不安神経症は、検査では異常が見つからないにもかかわらず、体調不良だと感じたり、不安な気持ちが続いたりする症状のことをいいます。今回は、不安神経症の症状や対処法などを、いそべクリニックの院長で精神科医の磯部潮(いそべうしお)先生にお伺いしました。

目次

  • 不安神経症の症状
  • 不安神経症が起こるメカニズム
  • 不安神経症の治療法
  • 不安神経症の対処法・予防法

不安神経症の症状

不安に悩む女性

不安神経症とは、心因的な要因からくる「不安症」という病気の通称です。強い不安感が引き金となって、息苦しさや発汗、震えなど、日常生活に支障をきたすような身体への不調が現れます。
 
「不安症」は不安感を起点にしたものが多く、パニック症や全般不安障害、恐怖症、強迫症、ストレス障害といった病気があります。ここでは不安症に分類される病気や症状について解説していきます。

パニック症

パニック症は「このまま死んでしまうのでは」「気が狂ってしまう」などと急に強い不安に襲われ、日常生活や社会生活に支障が出てしまう病気です。トンネルや飛行機、広場など特定の場所において不安感が増幅する場合に発症しやすいといわれています。発症から10分ほどでピークに達し、その後、治まっていく場合がほとんどです。しかし、数時間以上続くケースもあります。以下では、パニック症の症状を説明します。

動悸、心悸亢進、心拍数の増加

「胸がバクバクする」「胸がドキドキする」と感じる症状で、突然「ドキドキ」と心臓の動きが速くなったり、ドクンと大きな拍動(はくどう/収縮運動)が起きたりするなど、自分の心臓の動きを感じる症状です。

発汗

緊張や不安などが原因で、自律神経の覚醒を司る「交感神経」の働きが過剰になり、冷や汗をかくことがあります。

過呼吸(過換気症候群)

呼吸が浅く、速くなり、窒息感が出るなど息苦しく感じる状態です。呼吸ができず「窒息してしまう」という不安感からパニックになり、さらに苦しくなってしまうことがあります。息苦しさに動悸や発汗、身体の震えが加わった状態を「パニック発作」といいます。

身体の震え

身体や手足に震えが起こります。人前で緊張したり、怖い目に遭ったりしたとき起こる震えと似た症状です。

吐き気、腹部の不快感

吐き気や、腹痛が起こることがあります。緊張する場面で一般的に経験されるものと同じ原因です。

めまい、ふらつき、頭が軽くなる、気が遠くなる

一時的な脳の酸欠によって現れる症状です。意識がもうろうとして、まっすぐに立っていられなくなる感覚に襲われます。

寒気、熱感

手足が冷たくなったり、逆に体が火照ったりします。

異常感覚

自分の五感を異常に感じてしまう症状です。五感に対する実感がなくなり、身体に違和感が表れます。

現実感消失、離人感

現実を現実のようには感じられなくなる症状です。自分が自分でなくなるような感覚にとらわれます。

抑制力を失う、恐怖感

パニック症で起こる一連の症状によって、「このまま狂ってしまうのでは」と強い不安を感じます。

全般不安障害

全般不安障害は、根拠がなくあいまいな理由による不安が毎日継続してしまう病気です。たとえば、「自分はがんではないか」「自分は心臓病ではないか」といった気持ちが過度に起こります。こうした不安感により不眠症状が出たり、イライラした気分になったりします。
 
不安が過度になると、特に原因もないのに頭痛やめまいなどの身体表現性障害や心気症と呼ばれる状態に発展するケースがみられます。また、病気への不安から、何軒もの医療機関を受診する「ドクターショッピング」と呼ばれる行動をとることがあります。

恐怖症

恐怖症は、高所恐怖症や閉所恐怖症など、ある特定や状況や対象に対して強い恐怖を感じる病気です。対人恐怖症や社交恐怖症といったコミュニケーションに支障を来すような場合もあります。はっきりとした恐怖を感じる状況や対象があるところが特徴です。

強迫症

強迫症は、強迫観念にとらわれて、日常生活に支障をきたすほど強い不安に襲われてしまう病気です。よくみられる例は「潔癖症」で、トイレの後に手を洗っても、汚れているのではと不安になって何度も洗うなどの行動をとります。また、ダイエットをし始めたことがきっかけで過度に「太りたくない」と考え、ストレスで拒食や過食症状におちいってしまう場合があります。

ストレス障害

死に直面するような状況や愛する人の死といった人生の中でも大きな出来事に遭遇して、強いストレスを感じる病気です。出来事の直後に大きな不安を感じることもあれば、出来事の後で長期にわたって不安を感じ続けることもあります。
 
虐待や交通事故などの強いストレス因子によって、以下の症状が出ることがあります。
・悪夢を見る
・心臓の鼓動が速くなる
・強い不安感

不安神経症が起こるメカニズム

不安な表情の女性

不安神経症と呼ばれる「不安症」のうち、パニック症になってしまうメカニズムは解明されていますが、パニック症以外のメカニズムは解明されていません。ここではパニック症のメカニズムについて解説します。

交感神経が過剰に働く

人は緊張状態になると覚醒を司る「交感神経」が優位になるため、パニック症の症状であるパニック発作は、交感神経の働きが過剰になることで起こります。
 
交感神経の働きが過剰になると、心臓の鼓動が速くなる、全身の筋肉の緊張や発汗、身体の震え、荒い呼吸などの反応が起こります。

不安神経症の治療法

なだめられる女性

不安神経症と呼ばれる「不安症」の治療は、「心療内科」や「精神科」で行います。病院で渡された問診票に、率直に困っていることを記載しましょう。下記に、医療機関を受診した際の治療法をまとめました。

薬物療法

強い不安感には、ベンゾジアゼピン系と呼ばれる抗不安薬が有効です。また、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ薬も、パニック症やストレス障害などの治療に使われています。
 
ただし、薬物療法は効果がすぐに出ないことや、薬を止めたときに「離脱症状」と呼ばれる精神的に不安定になるケースも少なくありません。このようなことを考慮し、薬物を使わない治療を優先的に検討する医療機関もあります。

認知行動療法

医師や臨床心理士、カウンセラーとの対話の中で「認知のゆがみ」を認めて、改めながら、不安を引き起こす状況や対象に徐々に慣れていく方法です。自分自身が過度に不安に感じていたり、怖がっていたりする対象が、実はそうではないと納得し、思考のゆがみを修正していきます。

不安神経症の対処法・予防法

休息をとる女性

日常生活を送るうえで不安神経症と呼ばれる「不安症」に対処し、また発症を予防するには、ストレス負荷をかけないようにすることが重要です。適度なストレスにはよい面もありますが、過度なストレスが長期にわたって続くと、身体や精神に不調をきたしてしまいます。
 
過度なストレスを感じていると気づいたら、リラックスできる時間を生活の中に取り入れましょう。下記にポイントをまとめました。

生活にメリハリをつける

仕事とプライベートの時間のメリハリをつけましょう。仕事に集中した後は、十分に休息を取ったり、趣味に取り組んだりして、オンオフをしっかり分けることが大切です。

ストレスの元から離れる

不安に感じる状況や対象を意図的に避けて、場合によっては、逃げることも大切です。距離を取ると、状況や対象を別の角度から見られるようになります。

 
<参照>
「パニック障害と過呼吸」磯部潮著(幻冬舎新書)
「ハリソン内科学第5版」デニス・L・カスパーほか編・福井次矢ほか監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
「カプラン臨床精神医学テキスト第3版」ベンジャミン・J・サドックなど編著・井上令一監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
「今日の治療指針2017年版」福井次矢など編(医学書院)

photo:Getty Images