サッカーを様々な角度から楽しみたい――。そんな皆さんにうってつけの連載が、この『あなたのJリーグライフがもっと充実! 5分でわかるサッカービジネス講座』です。サッカービジネスやクラブ経営に関してなかなか取り上げられない情報をお届けしていきます。

 Jクラブのスタッフとして活躍するためには、どういった資質が必要なのでしょうか。ガイナーレ鳥取を経営する株式会社SC鳥取で、社長室事業戦略特命部長を務める高島祐亮(たかしま・ゆうすけ)さんが、Jクラブでは今、どんな人材が求められているのかを教えてくれました。「Jリーグのクラブで働きたい」と思っているあなたにとっては必読の内容です。

構成=菅野浩二
協力=一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル

◆◆Jクラブに求められるのは“4本目の柱”をつくり出せる人材

 Jクラブは「広告料収入」「入場料収入」「物販収入」の“3本柱”を経営の大きな軸としています。「スポンサー」や「パートナー」と呼ばれる企業や法人から支払われる「広告料」、チケット代の利益、そしてレプリカユニフォームやタオルマフラーなどの売上をクラブビジネスの財源としている構造です。

 Jリーグが開幕して25年。“3本柱”を伸ばすノウハウは一定の蓄積があると思います。J1からJ3に至るまで、どのクラブもスポンサー営業や集客、商品開発や販売に力を入れ、クラブビジネスをさらに充実させようと日々の業務に取り組んでいます。“3本柱”の成長に関しては、インターネットやこれからの新技術を従来の収益に対して掛け算できる人材が必要になってくると思います。

 長くIT企業に勤め、マーケティングや事業開発にも大きくかかわってきた私が感じているのは、今後のJクラブに求められるのは、前述の流れに加え、“4本目の柱”をそのクラブとホームタウンの強みや資産を生かしてつくり出せる人材ではないかということです。つまり、「広告料収入」「入場料収入」「物販収入」ではなく、全く新しい経営基盤を生み出せる人間こそが、Jクラブをさらに発展させることができるはずです。

 私が今勤めている株式会社SC鳥取も、“4本目の柱”の確立に着手しました。私たちのチュウブYAJINスタジアムのスポンサーである株式会社チュウブさんは芝生の生産販売を手がける会社であり、「Shibafull(しばふる)」というプロジェクト名のもと、プロジェクトパートナーともに芝生の販売を新規事業として新たな財源を確保しようとしています。県内の小中高の校庭や公共施設、観光地などの“耕作放置地”を有効活用し、芝生化することで地域貢献も果たせると考えています。

◆◆視野が広く、様々な業務に対応できる人材が活躍できる

 新規事業を生み出し、そのアイデアを軌道に乗せるのは決して簡単ではありません。ビジネスパーソンであれば容易に想像がつくと思います。新たな事業を開拓するには、相応のビジネス経験やマーケティングの知識に加え、独創的な発想力や豊富な人脈なども必要となります。

 個人的な見解ですが、Jクラブで“4本目の柱”を形づくれるのはスペシャリストよりもゼネラリストではないかと思っています。つまり、視野が広く幅広い知識を持ち、様々な業務に対応できる人材です。スポンサー営業や集客、商品開発や販売はもちろん、広報活動や公式ホームページの訪問者数、あるいは予算や財務など、クラブ経営にかかわるすべてを見渡し、あらゆる要素を結びつけてビジネス化しようとする働きが新たな可能性をつくり出すからです。ITビジネス用語では「利益を生み出すこと」を“マネタイズ”と呼びますが、今のJクラブが必要としているのはまさに“マネタイズ”ができる人材ではないでしょうか。

 広い視野と豊富な知見と、独自の発想を実行に移せる経験値。それらを併せ持ち、“4本目の柱”を築き得るゼネラリストは当然、十分なビジネス経験を持っているに越したことはありません。ミドルエイジからの転職も大歓迎だと思います。実際、私がSC鳥取に入社したのは社会人経験を15年ほど経た37歳の時でした。Jリーグが立ち上げた「Jリーグヒューマンキャピタル(現スポーツヒューマンキャピタル)」というセミナーで学んだ同期で、鹿島アントラーズにキャリアチェンジした友人は30代でしたし、大分トリニータへは、自身も社長経験がある50代の方が行っています。

 もちろん、若い人材も活躍できます。“3本柱”の成長において、若い方々のエネルギーは不可欠です。「広告料収入」「入場料収入」「物販収入」を伸ばすための日々の業務は目が回るほどの忙しさで、そこには20代のようなバイタリティが必須となってきます。

◆◆“ホームタウン”を発展させていくという“使命感”が重要

 大学時代、バックパッカーとして海外旅行をした際の忘れられない思い出を話させてください。

 イングランドのリヴァプールを訪れた際、老夫婦が営むホステルに滞在しました。その老夫婦は何十年もの間、リヴァプールのシーズンチケットを買い続けているそうです。理由を尋ねると「家族が集まる場所がそこだから」という答えが返ってきました。子どもたちが大人になって別の町に暮らしていても、試合がある週末はスタジアムで会えるということです。彼らにとってはまさに“ホームスタジアム”であり、サッカーが持つ力に感動してしまいました。

「Jリーグ百年構想」は、各地域におけるサッカーを含むスポーツ文化の発展を理念に掲げたものです。各クラブが本拠地とする地域は、ファンやサポーターにとって“ホームタウン”であり、Jクラブは多くのサッカーファミリーが集えるだけの魅力を生み出し続けなければなりません。

 個人的には、Jクラブで働く人間、あるいは働きたいと思っている方には、多くの人にとっての“ホームタウン”を発展させていくという“使命感”が重要だと思っています。私自身は、日本で最も人口の少ない鳥取県という場所にあって、ガイナーレ鳥取を応援するために“ホームスタジアム”に足を運んでくれる方々のクラブ愛には絶対に応えたいという気持ちを持っています。「ガイナーレ鳥取のファンやサポーターの皆様に幸せを届けるためなら、何でもやるぞ」という信念は揺らぎません。Jクラブに就職・転職したいと考えている方も、同じような思いを持ってサッカービジネスの世界に飛び込んできてほしいと思います。


\教えてくれた人/
高島祐亮(たかしま・ゆうすけ)さん
株式会社SC鳥取で社長室事業戦略特命部長を務める。入社前は、2つのIT企業でインターネットメディアをはじめとした50以上の新規事業立上げから業務提携、経営企画部門の立上げ等に携わり、2社連続上場にかかわる。2015年に「Jリーグヒューマンキャピタル」で学んだ後、2017年7月から現職。茨城県出身。

IT業界からガイナーレ鳥取に転職した高島祐亮さんは「個人的な見解」と前置をしつつも、「Jクラブで“4本目の柱”を形づくれるのはスペシャリストよりもゼネラリストではないか」と言う