情報通信技術(ICT)を活用し、場所や時間を有効活用できる柔軟な働き方「テレワーク」への関心が高まっています。2020年東京オリンピック開会式の日にちなみ、今年7月24日には在宅勤務やモバイルワークなどの「テレワーク」を推奨する「テレワーク・デイ」が実施され、全922の企業自治体テレワークに取り組みました。なぜ今めてテレワークが注されているのか、今回はテレワークの専門として、講演や講義も数多く行う株式会社テレワークネジメント代表取締役の田澤由利さんにお話を伺いました。
もはや“特例”ではない! テレワークが広がる理由とは……

経済産業省総務省厚生労働省国土交通省内閣官房内閣府体となり、今年から始まった「テレワーク・デイ」。IT情報通信業だけでなく、サービス、製造などさまざまな企業や団体が参加しました。労働人口の減少でどの企業も慢性的な人手不足に悩むなか、在宅でも仕事ができるテレワークへの関心が高まっているようです。

「今後さらに高齢化が加速し、親の介護で出社が難しくなる人もますます増えていくでしょう。テレワークというと、育児中のママパパのための制度と考える人もいるかと思いますが、“期間限定”である育児に対して介護はいつまで続くか分かりません。にとってもひとごとではないと思います。
また、育児や介護に関係なく、テレワークによって出社にかかる時間のロスがなくなれば、できた時間を有効に活用することもできます。昨今終身雇用制度が揺らぐなか、個人のスキルアップのために勉強したり、副業をしたりするための時間を確保したいと考える人にとってもメリットは大きいのではないでしょうか。テレワークは何か特別な事情がある人のためのものではなく、みんなが自分の働き方を考える上で大切な制度なのではないかと思います」(田澤さん、以下同)

住まいからの間取りまで!? テレワークで変わるのは働き方だけではない

また、テレワークが多くの人に浸透すれば “働き方”だけではなく、“住まい”にも大きな変化をもたらす可性があるといいます。

「これまでの探しは、通勤の利便性が重要な条件の一つでしたが、毎日会社に通う必要がなくなれば、住む場所の選択肢も広がります。『地方に住む』という発想も出てくると、都心に集中している人口も分散し、地方創生や待機児童解消にもつながります。パートナーの転勤によってどちらかが仕事を辞めざるを得ない状況になったり、単身赴任で家族バラバラになったり……という状況も変わってくるかもしれません」

さらに、細かいところでは「部屋の間取り」や「具の選び方」などにも影があるのでは、と田澤さん。

「例えば、家族がいると自分だけの書斎を持つことはなかなか難しいと思いますが、テレワークが普及すれば狭くても仕事部屋として簡易的な書斎をに設ける人が増えてくるかもしれません。また、リビングで作業する人に向けて、リビングに置いても違和感のないオフィスチェアなど、新しい具が生まれる可性だってある。椅子一つから住む場所まで、テレワークによってさまざまな変化が起きることが考えられます」

ICT技術の活用によって、テレワークならではの課題も解決

自身も20年近くテレワークをしてきたという田澤さん。代表を務める株式会社テレワークネジメントでは、社員がオンラインチャットテレビ会議などのICTツール活用し、自分のライフスタイルに合わせたテレワークを実践しています。

【画像1】東京オフィスにあるテレビ会議で、北海道オフィス奈良テレワークセンターの様子を確認する田澤さん(左) (撮影/周東淑子)

今回のテレワーク・デイ参加者からは「職場とのコミュニケーションが難しい」「自宅での業務効率が落ちた」などのも一部寄せられましたが、これらの課題に対して同社ではICTツール活用し、解決を図っているそうです。

【画像2】色が付いた〇は“着席中”の社員を表し、実際は別の場所にいても、すぐにチャットや音で連絡がとれる(テレワークネジメント提供

「例えば、うちでは職場でのコミュニケーションを円滑にするため、ウェブ上に“バーチャルオフィス”を設けています。これで在宅勤務している人、各地のオフィスで働いている人の状況が一で分かる。出勤している人をクリックすればチャットや音で話しかけられるので、実際の職場にいるのと変わらず、コミュニケーションを取ることができます」

【画像3】タイムカードは「出勤/退勤」ではなく、「着席/退席」で管理。着席中はPCの作業画面が記録されるため「『着席』を押すと気持ちがピシッとします」とのも(テレワークネジメント提供

また、勤務状況はタイムカードで管理。席について作業を始める際に『着席』ボタン仕事を中断するときや終業時に『退席』ボタンを押すことで、実質労働時間が分かるといいます。ちなみに、『着席』中は、PCの画面のキャプチャランダムに記録されるため、作業の内容を把握することもできるといいます。

「われわれは『働いた時間はきちんと計りましょう』というスタンスで、所定労働時間はしっかり働いてもらうことを標としています。『出社/退社』ではなく、『出席/退席』にすれば、少しお寝をしたいときや、子どものお迎えがあるときは『退席』を押すことで時間を管理できる。もし定時になって時間が足りなければ『子どもが寝てから1時間やります』ということも可です。きちんと時間を管理すれば、みんな時間を意識した働き方ができるようになり、生産性も上がります」

今後ICTツールがさらに進化することにより、導入があまり進んでいない業界などにもテレワークが普及する可性は十分にある、と田澤さん。

「人材不足は全ての業界に通じる問題ですので、企業には『今できない』ではなくて、『将来できるようにしよう』というビジョンめられていくのだと思います」

働く人の暮らし方や生き方だけではなく、企業の人材不足や効率化などの課題を解決することにもなりうるテレワーク東京オリンピックパラリンピック競技大会が開催される2020年には、テレワークによって住まいや職場の様相はがらりと変わっているのかもしれません。

取材協
テレワークマネジメント
(周東 淑子(やじろべえ))
撮影/周東淑子