中国広東省の深センは1980年に経済特区に指定されて以降、目覚ましい発展を遂げている。その成長ぶりは「人類史上最速で成長する都市」といわれ、1980年当時は人口約3万人の漁村だったが、現在では人口1200万人超を擁する巨大都市に変貌している。2009年以降は深セン市政府が「戦略的な新興産業の発展計画」に基づき、様々な新興産業の誘致・育成に力を入れ、Fintech(フィンテック)による電子決済やシェアリング自転車などが生活に浸透した先端都市と化している。
 
 深セン市は、香港の新界に接し、1980年に鄧小平氏によって経済特区に指定された。その後、外国企業の投資を積極的に誘致し、製造業の集積地として発展を遂げた。北京市、上海市、広州市とともに、中国本土の「4大都市」の一角を占めている。深センの特徴は、地元の深セン市民はごく少数で、住民のほとんどを中国各地からの移住者で占めること。深センでは地域の方言である広東語ではなく、マンダリン(普通話)が広く使われている。それだけに、計画的な都市づくり、また、革新的なサービスの導入などが大きな抵抗なく受け入れられ、成長のスピードが速い。
 
 8月に深センを訪れた日興アセットマネジメント商品開発部シニアマネージャーの千葉直史氏(写真)は、「深センは、米国のシリコンバレーのように大きなアクセラレーター(ベンチャー支援組織)が存在し、行政の支援による企業誘致も後押しして新興企業が大きく成長する機会を与える都市になっている。住民の10人に1人が社長といわれるほど、中国全土から起業家を惹きつける魅力がある」と語っている。
 
 たとえば、ゲノム(遺伝情報)解析企業として世界的な注目度も高いBGIは、北京にあった本社を2007年に深センに移転し、大きな発展を遂げた。また、世界一のドローンメーカーであるDJI、世界最大級の通信機器メーカーのファーウェイなど、深センに本拠を構え、世界の市場を開拓する企業が続々と現れている。
 
 また、千葉氏は、深セン企業の取り組み等を見て、「中国共産党の経済政策がトップダウンで進められていることが、先端技術の社会への浸透を助けている」と感じるという。「あらゆるところに配置された監視カメラが、人々や車の往来を記録し、異常な行動には警告を発するシステムが稼働している。また、あらゆる買い物にモバイル決済が活用されることによって、人々の信用情報がデータ化され、信用スコアが普及し始めている。最近、若者が求める結婚相手の条件として、持ち家や車の所持に加えて、信用スコア700点以上などを挙げる傾向が実際に広がっているという。テクノロジーの発展によって社会の常識が急速に変化している」と語る。
 
 日興アセットマネジメントは、この深セン企業が多く上場し、新興企業が集まる深セン証券取引所に上場する企業を主な組み入れ対象にした「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」を11月30日に設定する予定だ。深センに本社を置く運用会社、融通(ロントン)基金管理有限公司から提供される現地情報も活用して深センから大きな成長を遂げる企業に選別投資する。
 
 深セン証券取引所には2016年12月に香港証券取引所との間でストック・コネクト(株式の相互取引)が開始されたことによって、香港証券取引所経由で海外投資家も容易に投資することが可能になった。さらに、2018年からMSCI新興国株式指数の組み入れ銘柄に中国A株(人民元建ての中国本土株)が組み入れ開始されることを機に、世界の投資家が改めて中国本土株に注目するようになることも期待されている。
 
 深センを代表する企業であるテンセントは、2004年6月に香港に上場した時の公募価格が3.7香港ドル。2014年12月には1株を5株にする株式分割を実施し、現在の株価は370香港ドルになっている。株式分割等を考慮すると上場から約13年間で株価が約500倍になっている計算だ。テンセントのように、大きな成長を遂げる企業が生まれ得る土壌が深センにはある。
 
 「中国には、Google、Facebook、Amazonという世界を席巻する企業ですら事実上、進出に成功していない。13億人の中国国民にサービスを提供しているのは、中国のローカル企業だ。しかも、中国で成功したビジネスモデルは、“一帯一路(経済・外交圏構想)”政策を掲げる中国政府の後押しで、東南アジア地域や中東、アフリカなどに仕組みごと輸出される可能性もある。中国国内企業が改めて注目される背景だ」(千葉氏)。特にハイテク企業の集積地と化している深センからは目が離せない。(写真は、日興アセットマネジメント商品開発部シニアマネージャーの千葉直史氏)
起業家を惹きつける深セン、中国のシリコンバレーとして成長企業を育む