「とろサーモン」が念願の戴冠を果たした「M-1グランプリ2017」。準決勝最多出場回数記録(10回)を持ちながら決勝には縁のなかった実力派コンビが一気に栄冠を掴むまで至った勝因はどこにあったのか? 自身と「M−1」の浅からぬ縁を綴った自叙伝『芸人迷子』が大きな話題を呼んだユウキロック氏がその理由を分析。今年もツイッター解説が大きな注目を集めた元「M-1」ファイナリストに今大会を改めて振り返ってもらった。

◆「蓋を開けてみたら『笑神籤(えみくじ)』は最高だった!!」

 昨年の「M-1グランプリ」の審査員は、過去最小の5名であり、懸念材料に上げていた「1人の点数の開きが総得点を左右する」という部分が、2番手に登場した「カミナリ」に対して、もろに影響したところがあった。しかし、今回は前年度の審査員に春風亭小朝師匠、渡辺正行さんが加わって7名となり、その部分は解消されたと思う。

 前日の記事でも懸念していた新システム「笑神籤(えみくじ)」。放送ではどのような形になっているのか。映像を観ると、やはり舞台裏に決勝メンバーは集められ、そこをカメラがしっかりとおさえている。俺の中に不安がよぎる。そして、司会の今田耕司さんがくじを引き、上戸彩さんが「『ゆにばーす』です」と発表する。映像は別スタジオへ切り替わり、カメラは「ゆにばーす」を捉えた。しかし、舞台へと移動するところだけで、表情はほとんどわからない。2番手の「カミナリ」もそう。3番手の「とろサーモン」「スーパーマラドーナ」の表情は若干写ったものの、やる気に満ち満ちているいい表情だった。司会者とのカラミはなく、決まったら即舞台へ。さすが朝日放送さん。わかってらっしゃると言うほかはない。外的要素をほとんどあたえることなく、最後までワクワクできた、この「笑神籤(えみくじ)」というシステム。決勝メンバーには酷なシステムだと思うが、イチ視聴者として最後までドキドキできる最高のシステムであり、「順番を予想する」という楽しみも増えた。敗者復活戦を勝ち上がり4番手で登場した「スーパーマラドーナ」も、最後に登場した「ジャルジャル」も最終決戦に進出することができず、この事実が図らずも「笑神籤(えみくじ)」の成功を物語る結果となった。

 ファーストラウンド。初めて行われた「笑神籤(えみくじ)」システムでのトップバッターは、優勝候補の一角と見ていた「ゆにばーす」だった。2人は急に決まった順番も、トップバッターの重圧も、初めての決勝の緊張も、そんなすべてを微塵も感じさせることがない素晴らしい漫才を披露した。ただし、俺が思っていたより得点が伸びず、「トップバッター=基準点」という部分がもろに影響した形となったと思う。

 2番手に登場した「カミナリ」の点数は振るわず618点。そして、3番手に登場した「とろサーモン」。準決勝でも爆笑をかっさらった「旅館の女将」ネタに今まで敗者復活戦で披露したネタのボケを足してパワーアップさせていた。645点を叩き出し、トップに躍り出る。4番手に登場したのは敗者復活戦で最高のネタを披露し、ブッチギリの投票数で勝ち上がった「スーパーマラドーナ」。しかし、敗者復活戦で披露した最強ネタである「借金取り」ネタをせず、「コンパ」ネタを披露。640点と高得点ながらも「とろサーモン」を5点上回ることができず第2位。続く、キングオブコント覇者「かまいたち」も640点と同率2位。「マヂカルラブリー」607点、「さや香」628点と7組終了時点でトップを死守する「とろサーモン」。次のコンビの点数も上回れば、最終決戦進出が決定する。

 そこで登場した8組目が兄弟コンビ「ミキ」。抜群の技術とノリで観客の心を掴み650点。「とろサーモン」を上回り即最終決戦進出を決めた。9番目に登場したのは昨年準優勝の「和牛」。俺は準々決勝のネタも準決勝のネタも見たが、昨年の「和牛」とは程遠く、決勝進出も危ういのではと感じていた。しかし、「和牛」はここでどちらのネタもやらず、別のネタを持ってきた。653点とわずかに「ミキ」を上回り最終決戦進出を決める。登場時点での最高得点を上回れなかった「スーパーマラドーナ」と上回った「和牛」。昨年、激闘を繰り広げた両者。「和牛」の最終決戦進出決定が「スーパーマラドーナ」を敗退へと導き、明暗がくっきりと別れた。残す席は1つ。最終決戦進出をほぼ手中に収めながらも、ジリジリ後退し第3位まで落ちた「とろサーモン」。相対するは「笑神籤(えみくじ)」導入により、最後の最後までドキドキしながら待ち続けた「ジャルジャル」。畳み掛けて爆笑を作ったが一歩及ばず。「とろサーモン」がなんとか最後の1席を掴み取った。

 最終決戦。順番は上位のコンビから決められるということで、順当にファーストラウンド第3位、第2位、第1位の順で披露することとなった。トップバッターは「とろサーモン」。彼らは2015年の敗者復活戦で最後の2組まで残っている。俺から見たらナンバー1の出来だったが、「トレンディエンジェル」に破れ決勝進出することができなかった。そのネタをこの最終決戦で披露。最も決勝に近かったネタを運よく温存することができ、上々の受け具合で終了。

 続く「ミキ」は昨年の敗者復活戦で最後の2組まで残り「和牛」に敗退した。こちらもそのネタを披露。ツッコミ担当の兄、昴生君の力技が光るもファーストラウンドとの差を見せることができない。最後に登場した「和牛」。こちらは2015年決勝進出、2016年は敗者復活からの最終決戦まで進出し準優勝。振り返れば2014年の「THE MANZAI」でも決勝進出している。強豪だけに大舞台でネタを消費し続けているのだ。しかし、彼らはまたも準々決勝、準決勝とは別のネタを出してきた。そして、爆笑をかっさらう。毎年ここまでのクオリティのネタを書き続けている彼らは化物としか言いようがない。結果はラストイヤーを締めくくるように「とろサーモン」が優勝の栄冠を手にした。おめでとう。

 毎年、惜しいところで敗退し辛酸を舐め続けた「とろサーモン」。しかし、それが逆にいいネタを温存する結果となり、今回の戴冠へとつながった。それは実力も去ることながら、持って生まれた強力な運でもあると思う。逆に、また来年もあれだけのクオリティーのネタを最低2本用意しなければならない「和牛」は気の毒でならない。彼らならできると信じている。。「ミキ」も今年でネタを出し尽くしたと思う。それを超えて来年も決勝の舞台に立ってほしい。「スーパーマラドーナ」のツッコミ担当武智君は大会2日前に「M-1のネタ、もう一本作ります」と言っていたという。彼はもう来年のネタを作っているだろう。この世の全芸人よ!! 「M-1」とは格闘せよ!! そして、俺の戦いの歴史は著書『芸人迷子』で書き綴っております。皆さん!! AmazonへGOだ!! 以上、ユウキロックでした。センキュー!!

【ユウキロック】
1972年、大阪府生まれ。1992年、11期生としてNSC大阪校に入校。主な同期に「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじ、陣内智則らがいる。NSC在学中にケンドーコバヤシと「松口VS小林」を結成。1995年に解散後、大上邦博と「ハリガネロック」を結成、「ABCお笑い新人グランプリ」など賞レースを席巻。その後も「第1回M-1グランプリ」準優勝、「第4回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝などの実績を重ねるが、2014年にコンビを解散。自身の「M-1」挑戦からその後のコンビ解散までを綴った自叙伝『芸人迷子』が、お笑い業界内外で大きな話題を呼んだ