希望の党は14日、小池百合子東京都知事が代表を辞任し、9月の結党からわずか2カ月で党の「顔」を失う危機的状況に陥った。玉木雄一郎新代表は憲法改正や安全保障政策で小池氏の路線を継承する方針を示したが、小池氏の「投げ出し」が党勢低迷に拍車をかけかねず、2019年参院選へ向けた展望は描けない。10日の共同代表選で「脱小池路線」を主張して玉木氏に敗れた大串博志氏は反発を強め、党分裂の動きが加速するとの観測も広がる。

 「透明性を欠くやり方ではないか。手続きには違和感、唐突感を感じた」

 大串氏は14日の党両院議員総会後、記者団の前で不満をあらわにした。

 10日の共同代表選は小池氏が代表を続けることを前提に、国会で党を代表するリーダーに玉木氏を選出した。その前提が崩れたにもかかわらず、小池氏の推挙で電撃的に玉木氏が後任代表に就いた手続きは脱小池派には「不透明」と映る。

 希望の党はほぼ民進党出身者ばかりの政党となったが、民進党時代の路線対立も持ち込まれ、それが共同代表選で表面化した。民進党を先行離党した結党メンバーは保守色が強く、小池路線を主導する。

 大串氏は共同代表選で「憲法9条改正は不要」「安保法制は容認しない」と主張し、国会議員53人中14人の支持を得た。14日の総会で幹事長以下の党執行部人事が決まるのを前に大串氏は玉木氏に「結党メンバーを選ぶのか、私たちを選ぶのか、はっきりしないといけない」と迫ったが、玉木氏は言葉を濁したという。

 そして、玉木氏が人事で選んだのは結党メンバー側だった。政調会長に長島昭久元副防衛相、憲法調査会長に細野豪志元環境相を起用した人事は、大串氏側に「小池路線の受け入れか、離党か」の二者択一を突きつけたに等しい。細野氏は総会後、記者団に「希望の党の路線は非常に明確になった」と強調した。

 大串氏は共同代表選で、安倍政権を打倒するため野党連携を強化するとして民進党、立憲民主党との統一会派を目指すことも主張した。民進党出身者の再結集を図る路線だが、玉木氏は総会後の記者会見で「私たちのカラーを出していきたい」と独自路線を強調した。改憲などをめぐる希望の党内対立が深まるのは避けられず、大串氏らが離党して民進党回帰に動く場合の同調者がどこまで広がるかに関心は移りつつある。

 小池氏の辞任自体は、玉木氏ら民進党出身者にとって「二重権力」構造を解消する意味でプラスの側面もある。希望の党が頼みにしてきた「小池人気」は東京でも陰り、地域政党「都民ファーストの会」が東京都葛飾区議選(12日投票)に立てた候補者5人のうち4人が落選した。

 衆院選後の続投表明から一転、国政から身を引いた小池氏の迷走を政府高官は「もう投げ出すしかなかったんだろう」と批判した。【樋口淳也、高橋恵子】

 ◇都議会や都庁から冷ややかな声も

 小池氏の希望の党代表辞任で、都議会や都庁からは「ようやく都政に集中してもらえる」と歓迎の声がある一方、「一度、興味を失った都政でこれから何をしようとするのか」と冷ややかな声も聞かれた。

 小池氏が特別顧問を務める都議会第1党の「都民ファーストの会」。荒木千陽代表は「こういう(国政政党の代表という)形をとったのも、都政で突破できない壁を突破していくためということだった。本人の判断を受け入れたい」と理解を示した。別の都民ファースト幹部は「『小池人気』が落ちる中での辞任で、さらに求心力が下がるのでは。これから予算編成の時期で、対応を検討しなければ」と危機感を募らせる。

 小池氏と連携する都議会公明党の東村邦浩幹事長は「小池知事が党代表として(国政に)出る時に、何度も『都政に専念すべきだ』と言っても振り切って出たわけだから、都合が悪くなったから戻ってきても今まで通りにはいかない。これからは一線を画し、是々非々で臨みたい」と厳しい。自民党の都議は「『都政にまい進する』と言っても、これまでの姿勢を見ていると口だけではないか」と批判した。

 2020年東京五輪・パラリンピックや市場移転問題など、課題が山積する都庁。都幹部は「築地市場の跡地には、都心と東京大会の選手村を結ぶ環状2号線の一部や輸送拠点を整備する予定だが、市場移転の日付が決まっておらず、見通しが立たない。準備を進めるためにも、都政に専念してほしい」と注文する。一方、別の都幹部は「小池知事は明らかに気持ちが国政にシフトしているように見えた。やる気が都政に戻るのかは懐疑的だ」と指摘。「都議会との関係が悪化し、予算が通らなくなってしまうのでは」と懸念する職員もいた。【柳澤一男、円谷美晶、芳賀竜也】

希望の党両院議員総会で新役員と写真撮影に応じる小池百合子東京都知事(中央左)と玉木雄一郎代表(同右)=衆院第1議員会館で2017年11月14日午後5時18分、川田雅浩撮影