4月19日に発売された『明日(あけび)ちゃんのセーラー服』第1巻。博さんが「となりのヤングジャンプ」で連載中のマンガで、ヒロインの女子中学生・明日小路の新しい学校生活をみずみずしく描いた青春ストーリーとなっています。今回は作者の博先生にインタビューを実施。『明日ちゃんのセーラー服』の生まれた背景を教えていただきました。

明日小路(あけび・こみち)は、この春から田舎の名門女子中学・私立蠟梅学園に通うことになった13歳の女子中学生。彼女は今から入学式が待ち遠しくて仕方がありません。なぜなら、彼女の夢は「セーラー服」を着ることだからです!
明日ちゃんのセーラー服は、お母さんが仕立ててくれたもの

明日ちゃんのセーラー服は、お母さんが仕立ててくれたもの

© 博 / 集英社
そんな背景から幕を開ける『明日ちゃんのセーラー服』。博(ひろ)先生が2016年8月から「となりのヤングジャンプ」で連載中の作品です。今年4月19日には待望の第1巻が出ましたが、発売前になんと予約完売してしまう書店が続出。わずか発売3日目にして3刷が決定するなど、大きな反響を呼んでいます。

博先生に聞く、『明日ちゃんのセーラー服』誕生秘話

第1巻の表紙にも選ばれた明日ちゃんのビジュアルなど、博さんの描く可愛らしい女の子たちも素敵ですが、個人的に見とれてしまったのは博先生がマンガの中で描いている表現の自由さ。とてもしなやかな感性で、明日ちゃんをはじめキャラクターたちの魅力を引き出しているのです。
中面の見開きページ。1ページ目の途中からカラーを差し込...

中面の見開きページ。1ページ目の途中からカラーを差し込んだ、自由な感性で彼女の心情を表現した

© 博 / 集英社
たとえば物語がはじまる「プロローグ」から、いきなり明日ちゃんの姿に目を奪われます。水田がひろがる田舎の小道で、なんと明日ちゃんはロンダートからのバク宙、後方宙返り?を披露するのです。
驚くべきはココから。そんな彼女のチャレンジを、実に13ページにわたって、まるでコマ送りのように描き出しています。週刊少年ジャンプの場合、連載1話分はだいたい19ページ。強く印象付けたいシーンを大きなコマで見せるのはマンガのセオリーですが、ここまで贅沢に、自由に表現している作品は少ないのではないでしょうか。「成功すれば、新しい学校でいっぱい友達ができるはず!」。明日ちゃんの強い願いや天真爛漫な様子が、冒頭から伝わってくるようです。
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コマ送りのように1ページずつ描写した明日ちゃんの動き。...

コマ送りのように1ページずつ描写した明日ちゃんの動き。上のような流れで13ページにわたり描いている

© 博 / 集英社
今回は博先生に、書面インタビューのご協力をいただくことができました。『明日ちゃんのセーラー服』はどうやって生まれたのか。前述のような構成はどうやって考えたのか、お聞きしました。

博(ひろ)さんプロフィール

群馬県出身。漫画家・イラストレーター。
公式HP http://dismaless.web.fc2.com/
Twitter @siiteiebahiro
「ゆめくり」(コミックアライブ)絶賛連載中!①-④巻・好評発売中♥
http://www.mediafactory.co.jp/comic-alive/yumekuri/
「アクアリウム」(まんがタイムきららキャラット)等

母の思い出から生まれたセーラー服へのこだわり

――『明日ちゃんのセーラー服』が生まれた経緯を教えていただけますか?

博さん:いろいろなきっかけがあるので、すべてを挙げるのは難しいですが、一番古いきっかけは、実家にいたころに聞いた母の学生時代のお話です。

母は学生服を祖母に仕立ててもらい、学校に通っていたそうです。その話を聞いた当時から素敵だなと思っていて、いつかそんな制服で学生生活を送る女の子を描きたいなと思っていたんです。
明日ちゃんがセーラー服を選んだきっかけも母の思い出

明日ちゃんがセーラー服を選んだきっかけも母の思い出

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――セーラー服ではなく、ブレザーという候補もありましたか?

博さん:どちらにするかで悩んではいません。はじめからセーラー服のつもりでした。

――そもそも先生はセーラー服はお好きですか?

博さん:好きです。学ラン、ブレザーなど、どんな制服も同じように好きです。
――セーラー服に興味を持ったきっかけは?

博さん:マンガではよく見かけるくらい学生服の常識になっていましたが、実際に着てる人を学生時代に見たことがなくて、不思議な服だなと感じていました。そこがきっかけだと思います。

――ひと口にセーラー服と言っても、いろいろなデザインがあると思いますが、先生が好きなタイプは?

博さん:大袈裟にならない程度のパフスリーブ。あと、大きめなセーラーカラーが好きですね。
両そでのパフスリーブも先生こだわりのデザイン

両そでのパフスリーブも先生こだわりのデザイン

© 博 / 集英社
――セーラー服に限らず、衣装のシワの描き方には並々ならぬこだわりを感じます。いつもどういったものを参考にして描いているのでしょうか。

博さん:なるべく近い生地を見繕って、それを見ながら描いてます。動きを見せたいときは、柔らかめな芯を入れて、曲げたり捻ったりすることでどんなシワができるか調べてます。

この世界のどこかにある美しい風景

ところで、読んでいて気になったのは、明日ちゃんたちが通う学校のほか、彼女たちが暮らす家や田園風景。とてものどかでゆったりと、優しい時間が物語の中を漂っています。『明日ちゃんのセーラー服』の世界はどんなヒントから生まれたのでしょうか。
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――この『明日ちゃんのセーラー服』の世界観は、現実のどこかにある世界か、現実ではありえない理想の世界か、どちらに比重を置いて描いていますか?

博さん:明日ちゃんに限らず、自分の描く世界はいつも存在するものとして考えています。

自分はビデオカメラを持ってそこへ行き、少しだけ切り取らせてもらっているイメージでしょうか。
明日ちゃんたち家族が暮らすおうち。イメージのヒントは海...

明日ちゃんたち家族が暮らすおうち。イメージのヒントは海外の建築物

© 博 / 集英社
――明日ちゃんの家族が暮らす家が、ファンタジーの世界に出てくるような建物でとても素敵でした。また、描かれる世界も自然豊かでのどかな田園風景が印象的ですが、モチーフとなっている舞台はありますか?

博さん:僕の実家は、群馬の田んぼや川の多い町でした。小中学校のころを思い出そうとすると、大体それらの風景が一緒に思い浮かびます。そういった記憶の中の風景を舞台に起こしているイメージです。

家に関しては、実家にいたころ、母が西洋の建物が載っている本をたくさん持っていて、借りて読んでいるうちに自然と自分も好きになっていました。その中から明日ちゃんのお母さん、お父さんが選びそうな家はどんなだろうと想像して描いています。

WEBだからできる演出の新たなアプローチ

『明日ちゃんのセーラー服』を語るうえで欠かせないのは、やはり趣向を凝らしたさまざまな表現。キャラクターの動きを連続して見せたり、モノクロのページの間にカラーを挟んだり。いずれもマンガ誌→単行本という流れがポピュラーな今のマンガ業界では、とてもユニークな見せ方です。
作品を連載しているのは「となりのヤングジャンプ」というWEBメディア。ページ数や色について大きな制約がない環境だからこそ、自由なアイデアがどんどん活かされているのでしょう。
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髪を束ねるという動作ひとつを4ページにわたって描写

髪を束ねるという動作ひとつを4ページにわたって描写

© 博 / 集英社
――『明日ちゃんのセーラー服』では、たびたび連続する動きを描写する場面が見られますが、どんな意図があるのでしょうか?

博さん:ひとつのシーンをぱっと思い浮かべたとき、複数描きたい瞬間があって、どれも必要な瞬間で削れないと思うからです。

――先生ご自身がマンガを描いていて、「となりのヤングジャンプ」だからこそできたと感じることがありましたら、ぜひ教えていただけますか?

博さん:カラーを大ゴマと同じような意味で入れることができるのはとても嬉しいです。その代わり、時間はかかってしまいますね(笑)。

物語を彩るキュートなキャラクターたち

もちろん作品の魅力となっているのはキャラクターです。ヒロインの明日ちゃんをはじめ、入学後はじめて登校した彼女が朝一番に出会った木崎江利花(きざき・えりか)、席を並べて給食を食べた古城智乃(こじょう・ともの)や兎原透子(うさぎはら・とうこ)など、明日ちゃんとおなじ学園生活を送るクラスメイトたちも生き生きとして、とてもかわいく描かれています。
中でも圧巻だったのは第5話の明日ちゃんの表情。憧れているアイドルのCMを真似たという彼女のしぐさは、表紙のイラストにも採用されました。博さんのキャラクターを描くポイントはどこにあるのでしょうか。
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明日ちゃんが初めてできた友人・木崎江利花。明日ちゃんと...

明日ちゃんが初めてできた友人・木崎江利花。明日ちゃんと彼女の関係は、少し百合っぽい展開も

© 博 / 集英社
――主人公の明日小路は、とても爛漫で表情豊かなキャラクターです。彼女のビジュアルは作品のアイデアが生まれた当時から固まっていましたか?

博さん:はじめのイメージからほとんど変わっておりません。ただ、物語自体はいくつかアイデアがあって、初期は高校生活にすることも考えていました。

それに、どの目線で描くか、という点にもいくつか変遷はあります。明日ちゃんの目線ではなく、第三者の目線でクラスの生徒たちの交流を均等に描くようなかたちも考えていました。
明るくて事情通?なクラスメイトの兎原透子

明るくて事情通?なクラスメイトの兎原透子

© 博 / 集英社
――明日ちゃん以外にも、江利花や透子、智乃といったクラスメイトたちが多数登場していますが、先生ご自身がお気に入りのキャラクターは?

博さん:私の好きなポイントを少しずつ分け与えて考えておりますので全員好きです。

ただ、木崎さんのヘアースタイルは過去のどの作品でも登場しています。深く考えてはいないのですが、このヘアースタイルの子には少し特別な愛着があるのかもしれません。
黒ぶちメガネが印象的な優等生タイプの古城智乃

黒ぶちメガネが印象的な優等生タイプの古城智乃

© 博 / 集英社
――先生の描くキャラクターには、目や髪、脚などパーツごとにいろいろな表情を見せていますが、ご自身の中で最も力を入れているパーツは?

博さん:つむじから手足の指先まですべてです。ただ、キャラクターが笑ってくれたときは、描いていて楽しいなと感じることがあります。

――作中ではさまざまなアングルでキャラクターが描かれていますが、描くときに意識しているポイントはありますか。

博さん:そのキャラクターがしそうなこと、もしくはしなさそうなことをイメージしながら描いています。その過程で描きたいものがどんどん増えていってますね。
明日ちゃんとおなじ学園生活を過ごすクラスメイトたち

明日ちゃんとおなじ学園生活を過ごすクラスメイトたち

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――先生がマンガ家になるまでに、画力を磨くためにいつもしていたことは?

博さん:骨と筋肉の暗記はよくしていました。

――影響を受けた作品やキャラクター、またはマンガ家さんはいらっしゃいますか?

博さん:影響を受けたなんて恐れ多いですが、冨樫義博先生、あだち充先生の作品が好きです。
クラスメイトにせがまれて披露した明日ちゃんのしぐさ。先...

クラスメイトにせがまれて披露した明日ちゃんのしぐさ。先生渾身のカラーイラスト!

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――第1巻の表紙にも選ばれた、第5話の推しアイドルのしぐさの真似をするカットにノックアウトされたファンも多いと思います。こちらのカット(P140カラーページ)を描く際、苦労やこだわりがございましたら、教えていただけますとうれしいです。

博さん:明日ちゃんはもちろん、見てる三人もしたことのないしぐさだと思います。本気で(アイドルの)福元幹になりきってやってみたけど、伝わっているだろうか…不安…という、なんともいえない表情でしょうか。

このシーンもいくつも連続で表情が浮かびましたが、ここは一枚で見せたかったので一つに絞らなければならず、選び抜くのに苦労しました。

気になる今後の展開は?

そんな『明日ちゃんのセーラー服』ですが、明日小路の学園生活はまだまだ始まったばかり。これから学校イベントやクラスメイトたちとの交流が描かれていきます。最後に今後の展開についても、少しお聞きしてみました。
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――最近の反響についてはいかがですか?

博さん:まだあまり実感できておりません。とりあえずまだ明日ちゃんを描けるんだとほっとしております。

とにかく手にとって下さった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。ほんとうにありがとうございます。
明日ちゃんのお父さん。彼のエピソードは今後描かれるかも……?

明日ちゃんのお父さん。彼のエピソードは今後描かれるかも……?

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――ふと気になっていたのですが、お父さんはどんな仕事をしているのでしょうか?

博さん:あっさりなのかしっかりなのかはわかりませんが、今後のお話で出てくるかもしれませんので、もうしばらくお待ちください。出てこなかったら申し訳ございません。
――この先、明日ちゃんの学校生活が描かれていくとしたら、冬服の登場もあるのでしょうか。

博さん:そこは大きなポイントなのであまり言いたくないですが……。ちなみに今、明日ちゃんが着ているセーラー服は中間服です。
――よろしければ読者の皆さんへメッセージをお願いします!

博さん:明日ちゃんも、他のクラスメイトたちも、なにもかも違う新生活に戸惑いつつも、自由に日々を暮らしています。彼女たちのさまざまな行動、交流を親のような目線で見ていただけるととても嬉しいです。

これからも何卒よろしくお願いいたします。
明日ちゃんのキラキラとまぶしい学園生活はまだまだこれから

明日ちゃんのキラキラとまぶしい学園生活はまだまだこれから

© 博 / 集英社

「となりのヤングジャンプ」で最新エピソードが読める!

作品のイメージから、とても勢いを重視して描いているのかと思いきや、インタビューから読み取れたのは、慎重に言葉を選んで思慮をめぐらしながら、ひとつひとつを大切に描いている真逆の印象でした。物語の中で健やかに成長していくキャラクターたちを、丁寧にマンガの中に映し出そうと努力している様子がうかがえます。

『明日ちゃんのセーラー服』は「となりのヤングジャンプ」で公開中。単行本はまだ1巻が発売されたばかりです。

ちなみに作中でしばしば象徴的に描かれる中面のカラーイラストは、電子書籍版ならカラーで再現されています。単行本ではモノクロになっていますが、裏表紙やカバー裏などに描かれた追加イラストを楽しめるポイントも。どちらを選ぶか迷ってしまいそうです(筆者は両方買いました)。

柔らかなタッチで紡がれる明日ちゃんたちの青春。これからの学園生活もぜひ注目していきたいですね!
明日ちゃんのセーラー服 1 (ヤングジャンプコミックス...

明日ちゃんのセーラー服 1 (ヤングジャンプコミックス) | 博 |本 | 通販 | Amazon

『明日ちゃんのセーラー服』第1巻

著者:博
価格:600円[税別]
出版社:集英社

2016年8月より「となりのヤングジャンプ」にて連載中

© 博 / 集英社

(博)4/19明日ちゃん一巻発売(@siiteiebahiro)さん | Twitter

(博)4/19明日ちゃん一巻発売(@siiteiebahiro)さん | Twitter
(博)4/19明日ちゃん一巻発売 (@siiteiebahiro)さんの最新ツイート。漫画家。 「明日(あけび)ちゃんのセーラー服」 連載中https://t.co/SeFV5aM1eQ となりのヤングジャンプ。「ゆめくり」全5巻。「アクアリウム」全2巻。画像の使用や加工、転載禁止。

となりのヤングジャンプ : 明日(あけび)ちゃんのセーラー服

となりのヤングジャンプ : 明日(あけび)ちゃんのセーラー服
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『明日ちゃんのセーラー服』作者の博先生インタビュー!「母から聞いた思い出を話にしたかった」