子育て世代は、全世代の中で最も住宅購入に悩む世代です。

本当に持家は必要? 子育て世帯における「一生賃貸」という選択

持ち家か賃貸かの議論については明確な答えがなく、今後も永遠の課題になるのでしょうが、世界の中でも日本人は持ち家に対する執着心が強く、「いつかは持ち家」と考える人が多いと言われています。

持ち家を選択するなら少しでも早い方が良いと、頭金ゼロでも購入に踏み切る人がいる中、頭金ゼロ購入は危険と考える人がいるのも確かです。

前者と後者では、どちらが最終的にお得になるのでしょうか。

物件価格3,000万円、固定金利1.3%、借入期間35年という条件のもと、頭金ゼロで即時に購入する場合と、5年かけて賃貸に住みながら頭金300万円を準備し購入する場合とで比べてみました。

子育て世代がよく悩む「頭金はある程度ためてから購入した方が良いの?それともすぐに買った方が良いの?どっちがお得なの?」についてのヒントとなるよう、宅建士の筆者が分かりやすくお伝えします。

約9割がマイホーム取得に不安を持っているという現実

近年の社会情勢や経済情勢により、将来に不安を持つ若者や子育て世代が増えていると言われています。

給料や退職金、年金など保証されているものは1つもなく、今の若者達が、いつなくなってしまうか分からない不安定な社会の中で生きていることに違いはありません。

先行き不安から節約に走り、貯金や投資に走る若者も少なくありませんが、生きるために必要であり柱となるマイホームの購入に対してはどう感じているのでしょうか。

そんな中、ハイアス・アンド・カンパニーが、今の住まいが持ち家ではない全国の20~49歳までの男女618名を対象に「住宅購入に関する消費者調査」を行った結果、約9割の人がマイホーム購入に不安を感じていることが分かりました。

調査結果からも、いかに多くの人がマイホーム購入に不安を持っているかが分かります。

また、同調査内で「マイホーム取得検討にあたり特に重要だと思っていること」を聞いた結果、「無理のない返済計画を立てること」が1位で54.7%となっており、次いで「必要な自己資金を用意すること」が2位で36.1%となっていることが分かりました。

こちらも先行き不安から、若者世代はマイホーム購入にあたり「先の見通しがある返済計画」と「自己資金」を重視していることが分かります。

マイホーム購入に必要な資金の目安とは

ではマイホーム購入にはどれくらいの資金が必要なのでしょうか。

当たり前のことですが、マイホームは物件の価格だけでは購入できません。物件価格以外にも諸費用やその他費用が掛かります。

諸費用とは、不動産登記費用や火災保険料、住宅ローン保証料や不動産会社に支払仲介手数料などです。新築なら物件価格の3%、中古なら物件価格の6%がおおよその目安となっており、3,000万円の物件ならば90万円~180万円になります。

その他費用とは、引っ越し代や新居の家財道具などの費用です。引っ越し代は引っ越し業者によりまちまちですが、家財道具のおおよその目安は物件価格の2~3%だと言われています。3,000万円の物件であれば、60万円は考えておいた方が良いでしょう。

また最も見落とされがちなのが、新生活における生活費です。全ての手続きが終わり引っ越しが完了すると「さあ、これで安心」と思いきや、さまざまな費用を支払ってしまったために貯金が残りわずかで家計が火の車…なんてことはよくあります。

生活費は月の生活費の6か月分は手元に残す必要があり、家賃を入れて月の生活費が30万円掛る人は手元に180万円残すようにすると良いでしょう。

頭金ゼロ VS 300万円 どちらがお得?

自己資金と頭金は違います

では、マイホーム購入に必要な諸費用やその他費用が分かったところで、次は「自己資金」と「頭金」についてです。

不動産会社によっては「自己資金はいくらですか?」と聞いてくるところもあれば「頭金はいくらですか?」と聞いてくるところもあります。

どちらも同じではないかと思う人は多いでしょうが、「自己資金」=「頭金」ではありません

自己資金とは「貯金-手元に残すお金(先程の例では180万円の生活費)」であり、頭金とは「自己資金-(諸費用+その他費用)」です。

貯金から諸費用やその他費用を引いた残りを「頭金」と考えてしまうと、新生活に困ってしまいますから、余裕を持った資金計画が必要ですね。

頭金ゼロ VS 300万円 どちらがお得?

そもそも頭金は準備する必要があるのか、フルローンで購入は危険なのか疑問に思っている人は多いですね。

多くの住宅ローンの借入額が、物件価格の8~9割である場合が多いことから、頭金は物件価格の1~2割が必要だと言われております。

しかし頭金なしでフルローンが組めることもある(例:フラット35と銀行ローンを組み合わせる)ことから、どうせ買うなら頭金なしですぐに買ってしまう人もいれば、数年掛けて頭金を作り、それから買う人もいます。

では、どちらが最終的にお得になるのでしょうか。物件価格3,000万円、固定金利1.3%、借入期間35年という条件のもと、頭金ゼロで即時に購入する場合と、5年かけて賃貸(家賃月10万円)に住みながら頭金300万円を準備し購入する場合とで比べてみました。

固定金利1.3% 35年 3,000万円借りた場合

  • 毎月の返済額:約8.9万円
  • 総返済額:約3,736万円

固定金利1.3% 35年 2,700万円借りた場合

  • 毎月の返済額:約8.1万円
  • 総返済額:約3,363万

※5年後も金利は同じで計算しています。
※フラット35で借入を起こした場合のシミュレーションです。
※金利情勢や税制面の影響は考慮しないものとします。

ここまで見てみると、月々の返済額に大差はないものの、総返済額については370万円ほどの差が出ることが分かります。

当たり前ですね。借入金額は少ない方が毎月の返済額も少なくなり、総返済額も少なくなります。ですから、頭金はあった方が良いという結果になりますが、考慮しなければならないのが、5年掛けて頭金を貯めている間は家賃が掛かるということです。

家賃10万円で5年間払い続けると600万円 になりますから、この600万円も考えなくてはなりません。

では、「総必要額」として考えた場合、どちらがお得になるのでしょうか。

頭金なしの即時購入の場合は総返済額と同じ約3,736万円になりますが、5年掛けて頭金300万円で2,700万円を借り入れた場合、総返済額以外に頭金の300万円と5年分の家賃600万円が掛りますから、3,363万+300万円+600万円で、約4,263万円になります。

総必要額で比べると、「約3,736万円」と「約4,263万円」ですから、520万円ほど頭金なしの即時購入の方がお得になってしまいます。

「総返済額」で比べるのと「総必要額」で比べるのとでは、考え方により違いが出てくるということです。

これはあくまでも、金利情勢や税制面の影響などは考慮されておりませんから、一概には言えませんが、現在のような低金利など、条件が揃うことにより逆転することもありますから参考にしてみてください。

まとめ

「マイホーム購入には頭金が必要だ」などといった固定概念にとらわれていると、結果的に損をする可能性もありますから、購入の際は不動産会社に綿密な資金計画のシミュレーションを出してもらい、場合によってはFPなどに相談すると良いでしょう。

いつかは持ち家」ならばそれは「いつ」なのか。その判断が将来の家計を左右する重要なポイントとなりますから、慎重に計画したいですね。

子育て世代が損をすることなく、無理のない範囲で満足のいく住宅購入ができることをお祈りいたしております。

<参照>ハイアス・アンド・カンパニー株式会社「約9割がマイホーム取得に不安、主な理由は住宅購入資金関連 「返せる計画」の重要性は認識するも、収入に注目しがちで支出を意識せず」