスクがある」とする医学的な説があるため、業界内で13歳未満の客へのVR機器利用を自主規制する流れがあることを指す。

 両施設でも年齢制限を設け、13歳未満の入場を禁じているが、その影響で子供やファミリー層の獲得は苦戦している。バンダイナムコエンターテインメントの小山氏も「家族に人気の『マリオカート』などを子連れ客に提供できない点は痛い」と話す。

 こうした課題に対し、講演のモデレーターを務めたロケーションベースVR協会の安藤晃弘 代表理事は「13歳問題が日本のVRの発展を阻害している点は否めない。海外のVR施設では子供のプレイが認められるケースもあるため、日本でも時間制限を設けた上での利用を認めるよう業界に働きかけていきたい」と話す。

●新タイトルを続々投入で市場を活性化

 こうした課題はあるものの、両施設は今後、発展に向けた新施策を展開していく予定だ。

 VR PARK TOKYOはさらなるカップル客獲得に向け、10月16日からグリーと共同開発した新アトラクション「ようこそパニックマンションへ VR」の提供をスタートする。カメラで撮影したユーザーの顔写真をゲームキャラのアバターに再現できる機能や、“ユーザーどうしが近づくと銃の威力が上がる”機能を搭載したカップルならではのコンテンツで、1カ月当たり2500人の利用を見込んでいる。

 2店舗目のVR施設の出店も計画中。利益効率性の向上に向け、安価なコストで制作できるコンテンツの大量導入も検討しているという。

 VR ZONE SHINJUKUでは、人気アーケードゲーム「機動戦士ガンダム 戦場の絆」のVRバージョン「機動戦士ガンダム 戦場の絆 PROTOTYPE Ver.」を11月10日から期間限定での試験運用を始める。根強いファンを持つ同タイトルの投入によって、さらなるリピート客の獲得を図っていく。

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