NHK首都圏放送センター記者2013年過労死した佐戸未和さん(当時31)の両親が10月13日、「私たちの思いは正確には伝えられていない」と東京が関の厚労省記者クラブで会見を開いた。

冒頭、会見を開いた経緯について両親は、「各メディアからNHKの発表内容に基づいた報道がされてきましたが、私たちの思いが正確には伝えられていないことや、事実誤認もあります。未和と同じ記者の皆様には、私たち夫婦の口から直接お話をさせていただいた方が良いと考えました」と説明した。

局内で表されず、募る不信感

両親によると、毎年、未和さんの命日の前後にかけては、親交のあったNHK同期や同僚が多く見舞いに訪れるという。しかし彼らからは、「過労死事実について局内で伝えられていない」「NHKの働き方革が進んでいるのは、未和さんの過労死があったからだということは知られていない」というばかりを聞いた。

「不名誉な案件として出さない方針にしているのではないか。過労死がなぜ起こったのか局内で自己検証もされておらず、責任をとっていないのではないか」。未和さんの死が、NHKの働き方革推進の礎になっていることを知って欲しいと強く感じていたという。

未和さんの死が明らかに伝わっていないーー。両親がその思いを強めたのは、今年に入ってからだ。未和さんのは「全過労死を考える家族の会」を通じて会合やシンポジウムに参加する中で、取材に来ていた記者たちに「自分のNHK過労死でなくなった」と打ち明けた。その際にNHK記者もいたが、「そんなことがあったのか」と初めて聞く話に驚愕していた。

NHKで長時間労働や過労死を実際に取材する報道現場の人でさえ知らない。を上げなければ未和のことはNHKで埋もれてしまう。それは許せないと感じた」。

さらに、NHKの対応も拍をかけた。毎年未和さんの命日1か前には、勤務していた首都圏放送センターから電話があり、命日の訪問について連絡があった。しかし、今年は4日前になっても何の連絡もなかった。「来て欲しいということではないが、未和のことが局内で周知されていないのではないか」。代理人の川人弁護士にそう連絡をしたところ、川人弁護士を通じて、ようやくNHKから両親の元に連絡が来た。

NHK電通の過労自殺事件をはじめ、特番を組んで長時間労働による過労死問題を熱心に報道していた。その一方で、未和さんが過労死したという事実は局内に伝えられてこなかった。そういった特番を見ながら、両親のNHKに対する不信感は募っていった。

NHKは自らに起こったことは棚上げにしたままではないか。NHKが未和の過労死を忘れず、遺族の心情に寄り添ってくれていると感じたことはない」。未和さんの死に摯に向き合わないNHKに、怒りのを向けるようになった。

2014年お詫びを申し上げた」は事実ではない

NHK報道に対し、2014年の労災認定後、謝罪したと説明しているが、両親は「事実ではありません」ときっぱり答えた。

両親によると、2014年7月命日に、当時の首都圏報道センター長が弔問し、文書を出したという。しかしその内容は、「一周忌を迎え、謹んで哀悼の意を評しますとともに、ご遺族の方々にお悔やみ申し上げます」などと始まり、最後まで一言のお詫びも記載されていなかった。

「遺族が表を望まない意向を示していた」は事実ではない

NHKは未和さんの過労死表について、「当初は遺族側から表を望まないとの意向を示されていたので、表を控えていた」と説明していた。しかし、それに対して両親は、「事実ではありません」とはっきりと述べた。

未和さんのは「未和の急死後、妻が体調を崩し、私も24時間り付くという状況が続いていた。そうした状況だったので、川人弁護士はそっとしておいて欲しいと(NHK側に)伝えたと思う」。

また川人弁護士は、「労災認定された時点で記者会見を開くということは(遺族の状況から)考えていなかったので、『(そのような記者会見を開くことは)考えていない』という趣旨の話はした。しかし、表しないで欲しいという申し入れをしたことは全くない」と説明した。

表にいたるまでの経緯

両親は未和さんの過労死について、NHKの中での周知徹底を望んでいた。内部で表されればその情報が外部に漏れ、外部から未和さんについての記事が出されることも予想された。そこで、「きちんとした取材もせずに記事が出てくるのは私たちの思いとは違う。NHKとしてきちんと表して欲しい」と表に向けての話が進んでいった。

しかし、NHKから両親に示された表内容は、

・自分たちは労基署から法律違反という摘は受けていない

・みなし残業ということで、記者に残業時間という概念はない

お詫び2014年8月にやっている

といった内容を含んだものだった。到底承諾できるものではなかったため、打ち合わせを重ねた。

表までにNHKは3回打ち合わせに来たが、その中で放送の仕方について未和さんのが尋ねたところ、「々はプロの集団ですからプロに任せておいてください。10月3日までにドラフトを送ります」と言われたという。

そうして内容のすり合わせを行っていたが、未和さんの過労死事実10月4日突然表されることになった。実はこの4日午後にも、両親はNHK表内容について打ち合わせをしていた。内容で折り合いがつかない部分もあったため、両親は後日また話し合うというつもりでいたが、自宅に帰った夕方に突然今日の9時のニュースに出します」とNHK側から連絡があった。

その理由について、「事実かどうかは分かりませんが、未和さんの件で数社から取材申し込みがあったため」と説明があったという。今回の表の仕方について、未和さんのは「9時のニュースの最後に2分ほどちょろちょろと流された。がっかりしました。今まで打ち合わせしてたのはなんだったのだろうか」と振り返った。

「未和のことを自分のこととして考えて」

過労死を繰り返さないために、何を望むかーー。会見の最後にそう問われた未和さんのは、その場に集まった記者にこう問いかけた。

「未和のことを自分のこととして考えていただき、過労死で亡くなるいうことは絶対ないようにして欲しい。1分でもく(選挙の)当確を出すことが、本当に大事なことか原点に立ち戻って考えて欲しい」

弁護士ドットコムニュース

「私たちの思いが正確に伝えられてない」NHK記者過労死、両親が反論会見