型破りな刑事・弓神(浅野忠信)に振り回される真面目な相棒・羽生(神木隆之介)。1話2話ともにこの関係で物語は進行され、どちらも羽生のピュアさ、一生懸命さが一番美味しいところを持っていた。

思いつく例が少年漫画だけでバカっぽくて申し訳ないが、「今日から俺は」では主人公の三橋ではなく伊藤、「ダイの大冒険」ではダイではなくポップ。奇人・変人・超人ではなく、観る者は普通の人間に近い方に感情移入するのは当たり前だし、しょうがないと思う。

そして第3話は、それに輪をかけて羽生が目立つ作りの話。羽生の尊敬する上司・真下誠(寺脇康文)巡査部長が、山中で頭部を殴られ意識不明に陥る事件に巻き込まれたというのだ。

しかし、それでも今回は弓神がカッコよかった。羽生も、真下も、堀田剛(柳俊太郎)も良かったが、第3話は、弓神のキャラクターの特性が一番出ている話だと思う。

あらすじ
事件現場には、無数の足跡、トラックがUターンしたと思われるタイヤ跡、耐寒用手袋が残されていた。菅能(稲森いずみ)らは監視カメラの映像から、容疑者が乗っていたらしきトラックを8台まで絞り込む。この写真を見て、恩師が襲われたことでいつもより気合いの入る羽生は、一発でどのトラックが怪しいかを読み当てる。

そのトラックに乗っていたのは、真下が更正させた前科一犯の若者・堀田剛だわかる。眼を覚ました真下に、堀田に殴られたという証言を得た羽生は、逃げようとしていた堀田を捕まえ、取り調べを行う。しかし堀田は「俺が襲ったって言ったのか?本当にそう言ったのか?最初に襲いかかったのは、あの人だ」と意味深な発言をする。

今までこんな演出あったっけ?
真下を信じ切って熱くなる羽生、「聖人君子なんていない。誰しも裏の顔がある」とあくまで冷静な弓神。この対照的な図式でいつも通りにストーリーは展開されたのだが、今回はちょっと違う。

刑事物で珍しくないが、このドラマにおいては珍しい、というよりちょっと浮いた演出にそれは垣間見えた。ヒズミ(山本美月)と弓神の食事シーン。2人が食べ物にありつこうとすると、その脇で中華料理屋の店員が壁に空いた穴をメニューの張り紙で隠す。すると突然奇妙なBGMが流れ、カメラは回り込むようにして眼の色が変わった弓神を映し出す。そして弓神は「ヒズミ、残念だけどそれお預けだ」と急いでどこかに向かう。

よくある。せっかく食べようとしていたのに、刑事が真相に近づく何かを事件とは別のことから見つけ出し、お勘定だけおいてその場を走り去る。よくあるが、これは弓神にとっては珍しい。まだたったの3話目だけど、今まででは有り得ない。

今まで弓神は事件のキーになるものを見つけた時、それほど表情を変えずに澄ましていた。少しずつ少しずつそのキーを集めて、全ての謎を解いていた。変人の癖に冷静で大人なのだ。なのにこの大袈裟な演出。

弓神というキャラクター
これは羽生だけではなく、弓神も熱くなっていたからではないだろうか?真下のためと言うよりは、相棒である羽生のために、この事件の真相に早く辿り着きたかったという心情が表れた演出のように思える。ノラリクラリしているようだが、羽生思いで、人情に熱い弓神の人柄がクッキリと表現されたのだ。

と言っても、普通なら1万円札なりなんなりを置いて「釣りは取っておいて!」と走り去りそうなもんだが、わざわざ小銭まで出して丁度の料金をテーブルに置いていったところと、結局はヒズミに調べ物をさせて、自分は煙草で輪っかを作り、競馬新聞を真剣に読み込んでいたところは、すごく弓神っぽいが。

結局、真下は聖人君子はなく、裏の顔を持っていた。しかしラストで弓神は、それでも羽生の真下へのリスペクトの気持ちを尊重し、今回の事件に関わった全ての人間に前を向かせることに成功した。やっぱり主人公だなぁと痛感させられる回だった。

(沢野奈津夫)
イラスト/Morimori no moRi